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2010.07.25

「日立 uVALUEコンベンション2010」に行ってきた―その3 リチャード・フロリダの講演が熱い

7月22~23日、東京国際フォーラムで開催された「日立 uVALUEコンベンション2010」の話の第3弾。これでおしまい。

<その2 リチャード・フロリダの講演が熱い件>

7月23日には『クリエイティブ資本論』や『クリエイティブ・クラスの世紀』などで知られる都市経済学者、リチャード・フロリダにより講演が行われた:

リチャード・フロリダ:「クリエイティブクラスの世紀、そしてその後」(7月23日15:15-16:15@hall B7)

もともと冷房が弱いうえに、ホールの前は物凄い行列になって、熱気で汗だくになったことであるよ。

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リチャード・フロリダのファンって、こんなにたくさん、いたのか?

<講演内容>

パンフレットによれば、

With the 100th anniversary of Hitachi, Ltd., it is pleasure for me to share with you what comes next after the great shift in my recent work, The Great Reset.

日立創立100周年に際し、私の近著「The Great Reset」で展開した、経済の大変化の次にくるものは何なのかについて、皆様と考えることができることをうれしく思います。

とのメッセージがフロリダから寄せられているのだが、講演の中ではそれほど明確な予測を述べていたわけではない。本人も「水晶玉を持っているわけではない」と言って防御線を張っていた。あと、詳しくは近著「The Great Reset」を読んでくれ、ということなのかもしれない。

リチャード・フロリダが述べていたことを箇条書きにするとこんな感じである:

  • The Great Reset
    • 現在は「第3の恐慌」に見舞われている。しかし、これはまったく新しい社会、経済、生活が生まれる、"The Great Reset"のときでもある
    • 前の世界恐慌は1929年に始まったが、そこから完全に回復するのは1950~60年にかけてだった。すなわち"The Great Reset"には時間を要する
    • 世界恐慌があった一方で、1930年代には技術革新があった。危機の時代には新しいものが生まれる
    • 現在進行中のトレンドは、ドラッカーや野中郁次郎が言っているような工業社会から知識社会へのシフトである。知識社会ではクリエイティビティが重要となる
    • クリエイティビティを担うクリエイティブクラスは現在、先進国の人口の30%程であるが、2020年には40%に増加するだろう
    • クリエイティブクラスの例を挙げると、科学者、研究者、技術者、設計者、アーティスト、医者、弁護士、会計士、経営者といった人々である。これらの人々は失業率が低いことが特徴である
  • クリエイティビティの活用
    • 組織の中のクリエイティビティを活用する組織が勝者となる
    • 企業におけるクリエイティビティの活用の代表例は日本の自動車産業。米国のように、CEOだのR&D関係者だの、上層部だけが頭脳を使うのでは企業は勝利しない。工場の人々がクリエイティビティを発揮することによって生産性が向上し、日本の自動車産業が勝利した
    • クリエイティビティの活用は工場だけに留まっているのはなぜか?R&Dの現場や経営の場でもクリエイティビティを活用しなくてはならない
  • どうやってクリエイティビティを伸ばすか?
    • クリエイティビティは報酬などによって伸ばせるものではない。モチベーションは内的なもので、クリエーションの喜びが原動力
    • クリエイティブクラスには集中力を維持するための連続した時間が必要である。いわゆる「フローの中断」があってはならない
    • ということは、組織があって、そのリズムに合せて人々が仕事をするという従来のやり方ではクリエイティブな仕事はできない。これからは逆で、クリエイティブな仕事をする人々に合わせて、組織があるべき
  • 国家・企業から都市・コミュニティ・リージョンへ
    • これからは従来の組織である、国家・企業が中心にはならず、人間本位の都市・コミュニティ・リージョンが中心の時代となる。これからは、都市・コミュニティ・リージョンの中で、異なった考え方の人々が競争し合って新しいものを生み出す時代になる
    • これからは国家の時代ではない。世界は40のメガリージョンがリードする
    • メガリージョンとは例えば、ニューヨークや東京のような人口集中地帯のことである。40のメガリージョンには世界人口の18%が集中し、3分の2の富を生み出す

<小生なりのまとめ>
リチャード・フロリダはクリエイティブクラスを「科学者、研究者、技術者、設計者、アーティスト、医者、弁護士、会計士、経営者」としているが、講演全体を聞いていると、実はそういった特定の職業の人たちを指しているのではないということがわかる。

職業に関係なく、創意工夫をする人々をクリエイティブクラスと呼ぶわけである。「科学者、研究者、技術者、設計者、アーティスト、医者、弁護士、会計士、経営者」という職業にはクリエイティブクラスが多い傾向があるというだけの話である。

医者とかアーティストとか特定の職業を指標として用いないと、「クリエイティブクラスが人口の30%」とか「40%」とかいう議論ができないので、フロリダはクリエイティブクラスと特定の職業を結びつけて話したのだろうと思う。


知識社会へのシフト、クリエイティビティの重視、ということが本当であれば、現在の会社の運営システムは崩壊し、クリエイティブな個人事業主(例えば、企画をする人、設計をする人、システムを組む人)の合従連衡でビジネスが行われるということになるだろう。

とすると、コミュニケーションがとりやすい都市部に個人事業主が集中するので、40のメガリージョンに人材と富とが集約されることになる。「40のメガリージョンには世界人口の18%が集中し、3分の2の富を生み出す」というリチャード・フロリダの数字をもう少し変形すると、世界人口の約2割が世界のGDPの約8割を生み出すというパレートの法則になる。

リチャード・フロリダはメガリージョンになりそこなった地域について触れなかったが、小生なりに考えてみると、世界の人口の8割が2割の富しか得られないということになる。単純労働者ばかりの地域の誕生。これって、世界規模の格差社会。国家は力を失っているだろうから、富の再配分は行われない。40のメガリージョン帝国とその周辺の植民地という世界新秩序は、なんとなく暗い未来のような気がする。

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コメント

お久しぶりです。
相変わらず、興味深いネタを縦横無尽に快刀乱麻されていますね。

所用があって、リチャード・フロリダ氏に注目していました。

詳細は、後日メールでも。

投稿: 娘がゴリラに似てきました | 2010.08.12 08:41

こちらこそ、お久しぶりです。
リチャード・フロリダ氏はこまめにブログ
http://www.creativeclass.com/
をつけておられるので、のぞいてみるとよいと思います。

投稿: fukunan | 2010.08.18 01:20

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