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2011.01.30

フォークナー『サンクチュアリ』読了 ( ̄Д ̄;;

松岡正剛セレクト「天界物語八冊組」(松丸本舗ブックギフト・プロジェクト)の本を読み続けているが(この間の『半分のぼった黄色い太陽』は脇に置いといて),今度はフォークナー『サンクチュアリ』(加島祥造訳・新潮文庫)を読み終わった。書評というか感想文を書こうと思ったのだが,これはちょっと取扱いに困る作品である ( ̄Д ̄;;

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あらすじおよびフォークナーについては松岡正剛が詳しく記述している(千夜千冊・第九百四十夜)ので,そちらを読んでもらう方が良いと思うのだが,訳者解説に記載されたあらすじが簡潔なので,それを引用しておく:

性的不能者のギャング(ポパイ)は17歳の女子学生(テンプル)をとうもろこしの穂軸で強姦し,素朴な人間(トミー)を野良犬であるかのように射殺し,テンプルをメンフィス市の売春宿に隠してから彼女を別の青年(レッド)と同衾させてその光景を見つつ興奮し,やがてレッドをも射ち殺し,その葬儀場では会葬者たちが酔って騒いで死体が棺から転がりでる。最後にポパイは自分の犯さぬ別の殺人容疑から死刑になるが,死刑の夜も,ともに祈ろうという牧師のすすめを無視して,ベッドに寝ころんで煙草をふかしている。また,トミー殺害とテンプル強姦の容疑をかぶった酒密売人(グッドウィン)は「町」の偏狭な道徳観,検事の策謀やテンプルの偽証によって有罪になり,さらに町の男たちによって夜中に留置場から引きだされ,私刑にあう――ガソリン缶を負わされ,生きたまま焼き殺されるのである。

このあらすじだけだとバイオレンス作品になってしまうが,この本筋に,無実の罪を着せられたグッドウィンとその「妻」ルービーを救おうと奮闘する弁護士ホレス・ベンボウが絡むことにより,全体として複雑な構成となっている。


  ◆   ◆   ◆


読了した今は,この作品を面白いと思ったのだが,初めは大変だった。この書評(「OK's Book Case」「Book Review 2001.3」)に書かれている感想と全く同じで,「人称代名詞が誰を指しているのか追えなくなってしまうことがたびたびあった」。

他にも読んでいて混乱したことがいくつもある。何十ページも前にグッドウィンのフルネーム「リー・グッドウィン」が出てきたことを忘れて,「リー」と「グッドウィン」とが別の人だと思ったり。ルービーがドアの内側に立っているシーンが度々あるのだが,そのドアの内側というのは部屋の中なのか外なのか良く分からなかったり。テンプルが差し込んだり滑らせたりしている「錠の鉄棒」というのが,要するに部屋のロックであることを後になって理解したり・・・。

また,訳者注についても「ちょっとこれは」と思うことがしばしばあった。例えば,「ハーバード大学」について(米国で最古の高級な大学)と記したり,「陪審員」について(米国では一般市民が陪審員になって有罪・無罪を決める)と説明したりしている訳者注には,米国のドラマや小説に触れる機会の多い現在となっては,「何をいまさら」と感じざるを得ない。むしろ,『サンクチュアリ』が書かれたのが禁酒法の時代であるということをどこかで述べる方が,新たな読者を得るためには必要だろうと思った。

物語の構成についても「?」と思わざるを得ない部分があった。最終章31章になって,ポパイの生い立ちとその終焉が一気にまとめて描かれるのだが,それだけで独立した小説のようになって,全体の流れから遊離しているように思われる。ただ,映画『砂の器』の終盤で,今西栄太郎(丹波哲郎)が捜査本部で和賀英良(加藤剛)の生い立ちから犯行に至るまでを過去の回想シーンとともに一気に語るという優れた演出を思い出すと,この31章の構成も「アリ」かもしれない。

本書の解説で訳者の加島祥造はこのようなことを言っている: 従来はポパイとテンプルを主軸とした読解(つまり不条理&バイオレンス主体の読解)が中心だったが,この作品は実はホレス・ベンボウの人道主義とルービーの生命力の筋によって作品の価値を保っていると。

小生もその意見には賛成であるが,最も力点を置くべきはホレス・ベンボウの行為だと思う。より詳しく言えば,冷え切った家庭に疲れた中年弁護士ホレスが,自分自身の再起を賭けて,不幸な夫婦の救済に全力を尽くし,そして敗れるという筋にこそ価値があると思う。


  ◆   ◆   ◆


ホレスがグッドウィンの弁護に全力を尽くす姿を見て思い出すのが,田中芳樹『銀河英雄伝説5 風雲篇』における自由惑星同盟国防委員長ウォルター・アイランズのこと。

アイランズは「妖怪」ヨブ・トリューニヒト議長の子分で,「伴食」という言葉がふさわしい三流政治家に過ぎなかったのだが,銀河帝国の進攻による自由惑星同盟滅亡の危機に際し,沈着冷静かつ熱意に満ちた指導者に変貌,同僚および軍部をリードし,同盟政府の自壊を防いだ。

平和な時代におけるアイランズの存在は,権力機構の薄よごれた底部にひそむ寄生虫でしかなかった。それが危機にのぞんたとき,彼の内部で死滅していたはずの民主主義政治家としての精神が,利権政治業者の灰の中から力強くはばたいて立ちあがったのである。そして彼の名は,半世紀の惰眠よりも半年間の覚醒によって後世に記憶されることになる。(『銀河英雄伝説5 風雲篇』(創元SF文庫),27ページ)
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  ◆   ◆   ◆


ホレスはグッドウィンを救うことができず(ホレスはグッドウィンがガソリンの火によって生きたまま焼かれるのを目にする),失意のまま冷たい妻ベルの待つ家庭に戻る。だが,短期間だったにせよ,弱者を救おうと努力したその行為によって,救いようのないこの物語に一点の光をもたらすのである。

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2011.01.27

オバマ政権下の環境・エネルギー政策についてまとめた件

今回の記事は全くもってマニアックというか小生のためのメモのようなもの。

小生のところには福岡アメリカンセンター・レファレンス資料室からたびたび米国政策情報が送られてくるのだが,そのうち,環境・エネルギー政策に関するものを再編集して下記のウェブページにまとめてみた:

米国における2010年の環境・エネルギー政策に関する資料集」(2011年1月27日)

項目だけ並べてみるとこんな感じである:

  • 温室効果ガス排出量削減
    • 温室効果ガス排出に関する年次報告書 (2010年4月15日)
    • グリーン・エコノミーとCO2排出量に関する報告書 (2010年4月21日)
    • グリーン政府とクリーンエネルギーの推進 (2010年7月20日)
  • 再生可能エネルギー
    • バイオ燃料とクリーンコールに関する方策 (2010年2月3日)
    • バイオ燃料に関するレポート (2010年6月23日)
    • グリーンパワー・パートナーシップ・プログラム (2010年8月2日)
  • エネルギー効率改善
    • 自動車の燃費効率の基準に関する覚書 (2010年5月21日)
  • 州レベルの取り組み
    • 21世紀のエネルギー需要と州が直面する課題 (2010年7月25日)
    • クリーンエネルギーに関する州の活動報告書 (2010年9月8日)
  • その他
    • 大学で開発されたエコ技術を商業化するための支援 (2010年9月15日)
    • 米国のレアアース (2010年12月15日)
    • BPの原油流出事故に関する最終報告書 (2011年1月14日)

ごく一部の人には役立つと思うので,必要あればご活用ありたし。

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2011.01.24

ムービープラスでメル・ギブソン主演『パトリオット』(2000年)を見た件

昨晩,NHK BSHiで2010年に開催された「BBC プロムス」"The Last Night of the Proms"を見た。「BBC プロムス」というのは世界最大のクラシック音楽祭である。2010年の最終夜,会場のロイヤル・アルバート・ホールとその周辺には8万数千人が集まり,全国各地の会場を合わせると30万人が参加したということである。

参加者の数にも驚いたが,毎回感心するのは最終夜第二部の愛国的な曲目に対する聴衆の盛り上がりっぷりである。どんな曲目が並んでいるかというと,

  • 「ルール・ブリタニア」
  • ヒューバート・パリー「イェルサレム」
  • エドワード・エルガー「威風堂々」第1番

「ルール・ブリタニア」なんて「ブリタニアよ,大海原を治めよ」という歌詞だし,英国第二の国歌とも言われる「威風堂々」なんて「自由によって得られ,真実によって保たれし汝の帝国は強盛となるべし」という歌詞である。こうした歌を熱狂的に高らかに歌い上げる聴衆を見ていると,英国民の意識の中には世界を支配した大英帝国の栄光が強く残っているのに違いない,そして植民地支配については本当は反省してないだろ,などと思うわけである。


で,大英帝国の毒気にあてられた翌夕,今度は英国の支配に反旗を翻した米国民の戦い,すなわち独立戦争を描いた『パトリオット』(監督ローランド・エメリッヒ,主演メル・ギブソン,2000年)を見たわけである。

英軍のダビントン大佐に息子を殺されたベンジャミン・マーティン(メル・ギブソン)は復讐のため,家族のため,そして祖国のために立ち上がるのだった・・・という話である。

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この映画で描かれる英国軍の残忍なこと。無抵抗の米国負傷兵を殺し,黒人自由民を連行し,恭順しない市民を教会に閉じ込めて焼き殺す。まあ,とんでもない連中である(※ちなみに英語版のWikipediaを読むと,英軍の残虐行為の描写には賛否両論があるようである(参考))。

で,ベンジャミン・マーティンが率いる非正規兵が英国軍と戦う度に,小生なんか「あいつら『ブリタニアよ,大海原を治めよ』なんて世界の支配者気取りの傲岸不遜な連中なんですよ,やっつけておくんなさい」と思わず応援してしまう。映画だっつうのに。


『パトリオット』は内容も面白いが,映画史上でも意義のある映画だと思っている。なぜかというと,「独立戦争」を取り上げた映画だからである。

以前,瀬戸川猛資『夢想の研究』(創元ライブラリ,1999年)という本の「大君の都」という章を読んだとき,「米国には聖書スペクタクル映画は数々あるのに,アメリカ建国神話たる独立戦争や南北戦争を正面から取り上げた作品が無いのはなぜか」という疑問が呈されていた。

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南北戦争に関しては『風と共に去りぬ』があるんじゃないかなー?と思ったが,独立戦争に関してはこれといった作品名が思いつかなかった。それが,この『パトリオット』によって埋められたのである。瀬戸川猛資は1999年3月に逝去したので,『パトリオット』のことは知らない。もしもう少し長く生きて『パトリオット』を見ていたら,何か述べただろうか?


ちなみに,「米国には聖書スペクタクル映画は数々あるのに,アメリカ建国神話の映画はないのか?」という問題について,瀬戸川猛資はこのような推測を述べている。すなわち,ハリウッドのタイクーン(大君=支配者)であった

  • ハリー・コーン(コロムビア映画創設者)
  • ウィリアム・フォックス(20世紀FOX創設者)
  • サミュエル・ゴールドウィン&ルイス・メイヤー(MGM創設者)
  • カール・レムル(ユニバーサル創設者)
  • アドルフ・ズーカー(パラマウント創設者)
  • ハリー&ジャック&アルバート・ワーナー(ワーナー・ブラザース創設者)

といった人々はすべて東欧・ロシアから移民してきたユダヤ人だった。これらの人々にとっては旧約聖書の世界をスペクタクル映像で再現することには意義を感じても,「アングロ=サクソンの手になるアメリカ建国神話なんて,初めからつくる気がなかったに違いない」(『夢想の研究』72ページ)というわけである。

じゃあなんで2000年になってコロンビア映画が独立戦争をテーマにした,製作費1億1千万ドルもの大作に取り組んだのか,という疑問が発生するが,小生は単純に,タイクーンたちが支配していたころのようなこだわりが無くなったからじゃないの,と思っている。

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シリーズ中,異色の構成―『ヤマトよ永遠(とわ)に』

先日深夜,ケーブルチャンネル「ファミリー劇場」で「ヤマトよ永遠(とわ)に」を放映していた。宇宙戦艦ヤマトシリーズの中では未見だったので,今回,最初から終わりまで真面目に見通すことにした(あらすじはWikipediaを参照)。

宇宙戦艦ヤマトシリーズの多くは,見方を変えれば「デスラー・サーガ」であり,古代進の好敵手であるガミラス総統デスラーが登場するのが普通である。だが,この作品はデスラーが登場しない異例の作品となっている。また,常に一緒だった古代進と森雪とが別れ別れになっているというのも珍しいことである。

戦闘シーンは特段面白くなかったし,物語後半から採用された「ワープ・ディメンション方式」とかいう画面・音声方式もテレビの画面を通して見る限り大したことは無かった。

小生がこの映画を見て,面白いと思ったことは,恋愛関係が今までよりも一段複雑になっているということである。従来シリーズでは,まず古代進と森雪というカップルがあり,その他のカップルとして,古代守とスターシャ(「宇宙戦艦ヤマト」,「新たなる旅立ち」),島大介とテレサ(「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」,「宇宙戦艦ヤマト2」),相原義一と藤堂晶子(「宇宙戦艦ヤマトIII」)というカップルがある,という状況なのだが,それぞれのカップルが干渉し合うようなことはなく,恋愛関係は単純である。

ところが「ヤマトよ永遠に」では古代進と森雪が別行動であり,さらにそれぞれに対して思いを寄せる人々がいるという他のシリーズにない,複雑な状況になっている。具体的には:

サーシャ → 古代進 ← → 森雪 ← アルフォン少尉

という状況である。地球人とイスカンダル人のハーフであるサーシャは叔父にあたる古代進に,暗黒星団帝国の技術将校であるアルフォン少尉は森雪に思いを寄せている。森雪はヤマト艦上で古代進がそんな状況になっているとは知らないし,古代進も森雪が地球でそんな状況になっているとは知らない。

サーシャもアルフォン少尉も死んでしまうので,戦いが終わって後,ヤマト艦上でのことを知るのは古代進だけ,地球でのことを知るのは森雪だけである。再会を果たした古代進と森雪はそれぞれの所で起きたことを打ち明け合うのだろうか?というのが,小生にとっては気にかかる話である。

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2011.01.19

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『半分のぼった黄色い太陽』を読んでいるところ

昨年の夏ごろに話題になった,チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(くぼたのぞみ訳)『半分のぼった黄色い太陽』(河出書房新社,2010年)を,だらだらと何日もかけて読んでいる。とりあえず,「第一部 60年代前半」を読み終わったところである。

半分のぼった黄色い太陽半分のぼった黄色い太陽
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ くぼた のぞみ

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物語の舞台は1960年代のナイジェリア。ビアフラ戦争イボ族 の分離独立運動が間もなく勃発するという時代である。「半分のぼった黄色い太陽: Half of a Yellow Sun」とはビアフラ共和国の国旗のことである:

600pxflag_of_biafra_svg


主人公的な存在は3人である:

ウグウ: イボ族の少年。大学で数学を教えているオデニボ(イボ族)の家(大学町スッカにある)でハウスボーイとして働いている。オデニボを「ご主人」と呼んで尊敬している。オデニボの恋人,オランナにも魅せられる。

オランナ: オデニボの恋人。美人。イボ族の実力者,チーフ・オゾビアの娘。ロンドンに留学経験あり。双子の姉妹,カイネネがいる。

リチャード: イボ=ウクウ美術に見せられたイギリス人。自称小説家だが,一篇も完成させていない。オランナの双子の姉妹,カイネネと恋仲になる。大学町スッカに移住し,オデニボたちに出会う。

物語は三人称で綴られているが,上述の3人の立場から,つまり3つの視点から描かれている。これは,作者である,チママンダ・ンゴズィ・アディーチェが唱える「シングルストーリーの危険性」という考え方に基づいているのであろう。

(字幕つきはこちら

小生は第一部を読み終わっただけだが,次のように感じた。

深刻な政治的問題が背景として存在しているのにもかかわらず,登場人物たちは,わりとあっけらかんとしていて,ときによっては猥雑で官能的でもある。

たとえば,オランナに関しては,こんな一節がある。エヌグ空港までオデニボがオランナを見送りに行ったときのこと:

「待ちきれないよ,ンケム」といって彼が唇を重ねた。マーマレードの味がした。わたしだってスッカに引っ越すまで待ちきれない,といいたかったけれど,それは彼もわかっているし,彼の舌が彼女の口の中にあって,オランナは股間にあらたな温もりを感じていた。(34ページ)

また,こんな表現もある:

男の突き込む動作が長く尾を引く記憶になるなんて,オランナは知らなかった。(38ページ)

オランナとカイネネという双子姉妹はこの作品中でもっとも魅力的な存在である。彼女らはイボ族の上流社会に属し,ロンドン留学経験が示すように,この国における知識階級でもある。オランナは優しく,社交的で,輝くような美人として描かれている。これに対し,カイネネはミステリアスで冷やかな女性として描かれており,リチャードはカイネネに翻弄されているふしがある。

第一部ではまだ物語は動き始めていない。これから「第二部 1960年代後半」に入るが,一体どのような展開が待っているのだろうか?


  ◆   ◆   ◆


半分のぼった黄色い太陽』の冒頭部分の原文・訳,また同書のプロモーションビデオ,そして各国語に訳された同書の表紙集などの情報については,次のサイトを見ると良い:
Half of a Yellow Sun by Chimamanda Ngozi Adichie チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 『半分のぼった黄色い太陽: tomokilog - うただひかるまだがすかる

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2011.01.18

ダンセイニ『ぺガーナの神々』読了

クリスマスプレゼントとしてツマから貰った松岡正剛セレクト天界物語八冊組(松丸本舗ブックギフト・プロジェクト)の一冊,ダンセイニ『ぺガーナの神々』(ハヤカワ文庫FT)を読み終わった。非常に美しく,また,人間の持つ宿命について考えさせられるファンタジーである。

ペガーナの神々 (ハヤカワ文庫 FT 5)ペガーナの神々 (ハヤカワ文庫 FT 5)
ロード・ダンセイニ 荒俣 宏

早川書房 1979-03
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この本の概要については訳者である荒俣宏の解説を引用するのが一番いいだろう:

本書『ぺガーナの神々』は,今でも神秘の色濃いアイルランドのかおりを漂わせた創作神話,つまりどこにもない空想の神話をあつめた,小さなファンタジイ集です。「神々のたそがれ」を歌うワーグナーの歌劇を通じて知られている北欧神話の上に乗って,ここではぺガーナ(あるいは異教の国<ペガーナ>)の神々の生と死とが物語られます。第一部『ぺガーナの神々』は,世界の誕生から破壊までのエピソードを背景にして,ぺガーナに集うすべての神々が紹介されます。そして第二部『時と神々』は,ぺガーナの神と人間たちとのあいだに生まれる闘いと祈りと憎しみの物語をしずかに語っていきます。

『ぺガーナの神々』における世界の構造は次のようになっている。

物語は<宿命 Fate>と<機会 Chance>とが賽を振って勝負をし,勝者が創造主たるマアナ=ユウド=スウシャイ MANA-YOOD-SUSHAIに,遊び道具として神々を作るよう依頼するところから始まる(「はじまり」)。

マアナ=ユウド=スウシャイは神々を作った後,スカアル Skarlの敲く太鼓の音を聞きながら寝入ってしまう。マアナ=ユウド=スウシャイと神々とが住まう場所をぺガーナという(「ぺガーナの神々」)。

マアナ=ユウド=スウシャイが寝ている間,神々は手慰みとして世界を創造する(「世界を創ること」)。人間を含め,あらゆる生命は世界創造の過程でキブ Kibという神によって創られたものなのである。ムング Mungという神はキブの仕事を妬み,全ての生命に死をもたらすこととした。人間を含め,全ての生命はムングが印形(しるし)を結ぶことによって死ぬのである(「神々が戯れること」)。

神々が創った世界は永遠のものではない。いつの日にか,マアナ=ユウド=スウシャイが目覚め,神々と世界とを壊してしまうことが運命づけられているのだ(「ぺガーナの神々」)。

『時と神々』では,人間たちを翻弄する神々ですら,<宿命>と<機会>とがプレイするゲームの駒にすぎないことが記されている(「南風」)。また,人間たちが信仰対象としなくなった神々は死ななくてはならないこともまた明らかにされる(「神々の秘密」)。

造物主たる神々の上にさらに超越的な存在があるという重層的な構造が,このファンタジーの世界構造を深み(高み?)のあるものにしていると思う。また,世界が存在するのはマアナ=ユウド=スウシャイが寝ている間だけだというのは,「世界はブラフマン(梵)の夢に過ぎない」とするヒンドゥー教の教えを思い出させてくれて面白い。


  ◆   ◆   ◆


ダンセイニの作品(英語)はグーテンベルクプロジェクトで公開されている:
Dunsany, Edward John Moreton Drax Plunkett, Baron, 1878-1957

今回紹介した『ぺガーナの神々』と『時と神々』の原作はそれぞれ

"The Gods of Pegana"
"Time and the Gods"

として公開されているので,興味ある人は読んでみられるとよい。


  ◆   ◆   ◆


このダンセイニの作品は荒俣宏と松岡正剛とを出会わせるきっかけとなったものである。そのあたりの事情は松岡正剛の千夜千冊・第二夜『ペガーナの神々』
(2000年2月24日)に詳しい。

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2011.01.17

「ソーシャル・ネットワーク」,ゴールデングローブ賞4冠(作品賞・監督賞・脚本賞・作曲賞)とのこと

土曜日に見てきた映画「ソーシャル・ネットワーク」だが,ゴールデングローブ賞の4部門(作品賞・監督賞・脚本賞・作曲賞)で受賞したという話である:

ゴールデングローブ賞、「ソーシャル・ネットワーク」4冠(2011年1月17日,ロイター)

先日のブログ記事(「映画『ソーシャル・ネットワーク』を見てきた件」)でも書いたが,"Facebook"誕生秘話を描いたこの作品,面白いとしか言いようがない。

主演男優賞,助演男優賞はとれなかったが,マーク・ザッカーバーグを演じたジェシー・アイゼンバーグ(27)の演技は「天才っぽさ」が出ていて良かったと思う。マーク本人には接触せずに作り上げたキャラだったというが,マーク本人はジェシーの演技を「なかなか良かった」とほめていたという話が出ている:

[ソーシャル・ネットワーク]脚本家に聞く「映画館を借り切って社員全員に見せたようだ」(マイコミジャーナル,2010年1月16日)

ちなみに,マーク・ザッカーバーグを訴えた,キャメロン&タイラー・ウィンクルボス兄弟だが,確認の為にwikipediaを見てみたら,ちゃんと北京五輪に出ていた。すごいなぁ,ハーバード大生は。

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ジョン・ブルックス『楽園のデザイン イスラムの庭園文化』読了

年末から少しずつ読んでいたジョン・ブルックス『楽園のデザイン イスラムの庭園文化』を読了した。

楽園のデザイン―イスラムの庭園文化楽園のデザイン―イスラムの庭園文化
ジョン ブルックス 神谷 武夫

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前にも書いたが,荒野に住んでいた初期ムスリムにとっては,木陰と小川のせせらぎこそが天国であり,その天国を身近に再現するのがイスラム庭園であるらしい。コーランには至福の表現として「潺々(せんせん)と河川の流れる庭園」という言葉が30回以上も現れるという。

また,コーランには「楽園の四大河」という言葉があるのだそうだが,これは庭園を4つの水路で田の字型に区切る「四分庭園(チャハル・バーグ)」というイスラム庭園の典型的な様式の起源なのだそうだ。

本書ではイスラム圏各地域に存在する歴史的なイスラム庭園が紹介されるのだが,重点的に紹介されるのはイスラム期のスペイン,ペルシャ,そしてムガル朝のイスラム庭園である。マグリブ世界やトルコに関してはあっさりとした解説のみである。

スペインのイスラム庭園の代表としてはグラナダのアルハンブラ(アランブラ)宮殿ヘネラリーフェが,ペルシャ・サファビー朝の庭園の代表としてはカーシャーンのフィン庭園が詳細に解説されている。アルハンブラの獅子の中庭,カーシャーンのフィン庭園は極めて完成度の高い四分庭園と言える。

この本で最もページ数を割いているのは実はムガル朝の庭園である。初代バーブルから第6代アウラングゼーブまで皇帝の治世ごとに庭園が紹介されている。この本をもとに皇帝たちと庭園の関係をまとめておいたので,下図をご参照いただきたい:

Mughalgardens
(皇帝たちの肖像画はすべてWikipediaより)

ムガル朝では初代皇帝バーブルがそもそも庭園造りに熱心で,その影響がシャー・ジャハーンまで受け継がれたのだと言える。バーブルはカーブルにおいてヴァファー庭園を造営したのだが,インド征服後もカーブルの庭園のことを気にかけ,管理人に水遣りや花の育て方について指示を与え続けていたという。

ムガル朝における庭園造りが黄金期を迎えるのは第4代皇帝ジャハーンギールの治世であるといえる。父アクバル大帝によってカシミール地方に連れて来られて以来,カシミールの景観を愛好し,この地にシャーラマール庭園など数々の名園を造営し続けた。この時代のこの地のイスラム庭園の特徴は,他のイスラム世界では貴重なものとされる水をふんだんに使って水のカーテンなどを演出しているところにある。水の豊富なカシミール地方でなくてはできない芸当である。

第5代皇帝シャー・ジャハーンは父ジャハーンギールとともにカシミールの庭園造りに加わっていたものの,むしろ,アーグラにタージ・マハルを造営したことで有名である。

タージ・マハルは最愛の王妃,ムムターズ・マハルの死を悼んでヤムナー川のほとりに建設した霊廟であるが,シャー・ジャハーンはヤムナー川をはさんで対岸に自分自身の霊廟を建設しようと考えていたようである。そして,タージ・マハルと皇帝自身の霊廟を結ぶ一直線上に水路を設けることにより,ヤムナー川とその水路によって区切られる巨大な四分庭園を実現しようと考えていたフシがある。

ムガル朝のイスラム庭園文化に陰りが見えるのは第6代皇帝アウラングゼーブの治世である。アウラングゼーブはいわばイスラム原理主義者であり,インドで多数を占めるヒンドゥーに不寛容だった。また,庭園や建築には興味が薄かった。アウラングゼーブの不寛容さは帝国内に不和を生み,マラータ同盟との戦争など,帝国の衰亡を招くこととなる。ムガル建築文化の黄金期はこの代で終焉を迎える。

この辺の話は,陳舜臣『インド三国志』を読むとわかる:

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陳 舜臣

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  ◆   ◆   ◆


と,まあ,ジョン・ブルックス『楽園のデザイン イスラムの庭園文化』を読み通すことによって,イスラム庭園やムガル帝国についてずいぶんと知識を得ることができた。実際にイスラム庭園を見たことは無いけれど,スペインやイランやインドに行く機会があったら,この本で得た知識によって,庭園を深く観賞することができるだろう。

ちなみに巻末に「中東での庭園設計に関するノオト」という一節があるが,中東では大変な努力をして芝生を維持しなければならないことが書かれている。1平方メートル当たり毎日30リットルの水が必要なのだそうだ。樹木もまた大量の水を必要とし,成長中の樹木は1本あたり毎日40リットルの水を必要とするという。

以前読んだ『地獄のドバイ』(実際はアブダビの話)にはスプリンクラーの故障により,見る見る枯れ始める芝生の話があったが,そのことを思い出した。

地獄のドバイ―高級リゾート地で見た悪夢地獄のドバイ―高級リゾート地で見た悪夢

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2011.01.16

雪に見舞われた宇部・センター試験だっつうのに

今朝,起きてみたら一面の銀世界。

うちの庭なんか雪原と化していた:

Snowgarden01

そして,ツマの育てていた鉢植えの花なんか,カップケーキと化していたのである:

Snowgarden03

朝はお湯が出なくなっていたので,家の裏に回ってガス給湯器(長府製作所製)の様子を見に行った:

Snowgarden05

そうしたら,給湯器の下につららが下がっていた。これは,水道管が凍っている証拠である:

Snowgarden04

仕方が無いので,延長コードにドライアーをつなぎ,給湯器とそこにつながる水道管のあちこちを加熱すること20分。水道管の中の氷が融解したらしく,なんとかお湯が出るようになった。やれやれ。


さて,昨晩(2011年1月15日~16日)は宇部では2000年以降最低の気温だったようである。あと,記憶を探ると,センター試験の時は大雪に見舞われるというジンクスがあったような気がする。そこで,山口気象台の過去6年間の記録を調べてみた。

試験日平均気温[℃]最高気温[℃]最低気温[℃]昼の天気夜の天気
20051月15日2.87.3-0.7曇後雨曇後一時みぞれ

1月16日3.67.21.0
20061月21日3.77.80.3曇一時晴曇一時みぞれ

1月22日4.09.70.8晴一時曇晴後雪
20071月20日7.513.63.4晴一時曇

1月21日6.010.32.5晴時々曇
20081月19日5.59.31.5曇一時晴曇時々雨

1月20日4.96.34.1雨後曇
20091月17日3.28.7-0.9曇時々雨一時晴曇時々晴

1月18日6.511.71.0曇時々雨雨一時曇後晴
20101月16日3.410.6-1.5快晴

1月17日3.111.7-2.9快晴
20111月15日1.16.0-4.2--

1月16日-0.9-5.6--

ということで,山口県の場合,センター試験の日が天候に恵まれるということはあまりないようである。それにしても今年の天候の厳しさは際立っている。

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映画『ソーシャル・ネットワーク』を見てきた件

土曜日にツマとともに映画『ソーシャル・ネットワーク』(デヴィット・フィンチャー監督)を見てきた。

2003年。ハーバード大学に在籍する若干19歳の青年,マーク・ザッカーバーグは,ルームメイトから得た1000ドルを元手にハーバード大学生向けのソーシャル・ネットワークサービス「ザ・フェイスブック」を立ち上げる。「ザ・フェイスブック」は瞬く間に全米の大学に広がり,やがて世界最大のソーシャル・ネットワークサービス「フェイスブック」に成長する。しかし,その過程でマークは友人を失い,また,アイディアの盗用者として訴えられる。マークは何を得,何を失ったのか?・・・という話。



凄く面白かった。

「事実に基づき,随所にフィクションを交えた作品」だということだから,これをドキュメンタリーなどと考えてはいけないのだが,それでも,ITベンチャーが立ちあがる瞬間の狂気と興奮というものが正しく伝えられているのではないだろうかと思う。

ストーリーは,マーク・ザッカーバーグに対する2件の訴訟(一つは最初の出資者であり,共同設立者であるエドゥアルド・サヴァリンからのもの,もう一つは「ザ・フェイスブック」に先行して設立されたソーシャル・ネットワークサービス"ConnectU"の創設者キャメロン・ウィンクルヴォス,タイラー・ウィンクルヴォス,ディヴャ・ナレンドラからのもの)のシーンから始まる。訴訟内容の確認作業の中で「ザ・フェイスブック」の創設時を振り返る,という構成である。

小生が見ていて最もおもしろかったのは,ファイル共有ソフト・ナップスターの開発者にしてIT界の風雲児ショーン・ファニングパーカーがマークに出会うシーンである。「ザ・フェイスブック」の共同設立者,エドゥアルドにとっては「ザ・フェイスブック」はよくあるITビジネスの一つに過ぎないのだが,ショーンにとっては一時代に一回起きるかどうかのビッグ・アイディアであり,ひたすらクールであり続けなくてはならないものだった。マークもまたショーンに共鳴し,その言動にひきつけられ,エドゥアルドとは距離を置き始める。

マークはショーンの「ザ・フェイスブックの『ザ』は外すべきだ。なぜならそのほうがクールだからだ」という勧めに従う。「ザ・フェイスブック」が「フェイスブック」となった瞬間が,マークとエドゥアルドの別れの始まりだったのである。


小生は仕事柄,起業家を名乗る人物や創業社長らに出会うことが多いのだが,その中にはこの映画の中のショーン・ファニングパーカーの如き,ギラギラした言動の人物,いわゆるビッグマウスもいる。本当のショーンがそのような人物かどうかは知らないが,一つの起業家の典型なのだろう。


あと,映画を見て感じたのは,米国の大学におけるフラタニティ(もしくはソロリティ)文化の強さ。フラタニティは男子学生や女子学生の社交クラブなのだが,単なるサークル活動ではなく,そこでの付き合いが学生生活全般,さらには就職まで影響するような組織である。その辺りの事情が分からないと,なぜ,映画の中で大学生が必死になって特定のフラタニティに加入しようとするのか,また,フェイスブックのようなサービスがどれほど渇望されていたのか,が理解できないと思う。

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2011.01.13

【ルノー機密漏洩事件】中国の産業スパイネットワークとフランス自動車産業【2005年ヴァレオ事件】

最近はこの話ばかり書いているが,もう少し続ける。

ル・モンドなどフランスの新聞の電子版を見ていると,今回の事件はフランス人の間に2005年に起きたヴァレオ(Valeo)事件のことを思い出させているようである。

ということで,ヴァレオ事件について短く述べる:

Chinese Valeo worker arrested in France on industrial espionage charge (Forbes, 2005年5月3日)

2005年5月,22歳の中国人女子留学生Li Li Whuang(黄麗麗?よくある名前)が自動車部品メーカー・ヴァレオに対する産業スパイの容疑で逮捕された。警察が押収した3台のパソコンと2台のハードディスクの中には極秘扱いの設計図を含め,莫大な量のヴァレオの製品データが収められていたという。Li Li Whuangは当時,コンペーニュの大学に留学中で,2005年2月からインターンシップとしてパリにあるヴァレオの研究開発部門に勤めていた。彼女は数学・応用物理・流体力学の学士号をもっており,また英独仏西語に通じていたというから,物凄く優秀な学生だったようである。

この事件が発生した時はちょうど薄熙来(Bo Xilai)商務相の訪仏時で,フランスとの結びつきを強めようと考えていた中国側の出鼻をくじくことになった(まあ,薄商務相は「本当だとしたら大変遺憾なことだ」という無難なコメントをしていたが)。

この報道の3日後にはAFP通信が中国留学生による産業スパイネットワークの存在についてブリュッセルからレポートしている:
Chinese Students Running Industrial 'Spy Network' Across Europe: Report (AFP, 2005年5月11日)

この記事はEuropean Strategic Intelligence and Security Centreのレポートに基づいて書かれたものである。記事によればベルギーには中国からの留学生によって組織された産業スパイネットワークがあり,イギリス・オランダ・ドイツ・フランスの研究機関や大学でのスパイ活動を展開中であったという。

さて,ヴァレオ事件から5年以上経過し,同事件のことを忘れたころに今度は本丸が狙われたわけである。

なぜフランスが再度狙われたのか? 答えはル・モンド紙のインタビュー記事にある:
Espionnage industriel : "La France n'a pas d'outils adaptés pour réagir" (Le Monde, 2011年1月11日)

これは国際戦略の専門家,Laidi Ali氏へのインタビュー記事であるが,要するに日米に比べてフランスは産業スパイへの対策が甘い,ということである。だから中国にとっては格好の獲物だということである。

この間書いた話「ルノーEV機密漏洩事件・中国企業に?」(2011年1月7日)に戻るが,資本関係上やむを得ないと言えど,フランス・ルノー側で情報ダダ漏れなのに電気自動車の共同開発なんてしていてよいのだろうか,日産よ?

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2011.01.12

【ルノー機密漏洩事件】「カフカの『審判』の世界にいる気分だ」渦中の幹部,フィガロ紙に語る

電気自動車の機密がルノーから中国企業に漏れたとされる事件に関して,渦中の幹部の一人,Bertrand Rochette(ベルトラン・ロシェット)氏はフィガロ紙のインタビューに答えた:
J'ai l'impression d'etre dans "Le Proces" de Kafka ... (2011年1月11日,Le Figaro, By Christopher Cornevin)

インタビュー内容の要約をしてみたが,ロシェット氏の主張によると,ロシェット氏は電気自動車には関係しておらず,外部との接触機会もなく,海外口座も持っていないということである。じゃあなんで解雇されるの?という謎が残る。


【インタビュー内容要約】

ロシェット氏は,インタビューの初めに「カフカの『審判』の世界にいる気分だ」「22年間もルノーに心と体をささげていたのに」と語った。

「海外に口座があるのか?」との質問に対し,氏は「スイスにもリヒテンシュタインにもパナマにもどこにも口座なんて持っていない。機密情報を漏らすようなことはしていない」と答えた。

ルノーでの役割についてロシェット氏は「私は第一線の自動車設計に携わっているが,車体にせよエンジンにせよ,深い技術的なことは専門外だ。そしてそもそも電気自動車には関わっていない」と述べ,また「Michel Balthazard(ミシェル・バルタザール)氏は私の上司なので知っているが,Matthieu Tenenbaum(マチュー・テネンバウム)氏についてはほとんど知らない」と述べた。

さらに外部との接触については「私はギュイヤンクールの技術センターに詰めていてほとんど外部との接触がない。旅行もほとんどしない。サムスンの子会社の視察のため韓国に行ったことはあるが,なんら秘密はない。」と答えた。

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2011.01.11

2011年以降はアフリカの時代

時々,「カンボジア経済」なるブログを見ている。このブログを書いている人には数年前にプノンペンの居酒屋「比摩人」で一回だけ会ったことがある。

で,本日の「カンボジア経済」の話題は「カンボジアの成長率が世界9位」という話。"The Economist"の記事が元ネタなのだが,2001年~2010年の成長率トップテンを見ると,10か国中6か国がアフリカの国だったりする。カンボジアの成長よりもアフリカ勢の台頭に驚かされる。

大事なのはこれからのこと。2011年~2015年の予測値(年平均GDP成長率)を見ると,次のような順位である:

1位 中国 9.5% 13億人
2位 インド 8.2% 10億人
3位 エチオピア 8.1% 7910万人(2008年:世銀)
4位 モザンビーク 7.7% 2289万人(2009年:世銀)
5位 タンザニア 7.2% 4248万人(2008年:世銀)
5位 ベトナム 7.2% 8579万人
7位 コンゴ(民主共和国?) 7.0% 6600万人(2009年)
7位 ガーナ 7.0% 2380万人(2009年:UNFPA)
9位 ザンビア 6.9% 1262万人(2008年:世銀)
10位 ナイジェリア 6.8% 1億5470万人(2008年、UNFPA)

中国・インドの両巨頭が頂点を占めているので,依然として「アジアの世紀」といえるかもしれないが,残りの8か国中7か国をアフリカ勢が占めているのは圧巻。アフリカでは巨大市場が成長中である。

ただ,アフリカに商機ありと見ても日本からは遠すぎる。タイやドバイなどがアジア・ヨーロッパ・アフリカを繋ぐ拠点として成長を続けるのかもしれない。

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【特濃ナニワ人情道】"オバハンSOUL"を読んだ件

先日の朝日新聞の読書欄で取り上げられていたので,清水川交差点の宮脇書店にて購入。こら面白(おもろ)いわ。

オバハンSOUL 1巻 (ニチブンコミックス)オバハンSOUL 1巻 (ニチブンコミックス)
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オバハンが主人公のまんがといえば,堀田かつひこの4コマ漫画『オバタリアン』というのがあったが,それはどっちかというとオバハンの生態を面白おかしく描いた観察日記のようなもの。読者がオバハンの生き様に共鳴するような作品はこれが初めてであろう。

きっついパーマと豹柄の服という典型的な大阪のオバハン,渡辺直美がトラックを転がしながら身近に起きる事件を強引に解決するというのがこの漫画のパターン。「そんなんあるかい」と思いつつも作品の世界に飲み込まれていく。

隣で発生した児童虐待など,「あんた関係ないやろ」と言われれば普通は引き下がってしまうような事件に対してもオバハンはひるまずに介入していく。親を懲らしめるだけでなく,更生の道を開くあたり,「大岡越前」のごとき爽快感と安心感がある。


さて,問題です。

脳卒中で倒れ,一刻を争う状態の患者を載せた救急車が,放置自転車で埋まった道で立ち往生しています。あなたのトラックは救急車のすぐそばにあります。あなたには何ができるでしょうか?(NHK「ハーバード白熱教室」より。嘘)

答えは「オバハンSOUL 1巻」に。

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2011.01.07

ルノーEV機密漏洩事件・中国企業に?

ルノーの最高幹部3人がEV(電気自動車)のバッテリーやモーターに関する機密情報を漏らしていたとかいう事件。ルノーのEVの技術って日産の技術じゃないかね?

漏洩先は中国企業という話が産経新聞などで報道されている。

以前、日本の技術力の維持についてのパネルディスカッションで、日産の某フェローが「日産は多国籍企業であり、『日本の…』という意識は全く無い」という趣旨のことをノタマワっていたが、もし日産の、いわば国産のEV技術がルノー経由で中国に漏洩したというのであれば、多国籍というのにもほどがある。

小生は最近ではナショナリストになってきたので、技術にも国益ということを考えていただきたいものであるよ。

中国の産業スパイ活動といえば、以前、ある本で「中国企業の視察団の一員がアメリカの化学メーカーの研究施設の見学の際、薬品の入った槽にネクタイを浸していた」という記述を見たことがある。本のタイトルは忘れたが、そうやってでも化学物質の組成が知りたかったのだな、と感心したことである。そしてアメリカの警戒心の強さも感じた。

技術に国境はない、という考え方もあるが、それは価値観を共有する国家間のことであり、価値観の違う国家群が台頭してきた現在では技術と国益とを考える必要があるんじゃないかな?


  ◆   ◆   ◆


2010年1月10日付のLe Figaroによると,中国に機密を漏えいした幹部として,Jean-Michel Balthazar, Bertrand Rochette, Matthieu Tenenbaumの3人の名前が上がっているという(Le Figaro, "Comment les Chinois ont espionné Renault")。

ある幹部の持つリヒテンシュタインの口座には中国から130,000ユーロ,別の幹部の持つスイスの口座には500,000ユーロの振り込みがあったとか,また,金の出所は北京の電力会社で,上海とマルタ島を経由して送金されているとか興味深い話が伝えられている。

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2011.01.06

ラオス首相交代の件

今年もまたラオスに行くのでちょっと下調べをしている。

600pxflag_of_laos_svg

昨年末の12月23日にラオスのブアソン・ブッパワン(Bouasone Bouphavanh)首相が辞任し,トンシン・タンマヴォン(Thongsing Thammavong)国会議長が新首相に就任したことは報道で知っている人がいることと思う。

ブアソーン首相が辞任、トングシン国民議会議長が新首相へ就任」(ラオスのビジネスを読む,2010年12月28日)
ラオス:ブアソン首相辞任 後任にトンシン国会議長」(2010年12月24日,毎日新聞)
"Prime minister of Laos resigns" (2010年12月23日,Bangkok Post)

ラオスという国は人民革命党を指導党とする国で,長らく計画経済だったのだが,1986年から「チンタナカーン・マイ」とよばれる経済改革に着手し,市場経済にシフトしている。ブアソン前首相は市場経済導入の旗手であり,経済発展のスピードアップを図っていた。上掲のバンコク・ポストの記事によると,ブアソンは昨年ベトナムで開催された会議で「2015年までに少なくとも年8パーセントの経済成長を目標とする」と表明していたらしい。

ちなみに,ここ30年間のラオスの経済成長の度合いを国民一人当たり実質GDP(単位:米ドル)で示してみると,下の図のようになる。参考までにタイのデータも示す:

Laosgdp
(出典:IMF)

タイの一人当たりGDPが相対的に大きすぎてラオスのそれが霞んでしまうのだが,2005年から2010年(IMF推計値)の成長の度合いを比較してみると,

ラオス: $464 (2005) -> $984 (2010)  2.1倍
タイ: $2709 (2005) -> $4620 (2010)  1.7倍

ということで,ラオスのほうが成長著しい。Kolao(ラオスの中古車販売大手,韓国系企業)の中古車が増えて道が混雑し始めるわけである。


で,話が戻って,ブアソン前首相の辞任のことだが,経済改革のスピードが早すぎて保守派の反発を招き,辞任に追い込まれたのだろうという話が出ている。

経済成長が早すぎるという話は実は保守派だけが言っているのではなく,上掲のバンコク・ポストの記事によるとNGOも指摘していたということである。NGOは「経済成長は海外の大規模な投資の上に成立している。また海外の投資は外国人労働者の流入に頼っており,ラオスにとってのメリットは小さい」と述べ,海外からの投資の規模の縮小,ペースダウンを促していたという。

海外からの投資->外国人労働者の流入,という指摘はその通りだと思う。一昨年,SEA Gameという東南アジアのスポーツ大会がヴィエンチャンで開催されたのだが,その中心となるスタジアムの建設は中国の支援によるものだった。一説では3000人の中国人労働者がやってきたという。ラオス人労働者がトータルでどのくらい働いていたのかはよくわからないが,こんな記事があった:

"25th SEA Games' main stadium in Laos to be planted with grass" (2009年3月29日)

The corporation has now finished 95 percent of the stadium, with more than 1,045 Chinese workers and more than 400 Lao workers involved in the construction process at a cost of more than US$100 million.

上述の説と人数が違うが,この記事によるとメインスタジアム建設のために1045人の中国人労働者と400人のラオス人労働者が働いたということである。ラオス人にとってのメリットは無いわけではないが,結局,中国がかなりの部分を自分で回収したという感じがする。

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旅路の果て

ここ数年、年末年始は大旅行である。宇部を出て静岡の実家(小生)と栃木の実家(ツマ)に行くからである。今回は小生の親父の要請により,福岡空港からFDA(フジ・ドリーム・エアライン)の飛行機で富士山静岡空港に行くことになった。

宇部を12月30日に出て福岡に一泊,12月31日午前10時45分にFDAの飛行機で静岡に向かった。

このピンク色の飛行機(エンブラエル製)が小生らの乗った機体である↓。

旅路の果て

携帯のカメラなのであまりはっきり見えないと思うが,これが静岡空港に着いたときの様子↓。

旅路の果て


静岡到着後は牧之原市(旧榛原郡榛原町)近辺に住む親せきの家を回り,その後,静岡市清水区(旧清水市)の実家へ。1月2日まで実家で過ごした。実家の庭からは富士山が見える↓。

Fuji

1月2日には早くもUターンラッシュが始まった。そんな状態もものとはせず,静岡から新幹線で東京に向かい,その後,栃木の(ツマの)実家へ。ツマの実家には一晩泊まり,翌1月3日には東京へ。東京で一晩過ごした後,1月4日には東京駅付近をうろつき,オアゾの松丸本舗で以下の本を購入した。

折口信夫 霊性の思索者 (平凡社新書)折口信夫 霊性の思索者 (平凡社新書)
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イスラーム銀行―金融と国際経済 (イスラームを知る)イスラーム銀行―金融と国際経済 (イスラームを知る)
小杉 泰 長岡 慎介

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将棋とチェスの話―盤上ゲームの魅力 (岩波ジュニア新書 (344))将棋とチェスの話―盤上ゲームの魅力 (岩波ジュニア新書 (344))
松田 道弘

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最後に挙げた本の著者,松田道弘はボードゲームやトランプマジックに関する本をたくさん書いている人。小学生のころに買った『松田道弘 遊びの本2 ボード・ゲーム』(筑摩書房,1981年)は何度も繰り返し読んでいる本である。当時はラタックだのモノポリだの,ボードゲームが欲しくてしょうがなかったが,手に入らなかった。上掲の『将棋とチェスの話』は岩波ジュニア新書の本で,本来は中高生向きなのだが,そんな風には見えないクオリティである。

オアゾと言えば,JAXAの情報センター"JAXA i"があったところであるが,そこは2010年12月28日に閉鎖された。現在ではこのような状況:

旅路の果て

オアゾの1階では「浅井三姉妹が生きた戦国衣装展」とかいう展示があった。打掛もあったのだが,小生がじっくり見たのは甲冑類である。下のは手前が秀吉,その奥が石田三成のものである。じつはどちらも好きじゃない武将だが。

旅路の果て

1月4日の晩にはANAで羽田から宇部に戻った。これで,年末年始の大旅行は終了。

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