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2010.09.25

【尖閣諸島問題】「中国人船長釈放」は日本の外交史上稀に見る悪手?!

今日は外回りの仕事が続き、ニュースをチェックする暇が無かった。

で、家に帰ってツマから聞かされたのが、これである:
尖閣沖衝突、中国人船長を処分保留で釈放」(読売新聞、2010年9月24日)

うえー、まじかよー、と小生、ひっくり返っちゃったもんね。

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レアアース禁輸だのフジタ社員拘束だの、次々と圧力が加わったとはいえ、ここで船長釈放ですか。

これまでの流れから見たら、誰もが「中国の圧力に、日本の司法が屈服」という風に受け取るに決まっている。中国が増長してしまうでしょうが。

あと、いけないのが那覇地検が「外交的配慮」を理由に挙げたこと。司法関係者が外交を持ちこんじゃいかん。外交問題は政治家の仕事だ。政府が面倒事を地方の検察に押し付けたということか?このあたり、大津事件で司法の独立を守ったとされる児島惟謙は偉かった。

中国人船長釈放の判断は司法の判断ではなく、政治的判断だろうというのが大方の推測である。では、誰が判断したのか?やはり菅首相か?巷に広がる失望と怒りの声を受けて、この政権も短命に終わるのだろうか?

日本側が外交的配慮で船長(本当は軍人との噂もある)を釈放しても、中国は「日本側の司法手続きは、すべて違法で無効」(姜瑜副報道局長)と言っているわけで、感謝もされていない。レアアースも禁輸が解除されたわけではなく、フジタ社員も解放されたわけではなく、なにも進展しておらず、取引にもなっていない。

「中国人船長釈放」は日本の外交史上稀に見る悪手ではないかと思えてくる。


  ◆   ◆   ◆


と、まあ、ひとしきり怒ったところで再考。

「中国人船長釈放」という政治的決断が、日本国民の反発を受けるだろうことは明らかである。なのに、実行したということの裏側には、何か合理的な理由があるに違いないと勘ぐってみる。小生としては次の2つを候補として挙げてみる:

1.米中手打ち説
これは「ネットゲリラ」などで説かれている説。

FNN等で報道されているが、9月17日に米軍は三沢基地にB-52H爆撃機を配備した。これは中国に対する威嚇。さらに、前原-クリントン会談では尖閣諸島は日米安保の対象ということが確認された。

これで、中国は尖閣諸島に手出しできなくなり、米国との間で手打ちをせざるを得なくなった。日本はアメリカの要請を受け、矛を収めた・・・という説。

2.中国現政権救援説
これは毎日新聞の「木語」(金子秀敏専門編集委員、2010年9月23日)という記事をベースに小生が考えたもの。

中国の指導部は大きく分けて対外融和派と対外強硬派に分かれる。胡錦濤主席・温家宝首相らの現政権は対外融和派。東シナ海ガス田問題に関して日中共同開発という決着をつけた。対外強硬派はこれが面白くない。

ここにきて尖閣諸島問題が発生。現政権がちょっとでも日本に譲歩する姿勢を示したら、10月に開催される中国共産党中央委員会第5回総会で対外強硬派は現政権を総攻撃するに違いない。だから、現政権は対日強硬姿勢を崩せない。

日本にとっても米国にとっても、中国の政権を対外融和派が握り続けてくれる方がいいわけで、一通りもめた後は胡錦濤・温家宝に花をもたせる。もちろん、尖閣諸島は日本領のままだが、あえてそれには触れず、対外強硬派を刺激しない・・・という説。


まあ、これらのような複雑な背景はなく、単に日本の政財界が中国に降伏したという可能性も捨てきれない。


いろいろ勘ぐってみたものの、今回の件、「日本、中国に白旗」(某韓国メディア)というのが大方の見方である。だが、中国の完勝というわけではない。尖閣諸島は日本が保持しているし、日本人の対中感情は天安門事件のときよりもさらに冷えてしまった。また、周辺諸国の警戒感がさらに増したことも事実。中国は国際的に孤立しつつあるのではなかろうか?


  ◆   ◆   ◆


今回の件で憤懣やるかたないついでに「中国の栄光は続かない」という説を紹介する。
『中国の時代』は短命 米フォーブス誌」(日経新聞、2010年9月16日)
元記事:"China Hits A Great Wall" (Gordon G. Chang, Forbs.com, September 9th, 2010)

土地バブル、自然災害、人口ピラミッドのひずみ、等など、中国には不安材料が多々ある。早ければ2011年末、おそくとも2010年代のうちに中国は停滞するだろうとゴードン・G・チャン氏は語る。

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