ロッキードが海洋温度差発電(OTEC)施設の追加予算をゲット
航空機メーカーとしてよく知られているロッキード・マーティンがハワイ沖の海洋温度差発電(Ocean Thermal Energy Conversion: OTEC)パイロットプラント建設の追加契約(予算440万ドル)を米海軍と結んだという話:
Lockheed Martin to Continue Ocean Thermal Energy Conversion in Hawaii Under New Contract (November 22nd, 2010, Lockheed Martin)
ロッキードは2009年にすでに810万ドルの予算を得ており,その追加である。
海洋温度差発電というのは,海の表層水と深層水の温度差を利用して発電する技術である。
簡単に言えば,(1)作動流体(冷媒)を暖かい表層水で蒸発させてタービンを回して発電,(2)その後,作動流体を冷たい深層水で冷却水で凝縮させ,ふたたび表層水のところに送り込むという仕組みである。ロッキードが公開している絵を見たほうが早い:
作動流体はよくわからないが,アンモニアではなかろうか?
なんで米海軍がこのような施設をほしがっているかというと,熱帯の島々にある海軍基地で,環境を保護しながら電力を供給するため。米海軍は自然に優しい。
似たような話では米陸軍がカリフォルニア州アーフィン駐屯地で500MW = 500,000kW級太陽光発電設備を建設しているという話がある(総工費15億ドル,2022年完成予定。参照)。
さて,海洋温度差発電で思い出したのが,谷下市松『工学基礎熱力学』(裳華房)のこの問題:
フランスの発明家クロード(G. Claude)の方法によって,海の深部と表面の水温の温度差を利用して動力を発生することができる。ある熱帯地方またはその他の特定の地方では海の表面温度は約t1 = 28℃であり,また200~300mの深部においてt2 = 10℃である。
この温度差を持つ大量の海水を高熱源および低熱源として,動力の発生に利用するときは,この両温度間のカルノーサイクルの熱効率はいくらか?(pp. 132 - 133)
機械工学科卒の人なら簡単に解けるはず。そして,(カルノーサイクルという理想のサイクルを仮定しているにもかかわらず)効率が悪いこともわかるはず。
ちなみにロッキードのパイロットプラントはいったいどのくらいの出力なのかはプレスリリース資料からわからなかった。太陽光みたいに実用になるかどうか?
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