« 猛暑の中で剪定作業 | トップページ | 米軍が日米同盟を説明する漫画を配っています »

2010.08.03

【2010年版労働経済白書】日本型雇用の再評価【人材育成の観点】

新聞報道でも取り上げられているが、今日(7月3日)発表された、2010年版「労働経済の分析」(労働経済白書)の目玉は、「日本型雇用の再評価」である。逆に言えば、非正規雇用拡大に対する批判である。

そのことが詳しく述べられているのが:

平成22年版 労働経済の分析-産業社会の変化と雇用・賃金の動向-
第3章 雇用・賃金の動向と勤労者生活」

である。

第1節152ページにはこんなことが書かれている:

1990 年代から2000 年代にかけての雇用や人材育成についての企業側の考え方の変化をみると、1990 年代には、職業能力開発は本人主体という考え方が強かったが、2000年代も半ばをすぎると、人材育成を会社主体で行うという考え方が強まっている。 <中略> 企業と労働者の協力と納得のもとに職業能力の形成がなされることが重要である。

仕事の内容が複雑化・高度化していくに従って、能力開発ということがますます重要になっている。能力開発は一朝一夕には成し遂げられない。従って長期雇用の中で人材育成を行うこと必要となる。

本白書では独立法人労働政策研究・研修機構の調査結果(2010年)が取り上げられているが、企業の人事方針も、「採用方針は、即戦力志向からじっくり育成型へ」、「専門性をみて配置し、総合的に力を発揮できるように育成」という姿勢に変わってきている(156~157ページ)。

同じく、独立法人労働政策研究・研修機構の調査結果(2010年)によれば、長期雇用のメリットの方が大きいとする企業の割合は約7割に達している。

長期雇用のメリットとしては

  • 知識や技能の継承
  • 従業員の長期的人材育成
  • 組織的な一体感の維持

が挙げられている。デメリットとしては

  • 経済状況の急激な変化への対応が困難
  • 新しい発想の生まれにくさ
  • 従業員の企業への依存

が挙げられているが、総合的には「人材育成の価値は、長期安定雇用のもつデメリットを補ってあまりあると判断されているものと思われる。」と白書では述べられている。

第3節では非正規雇用者の増大によって格差社会が生まれたことを指摘しており、このことを背景に人々の意識が「自由」から「平等」にシフトしていることを述べている。

第3章はこのようにまとめられている:

今まで、業績・成果主義によって日本的雇用慣行を改めようとする動きが強かったが、その背景には、競争を重視する社会意識が強まり、反対に、連帯を重視する社会意識が後退してきたことがあると思われる。しかし、こうした人々の社会意識は、今、急速に変化している。目指すべき社会の姿に関する国民意識をみると、意欲や能力に応じ自由に競争できる自由競争社会を目指すべきか、貧富の差の少ない平等社会を目指すべきか、という問いに対し、2000 年代前半までは自由競争社会を目指すべきとする割合の方が高かったが、2000 年代後半には、平等社会を目指すべきという割合の方が勝っている。

我が国企業に歴史的に形成されてきた雇用慣行には様々な課題もあるが、雇用を安定させる機能とともに、長期的な視点に立って人材を配置、育成、評価するという人材育成機能が備わっている。政労使の連携と協力のもとに長期雇用を基盤とした我が国の雇用システムを改善し、拡充させ、すそ野の広い技術・技能の蓄積を通じて、人々の所得を底上げることによって、雇用の安定と格差の是正を一体的に進め、内需を力強くしていくことが、今日、我が国に生きる人々の希望に応え、着実な経済・社会の発展を生み出す道であるように思われる。(197ページ)

ということで、本白書では、人材育成の観点から日本型長期雇用が再評価され、また長期雇用によって育成された人材が所得を底上げすると主張されているのである。

単純に長期雇用がいい、と言っているわけではないことに注意。

|

« 猛暑の中で剪定作業 | トップページ | 米軍が日米同盟を説明する漫画を配っています »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【2010年版労働経済白書】日本型雇用の再評価【人材育成の観点】:

« 猛暑の中で剪定作業 | トップページ | 米軍が日米同盟を説明する漫画を配っています »