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2010.12.28

ペットボトルタワー

昨夜(2010年12月27日),宇部の常盤公園に建てられたペットボトルタワーを見てきた。

ペットボトルタワー

これは,山口大学の学生が設計し,長州科楽維新プロジェクトと宇部市子ども会育成連絡協議会などが制作したもの。形は「東京スカイツリー」をモデルにしたとか。使用したペットボトルは12120本。高さは11.37m。一応,ギネス世界記録に認定されたという話。

「ペットボトルタワー、高さ世界一」(宇部日報,2010年12月18日)

実は昨年も同じようなプロジェクトがあって,やはり世界記録として認定(高さ7.5m)されたのだが,ギネスブックに載る前に,某飲料メーカーの作ったペットボトルタワーに追い抜かれた。

今回のペットボトルタワーの制作にあたっては,いろいろと確執があったように聞いているが,一応,偉業としてたたえておくことにする。

ペットボトルタワーなんてやっているのは宇部だけかと思いきや,愛媛県でもやっていた:

「ペットボトルツリー完成 東温・学生ら協力」(愛媛新聞,2010年12月24日)

宇部の常盤公園では,ペットボトルタワーだけでなく,地域の団体や企業がイルミネーションを展示するイベント「ときわファンタジア」が開かれている。素晴らしいかどうかというと・・・。まあ,下に掲載する展示物の一つを見て,読者諸氏には判断していただこうと思う。

ペットボトルタワー

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レアアースの用途:米国エネルギー省報告書より

レアアース問題(「レアアース問題について考える」2010年9月26日記事)の続きというか補足情報である。

少し前のことになるが,2010年12月15日,米国エネルギー省はクリーンエネルギー技術に不可欠なレアアースの役割や安定的な調達への取り組みをまとめた報告書「重要資源に関する戦略」を公表した:

Critical Materials Strategy,
U.S. Department of Energy, December 2010 http://www.energy.gov/news/documents/criticalmaterialsstrategy.pdf (PDF 4.47 MB, 171pages)

レアアースに関する報告書としては,今,世界で一番まとまったものではないかと思われる。

目次
第1章 はじめに
第2章 クリーンエネルギー技術における重要資源の用途
第3章 重要資源の需要・供給・価格の歴史的動向
第4章 エネルギー省の情報・研究開発・資金計画
第5章 他省庁の計画
第6章 他国の資源戦略
第7章 需給予測
第8章 臨界性評価
第9章 計画および政策


本記事ではレアアースの用途だけ取り上げる。

報告書の第2章ではクリーンエネルギー分野におけるレアメタルおよびレアアースの用途をまとめているが,コバルトやリチウムといった「レアメタル」を除いた,純粋にレアアースだけの用途を示すと次の表のようになる:


風力発電
自動車
照明

磁石
磁石
バッテリー
蛍光体
Y: イットリウム




La: ランタン



Ce: セリウム




Pr: プラセオジム



Nd: ネオジム




Pm: プロメチウム




Sm: サマリウム




Eu: ユウロピウム




Gd: ガドリニウム




Tb: テルビウム




Dy: ディスプロシウム




Ho: ホルミウム




Er: エルビウム




Tm: ツリウム




Yb: イッテルビウム




Lu: ルテチウム





磁石について
電気自動車やハイブリッド車,また,風力発電にはネオジム鉄ホウ素磁石によるモーターが使われている。電気自動車1台当たりではキロ単位でネオジムが使用されているが,風力発電では1基当たり数百キロ単位のネオジムが必要になるとのこと。もちろん永久磁石にはネオジムだけでなく,プラセオジム,ディスプロシウム,テルビウムが添加されるので,今後,クリーンエネルギー技術が広がるにつれて世界的にこれらのレアアースの取り合いになるだろうという。

ちなみに報告書によると,ネオジム鉄ホウ素磁石の基本特許は日立金属とマグネクエンチ社(中国がバックについている)が握っており,2014年まで両社のライセンスを受けていないメーカーはこの磁石を製造できないのである。つまり中国だけでなく,日本企業もまたアメリカのクリーンエネルギー技術の首根っこを握っているということ。

参考:Nd-Fe-B系焼結磁石に関わる特許およびライセンスに関するお知らせ (2007.4)


照明について
蛍光灯にはランタン,セリウム,ユウロピウム,テルビウム,イットリウムが使われている。白色LEDではランタンやテルビウムが不要になったものの,セリウムやユウロピウムが必要とされている。これらに対して,有機EL(OLED)では全てのレアアースが不要になるということである(ただし,有機ELにはレアメタルのインジウムが必要だということ)。当面は蛍光灯と白色LEDの普及が拡大するだろうから,やはりレアアースの需給は逼迫するだろう。

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2010.12.26

【第37回大佛次郎賞受賞】渡辺京二『黒船前夜』が受賞したそうで

ここ数日、以前に書いた渡辺京二(敬称略)『黒船前夜』の記事(「渡辺京二『黒船前夜 ロシア・アイヌ・日本の三国志』読了」(2010年6月9日))のアクセス数が増加している。おそらく今回同書が第37回大佛次郎賞を受賞したことが関係しているのだろう。

すでに書いたことの繰り返しになるが、同書で初めて知ったことは多い。18世紀後半~19世紀前半のシベリアでは賄賂・性風俗の乱れ・食糧難が常態化していたこと、松前藩は商人国家でアイヌの生活には干渉していなかったこと、ロシアと日本は接触にあたり、お互い礼を尽くして交渉していること、等々。この時代に日露交易が成立していた可能性は十分にあり、もしもそうなっていたらその後の世界史は大きく変化しただろう。

2010年12月21日の朝日新聞に受賞後インタビュー記事が掲載されているが、その中で「近代以前はロシアと日本もお互いの国を尊重するという意識があった」と渡辺京二は語っている。今、日本とロシアとは角をつき合わせるような関係である。歴史的な経緯がそうさせているのだが、別の付き合い方もありえたのだと思う。

この本を読了してから前著『逝きし世の面影』を読んだのだが、渡辺京二の語り口は一貫している。当時の人々の記録を引用し、それらの記録をして当時の様子を語らしめるという手法である。歴史観から出発する演繹的な手法ではなく、証言を積み上げる帰納的な手法である。

ちなみに記録を丹念に積み上げて時代を描き、従来の歴史観を覆すというのは中世史家の網野善彦(故人)を思い起こさせるが、渡辺京二は網野史観には異議を唱える立場である。網野史観では「活力に満ちた中世・抑圧された徳川期」と見る(司馬遼太郎も徳川期に対して似たような評価をしている)が、渡辺京二は徳川期を「一回かぎりの有機的な個性として文明」として高く評価している。網野史観への批判については渡辺京二『日本近世の起源』(洋泉社MC新書)を参照。

日本近世の起源―戦国乱世から徳川の平和(パックス・トクガワーナ)へ (洋泉社MC新書)日本近世の起源―戦国乱世から徳川の平和(パックス・トクガワーナ)へ (洋泉社MC新書)
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2010.12.24

エビ様=カニ様=神様:歌舞伎役者は荒ぶる神なのです

小生,最近,地上波を見ていないのだが,「SMAP×SMAP」では香取慎吾が市川カニ蔵なるキャラクターを演じて好評を得ているそうで。

海老蔵の話がだらだらと続いているようであるが,事実関係はまあどうでもいいかな,と思う。

歌舞伎役者がスキャンダラスな存在だというのは大昔からのこと。初代團十郎は舞台上で暗殺されているし,八代目團十郎は謎の自殺をしている。

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それほどセンセーショナルではないにせよ,現海老蔵やほぼ同世代の七代目染五郎には婚外子がいることが知られている。調べればいくらでも醜聞は出てくる。多くの人々は憤慨するのではなく,醜聞を楽しんでいるのだろう。

海老蔵のようなタイプの歌舞伎役者は,自由に情念のままにふるまう,古代の神々のような存在だと思う
(参考:【愛欲・残虐・猾智こそ神の本質】木村純二『折口信夫―いきどほる心』を読む)。

海老蔵が神である証拠としては,「にらみ」がある。市川團十郎家のお家芸で魔除けの所作。にらまれることで,観客には無病息災が約束される。異形の神々である,お相撲さんたちに子供が抱っこされると丈夫に育つという話と同じフレームワーク。

海老蔵は愛欲・残虐・猾智という古代の神々の本質をよく継承していると思う。スサノヲにあたるのではなかろうか?もしそうならスサノヲとしての道を貫いていただきたいものである。今後,古事記のスサノヲのごとき展開があると面白いと思う:

ここに八百万(やおよろず)の神ともにはかりて、速須佐之男命(ハヤスサノオのミコト)に千位置戸(ちくらおきど:賠償)を負わせ、また髭を切り、手足の爪をも抜かしめて、かむやらいやらいき(高天原から追放した)。(古事記)

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2010.12.23

【クリスマスプレゼント】天界物語八冊組【セイゴウ・セレクト】

今年のクリスマスプレゼントとしてツマがくれたのがこれだった:

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松岡正剛セレクト「天界物語八冊組」(松丸本舗ブックギフト・プロジェクト)

小生がセイゴウのファンだということを知っていたツマが松丸本舗に注文したらしい。
中をあけると,こんな感じ↓

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良く見ると,「オイディプス王・アンティゴネ」の表紙にセイゴウのサインがある!

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あと,セイゴオ特製ブレンドコーヒー「玄月珈琲」が同梱されている↓
本読みながら飲みなさいということですな。

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8冊組の全貌は以下の通り:

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  • ヴィリエ・ド・リラダン(訳:斎藤磯雄)『未来のイブ』(創元ライブラリ)
  • ルイス・キャロル(訳:河合祥一郎)『鏡の国のアリス』(角川文庫)
  • レジーヌ・ベルヌー(訳:橋口倫介)『テンプル騎士団』(白水社・文庫クセジュ)
  • フォークナー(訳:加島祥造)『サンクチュアリ』(新潮文庫)
  • ソポクレス(訳:福田恒存)『オイディプス王・アンティゴネ』(新潮文庫)
  • ロード・ダンセイニ(訳:荒俣宏)『ぺガーナの神々』(ハヤカワ文庫FT)

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  • リサ・ランドール(監訳:向山信治,訳:塩原通緒)『ワープする宇宙』(NHK出版)
  • ジョン・ブルックス(訳:神谷武夫)『楽園のデザイン イスラムの庭園文化』(鹿島出版会)

小生の本棚にはまだ入っていない本ばかり。ちなみに全冊,どこかに松岡正剛のサインが入っていた。
小生自身ではこんなにまとめ買いしたことが無いので,うれしい限りである。

とりあえず,ジョン・ブルックス『楽園のデザイン イスラムの庭園文化』から手をつけているところである。

強い太陽の光に照らされた荒野に住んでいた初期のムスリムにとっては,ちょっとした木陰や小川のせせらぎこそが天国であり,その天国を身近に再現するのがイスラム庭園であるということらしい。コーランには至福の表現として「潺々(せんせん)と河川の流れる庭園」という言葉が30回以上も現れるという。

今日は第3章「イスラム期のスペイン」まで読んだ。コルドバのメディナ・アサアラ,セビーリャのアルカサル内の庭園,グラナダのアルハンブラなどが紹介されている。

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  ◆   ◆   ◆


ちなみに,小生がツマに贈ったのは,東芝ダイナブックT350/56ABだったりするわけで。

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2010.12.08

【中東情勢】「WikiLeaksはイスラエルの立場を強化した」とネタニヤフ首相

WikiLeaksの創設者,Julian Assange氏が2010年12月7日,ロンドンで逮捕されたそうだが,WikiLeaksで得をしたという国もある。

ちょっと前のことだが,イスラエルの有力紙,ハァレツの記事である。

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11月末,ネタニヤフ首相はWikiLeaksによる外交文書暴露はイスラエルの正しさを証明し,立場を強めることになったと発言している:

Netanyahu: WikiLeaks cables prove Israel is right on Iran (By Barak Ravid, November 29, 2010, Haaretz)

WikiLeaksによって,サウジアラビア等,アラブ諸国の指導者たちがイランへの武力制裁をアメリカに要請していたことが明らかになった。つまりこれは「イランの核開発問題こそが中東最大の脅威だ」というイスラエルの主張を,実はアラブ諸国も支持しているのだ,ということをネタニヤフ首相は言っている。

"If leaders start saying openly what they have long been saying behind closed doors, we can make a real breakthrough on the road to peace." (Israeli Prime Minister Netanyahu)

なおネタニヤフ首相は,イスラエル政府はWikiLeaksのような外交文書漏えいへの対策は万全で,ダメージも最小のものにとどめることができると述べている。


肝心のイラン核開発問題だが,ジュネーブの協議では「継続協議」,つまり先送りということになった。

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2010.12.07

【中東情勢】オバマの中東政策への批判【イスラエル有力紙】

イランの核開発問題に関する最近の動きとWikiLeaksの情報をもとに,オバマ政権の中東政策を批判した文章がイスラエルの最有力紙イェディオト・アハロノトに掲載された:

Opinion: Obama's Iran failure
"Unlike Arab leaders, American president fails to understand scope of Iranian threat" (by Shoula Romano Horing, December 5, 2010)

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Shoula Romano Horing氏はイスラエル生まれのイスラエル育ちだが,アメリカのミズーリ州で弁護士をしているらしい。

で,彼女のオピニオンを簡単に述べると,次のとおりである:

  • 中東で最大の問題は「イスラエル入植地問題」ではなく「イラン核開発問題」である
  • これはイスラエルだけの主張ではなく,中東穏健派(スンニ派)諸国もまた同意見である
  • WikiLeaksの公開文書で明らかなように,サウジアラビアやカタールやバーレーンの指導者たちはイランへの武力制裁をアメリカに要請している
  • イランは核兵器の脅威を武器に,シーア派がリーダーシップをとる世界秩序を構築しようと企んでいる (Iran’s ultimate aim is to establish global Islamic rule, a new Islamic empire, but this time under Shiite leadership.)
  • わかっていないのはオバマだけである
  • オバマはかつてのソ連と同じように,イランが話のわかる相手だと思っている (Obama does not believe in a military solution... But he does not undestand that contrary to the Communist leaders, Iranian leaders are not "rational" adversaries.)
  • しかし,イランはソ連ではない (Iran is not Soviet Union)
  • オバマは「イスラエル入植地問題」の解決が「イラン核開発問題」の解決に結びつくと考えているが,イスラエル政府はそんな話し合いには応じてはならない

イスラエル人としては当然の意見だろう。イランは核開発を「平和目的」と述べているが,ウラン濃縮を自前でやろうとするかぎり,他の国の信頼を得られるとは思えない。サウジアラビアが原発を導入することに関しては世界の誰も非難しないのに,イランが導入することに関しては非難が集中するということについて,イランはよく考えておくべき。やはり衣の下から鎧が見えるんですよ。

現在ジュネーブで,安保理事国+ドイツの6か国とイランとの間で核問題について協議が行われているが,今のところ進展がない様子。先日の核物理学者襲撃事件についても言及しているとか。

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NHKがYouTubeで200番組を公開しているって話

昨日(2010年12月6日)からYouTubeがNHKの番組200本と大河ドラマのダイジェスト30本の公開を始めたとのこと(参考:AV Watch)。

「そら,ええ話じゃ」と早速見に行った次第である:

NHK番組コレクション:
http://www.youtube.com/NEPYOU

大河ドラマのダイジェスト(5分程度)は,「天地人」,「篤姫」,「武田信玄」,「徳川家康」の4つ。篤姫の再生回数が922回(12月7日1時現在),他のドラマの再生回数の2~3倍で断トツの人気。

みんなのうた」はさだまさしの迷曲「がんばらんば」はあるものの,小生のお気に入りの「テトペッテンソン」がなくて残念。

NHK特集なんかは8本だけが公開されているが,どれも渋いセレクトだと思う。小生はとりあえずこれから「カメラマン・サワダの戦争」と「勝負 将棋名人戦より」を見る予定。

後者の「勝負 将棋名人戦より」は第36期将棋名人戦(昭和53年=1978年4月,愛知県蒲郡市西浦温泉「銀波荘」)第3局2日目のドキュメンタリーだが,中原誠名人※が30歳に見えないのがすごい。当時30歳のこの人に比べると,現在40歳の羽生は本当に若々しいなあ。というか,昔の人はなんで老けて見えるの?

このドキュメンタリーの見どころは中原誠名人に挑む森けい二・八段(32)がやたら自信満々だというところ。「相手が長考に入るとうれしくてしょうがない」,「中原さんは強くないですよ。相手が勝手に転んでいる」,「名人とったらラスベガス」などという人を食った発言の後,この対局では勝利を収めるわけである。




※24歳で大山康晴を破って名人位に就いたり,歴代2位の通算1308勝という記録を残したりと,将棋の歴史に残る業績を上げつつも,林葉直子関連スキャンダル(「今から突入しま~す」)があったり,2008年8月の王将戦予選で脳内出血で倒れて翌年引退したりと,結構大変なことがあった人。

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2010.12.03

双曲型熱伝導方程式(HHCE)と相対論的熱伝導方程式(RHCE)の解説

今日は全くもってアカデミックというか趣味の話。

熱伝導方程式といえばふつうは熱バランス式:


Image001

やフーリエの法則:


Image002

から導出される放物型の方程式:


Image003

が思い浮かぶが,これだと熱に関する情報が無限大の速度で広がってしまうので,昔から改良が提案されていた。

改良型としては双曲型熱伝導方程式(Hyperbolic Heat Conduction Equation: HHCE):


Image005

がMorse & Feshbach [1], Cattaneo [2], Vernotte [3], Chester [4]らによって提案されていた。

しかし,導出のしかたがなんとも場当たり的だった。

そこで,情報伝達速度Cは有限だという相対論的立場から,Ali & Zhang[5]は熱バランス式やフーリエの法則に出てくるナブラ∇やLaplacian∇^2を,4次元ナブラ = quad: □や4次元Laplacian = d'Alembertian: □^2で置き換えて4次元版の熱バランス式:


Image017

や4次元版フーリエの法則:


Image019

を定義し,これら2つの式から相対論的熱伝導方程式(Relativistic Heat Conduction Equation: RHCE):


Image005

を導出した。HHCEもRHCEも形式的には同一であるが,導出過程,そもそもの世界観が異なる。

その辺の話は以下にまとめといたので,万が一興味があればご参照いただきたい:

これらの式がなんの役に立つかは各自の宿題とする。

参考:
[1] P. M. Morse, H. Feshbach, Method of Theoretical Physics, McGraw-Hill, New York, 1953
[2] C. R. Cattaneo: Sur une forme de l'équation de la chaleur éliminant le paradoxe d'une propagation instantanée, Compte. Rend. 247 (4) (1958), pp. 431 – 433
[3] P. Vernotte: Les paradoxes de la theorie continue de l'équation de la chaleur, Compte. Rend. 246 (22) (1958), pp. 3154 – 3155
[4] M. Chester: Second sound in solid, Phys. Rev. 131 (15) (1963), pp. 2013 – 2015
[5] Y. M. Ali, L. C. Zhang: Relativistic heat conduction, Int. J. Heat and Mass Transfer, 48 (2005), pp. 2397 – 2406

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2010.12.02

ロッキードが海洋温度差発電(OTEC)施設の追加予算をゲット

航空機メーカーとしてよく知られているロッキード・マーティンがハワイ沖の海洋温度差発電(Ocean Thermal Energy Conversion: OTEC)パイロットプラント建設の追加契約(予算440万ドル)を米海軍と結んだという話:

Lockheed Martin to Continue Ocean Thermal Energy Conversion in Hawaii Under New Contract (November 22nd, 2010, Lockheed Martin)

ロッキードは2009年にすでに810万ドルの予算を得ており,その追加である。

海洋温度差発電というのは,海の表層水と深層水の温度差を利用して発電する技術である。

簡単に言えば,(1)作動流体(冷媒)を暖かい表層水で蒸発させてタービンを回して発電,(2)その後,作動流体を冷たい深層水で冷却水で凝縮させ,ふたたび表層水のところに送り込むという仕組みである。ロッキードが公開している絵を見たほうが早い:

Otec_process2
(c) Lockheed Martin

作動流体はよくわからないが,アンモニアではなかろうか?

なんで米海軍がこのような施設をほしがっているかというと,熱帯の島々にある海軍基地で,環境を保護しながら電力を供給するため。米海軍は自然に優しい。

似たような話では米陸軍がカリフォルニア州アーフィン駐屯地で500MW = 500,000kW級太陽光発電設備を建設しているという話がある(総工費15億ドル,2022年完成予定。参照)。

さて,海洋温度差発電で思い出したのが,谷下市松『工学基礎熱力学』(裳華房)のこの問題:

フランスの発明家クロード(G. Claude)の方法によって,海の深部と表面の水温の温度差を利用して動力を発生することができる。

ある熱帯地方またはその他の特定の地方では海の表面温度は約t1 = 28℃であり,また200~300mの深部においてt2 = 10℃である。

この温度差を持つ大量の海水を高熱源および低熱源として,動力の発生に利用するときは,この両温度間のカルノーサイクルの熱効率はいくらか?(pp. 132 - 133)

機械工学科卒の人なら簡単に解けるはず。そして,(カルノーサイクルという理想のサイクルを仮定しているにもかかわらず)効率が悪いこともわかるはず。

ちなみにロッキードのパイロットプラントはいったいどのくらいの出力なのかはプレスリリース資料からわからなかった。太陽光みたいに実用になるかどうか?

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2010.12.01

テヘランで核物理学者が暗殺される

8月の中旬,イランのブーシェフル(ブシェール)原発への核燃料装填を阻止するべくイスラエルが攻撃を加えると言う情報が流れ,中東情勢が緊迫した:

結局,イスラエルの攻撃は無く,中東情勢は沈静化したかに見えたが,なにやら怪しい動きがまた出てきたようである。イランの核物理学者2人がテヘランの別々の場所で爆弾テロに遭い,1人が死亡,もう1人が負傷したという:

"Iranian nuclear scientist killed in motorbike attack" (November 29, 2010, BBC)

死亡したのはシャヒド・ベヘシティ大学(Shahid Beheshti University)の原子力工学科に所属するマジド・シャフリアリ(Majid Shahriari)教授。

もう1人の負傷した核物理学者は同大学のフェレイドゥーン・アッバシ(Fereydoon Abbasi)教授で,同位体分離の専門家だという。同位体分離というのはウラン濃縮のことを指しているのではなかろうか?

どちらも自動車で出勤途中に,バイクに乗った男たちの爆弾攻撃に遭ったとのこと。

アフマディネジャド大統領は,これらの事件の背後には西側およびイスラエルがいる,と非難し,メフマーンパラスト報道官は「人権擁護を謳う西側諸国」とぼやかして非難している(参考:イラン国営放送)。

ちなみに例のブーシェフル原発は先の土曜日(11月28日)に運転を開始したとか。あと,イランの核問題については12月6,7日にジュネーブでEUとイランが協議する予定だが,イランは譲歩しない模様。


8月にはイスラエルによる攻撃が無かったものの,結局,別の手で阻止活動が行われているのだと思えるのだがどうだろうか?

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