ラオス首相交代の件
今年もまたラオスに行くのでちょっと下調べをしている。
昨年末の12月23日にラオスのブアソン・ブッパワン(Bouasone Bouphavanh)首相が辞任し,トンシン・タンマヴォン(Thongsing Thammavong)国会議長が新首相に就任したことは報道で知っている人がいることと思う。
「ブアソーン首相が辞任、トングシン国民議会議長が新首相へ就任」(ラオスのビジネスを読む,2010年12月28日)
「ラオス:ブアソン首相辞任 後任にトンシン国会議長」(2010年12月24日,毎日新聞)
"Prime minister of Laos resigns" (2010年12月23日,Bangkok Post)
ラオスという国は人民革命党を指導党とする国で,長らく計画経済だったのだが,1986年から「チンタナカーン・マイ」とよばれる経済改革に着手し,市場経済にシフトしている。ブアソン前首相は市場経済導入の旗手であり,経済発展のスピードアップを図っていた。上掲のバンコク・ポストの記事によると,ブアソンは昨年ベトナムで開催された会議で「2015年までに少なくとも年8パーセントの経済成長を目標とする」と表明していたらしい。
ちなみに,ここ30年間のラオスの経済成長の度合いを国民一人当たり実質GDP(単位:米ドル)で示してみると,下の図のようになる。参考までにタイのデータも示す:
タイの一人当たりGDPが相対的に大きすぎてラオスのそれが霞んでしまうのだが,2005年から2010年(IMF推計値)の成長の度合いを比較してみると,
ラオス: $464 (2005) -> $984 (2010) 2.1倍
タイ: $2709 (2005) -> $4620 (2010) 1.7倍
ということで,ラオスのほうが成長著しい。Kolao(ラオスの中古車販売大手,韓国系企業)の中古車が増えて道が混雑し始めるわけである。
で,話が戻って,ブアソン前首相の辞任のことだが,経済改革のスピードが早すぎて保守派の反発を招き,辞任に追い込まれたのだろうという話が出ている。
経済成長が早すぎるという話は実は保守派だけが言っているのではなく,上掲のバンコク・ポストの記事によるとNGOも指摘していたということである。NGOは「経済成長は海外の大規模な投資の上に成立している。また海外の投資は外国人労働者の流入に頼っており,ラオスにとってのメリットは小さい」と述べ,海外からの投資の規模の縮小,ペースダウンを促していたという。
海外からの投資->外国人労働者の流入,という指摘はその通りだと思う。一昨年,SEA Gameという東南アジアのスポーツ大会がヴィエンチャンで開催されたのだが,その中心となるスタジアムの建設は中国の支援によるものだった。一説では3000人の中国人労働者がやってきたという。ラオス人労働者がトータルでどのくらい働いていたのかはよくわからないが,こんな記事があった:
"25th SEA Games' main stadium in Laos to be planted with grass" (2009年3月29日)
The corporation has now finished 95 percent of the stadium, with more than 1,045 Chinese workers and more than 400 Lao workers involved in the construction process at a cost of more than US$100 million.
上述の説と人数が違うが,この記事によるとメインスタジアム建設のために1045人の中国人労働者と400人のラオス人労働者が働いたということである。ラオス人にとってのメリットは無いわけではないが,結局,中国がかなりの部分を自分で回収したという感じがする。
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