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2010.09.25

中国の軍事力に関する年次報告書2010

米国防省による「中国の軍事力に関する年次報告書」の2010年度版が先月出ていたので,遅ればせながらご紹介する(4.8MB):

Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010, Office of the Secretary of Defense, U.S. Department of Defense, 2010:
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf

おととしも同じような記事「中国の軍事力に関する年次報告書」を書いたが,その時と同様に,エグゼクティブ・サマリーの簡単な訳をしてみた:

エグゼクティブ・サマリー

過去30年にわたる中国の経済成長および科学技術の進展によって中国の軍備の近代化のペースはますます早まっている.中国は外交的優位を保ち,紛争を有利に解決する道具として軍事力を用いることができるようになっている.

能力が向上し,海外への進出も可能となった人民解放軍は,平和維持・人道的援助・災害救助・海賊対策などの国際貢献に参加できる.これは合衆国としても歓迎することである.

しかし,他方では,人民解放軍は「接近阻止・領域拒否戦略(anti-access and area-denial strategies)」を追及している.さらに軍事力の及ぶ範囲の拡大をも図っている.2010年のQDR(Quadrennial Defense Review Report)によれば,中国は中距離弾道団,巡航ミサイル,攻撃型潜水艦,長距離防空システム,コンピュータ・ネットワーク攻撃能力などの開発・配備を続けている.

中台関係に関して言えば,台湾海峡を挟んだ経済・文化交流は進展しているものの,中国の対台湾戦闘力は依然として増強されている.また中国は台湾有事の際,台湾に対する合衆国の援助を阻止・遅延・拒否(deter, delay, or deny)しようと努力している.台湾海峡における軍事力のバランスは中国にとって有利になりつつある.

人民解放軍はささやかながら中国の軍事力・安全保障の透明化を進めてきた.しかし,中国がその強大な軍事力を何に使うのかという点に関してはまだまだ不透明な部分が残されている.この不透明な部分が残されたままであれば,外交・軍事問題において誤解や誤算が生じるだろう.

オバマ大統領は「米中関係に論争や困難はつきものだ.しかし,互いに宿敵であることを運命づけられているわけではない」と述べた.米中軍事交流によって,不信感を取り除き,相互理解を深めることは,大統領の意思に沿うものである.中国が軍事交流をたびたび延期していることは,この努力を妨げるものである.

国防総省は今後も中国にアジアおよび世界の安全保障において建設的な役割を果たすよう働きかけるつもりである.また同時に中国の軍事力の監視と紛争の阻止に務める.軍事方針,プレゼンス(存在感),能力向上,同盟関係・パートナーシップの強化などを通して,国防総省はアジア太平洋地域の平和と安定を維持しようとする米国の意思と能力を示す.

2008年と同じく,米国防省は,中国の軍事力および軍事方針の不透明性を問題視している.

しかし,今回の尖閣諸島問題で,領土的野心,というよりも資源的野心は明らかになったのではないかな?

ちなみに今回の年次報告書では尖閣諸島問題に関してはこういうことが述べられている:

中国の領土紛争(報告書17ページ)

歴史的にみると,中国は領土紛争の際,軍事力を行使したりしなかったりと一定していない.1962年の中印国境紛争,1979年の中越戦争のように戦争に至っている例もある.1960年代のソ連との間の国境紛争では核戦争の可能性もあった.中国が譲歩したケースもある.1998年以降,中国は周辺6か国との間で11の領土紛争を抱えている.そのうちのいくつかは排他的経済水域(EEZ)や海底油田・ガス田の領有に関するものである.

東シナ海には7兆立方メートルの天然ガスと1000億バレルの原油が存在するとみられている.日本は日中中間線でEEZを分けるべきだと主張しているのに対し,中国は、中国大陸から日中中間線を超えて沖縄トラフまで大陸棚が伸びていると主張している.

2009年初め日本は,中国が2008年6月の合意を破り,一方的に日本側主張のラインを越えて海底資源探索を開始したと非難した.

また,日本と中国は尖閣諸島の領有権をめぐって対立している.しかし両国はこの領土紛争は日中関係全体には悪影響を与えないと述べている.

「尖閣諸島問題は日中関係全体には悪影響なし」とのことだが,今回の件で米国の見方は大きく変わったはず.

クリントンや米軍幹部は改めて「尖閣諸島は日米安保の対象」と述べたわけで,来年の年次報告書では尖閣諸島問題がもう少し詳しく取り上げられるのではなかろうか?

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