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2010.07.29

【情けない英雄たち】『カレワラ物語』

カレワラ」は19世紀にエリアス・リョンロートによってまとめられたフィンランドの民族叙事詩。カレワラというのは英雄の地という意味であり、フィンランドを指す。

23,000行にも及ぶ長大な詩を、簡略化・散文化したものが、この『カレワラ物語』である。

カレワラ物語―フィンランドの国民叙事詩カレワラ物語―フィンランドの国民叙事詩
キルスティ マキネン Kirsti M¨akinen

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元の「カレワラ」を忠実に訳した小泉保訳『フィンランド叙事詩 カレワラ』や森本覚丹訳『カレワラ フィンランド国民的叙事詩』を読むことに二の足を踏んでいた小生。しかし、丸善「松丸本舗」でたまたま手に取ったこの『カレワラ物語』は簡潔な記述で、なんとか読破できそうだったので購入した次第である。ちゃんと読了した。

あらすじはWikipediaの記事「カレワラ」を読んでいただくことにして、ここで述べようと思うのが、登場する英雄たちがわりと情けない、というか、ちゃんとしてない、ということである。

<英雄たち>

物語全体の主人公は英雄ワイナミョイネン(本書ではヴァイナモイネン)である。長らく母親(大気の乙女イルマタル)のお腹に居たため、出生時から老人だった。この辺、80歳まで母親のお腹に居たという伝説を持つ老子と似てる。

ワイナミョイネンは力強く、賢く、歌の名手で、魔術の使い手で、英雄としての条件をほぼ全て兼ね備えていた。が、一つだけ欠けていたのが、女性にモテないということ。サーミの娘、アイノに求婚したところ、アイノは老人と結婚することを拒み、海に逃げて溺死し、サケとなった。

次に、ワイナミョイネンは北極圏の国、ポホヨラの女主人、ロウヒの娘(ポホヨラの乙女)を嫁にもらおうとするのだが、ロウヒの娘の出す難題全てに応じることができず、それどころか重傷を負ってしまう。

その後もロウヒの娘を娶るべく挑戦するが、ロウヒの娘はイルマリネン(職業:鍛冶屋)を夫として選んでしまい、ワイナミョイネンは結局、生涯独身となってしまう。ただし、ワイナミョイネンはわりとさっぱりした性格らしく、イルマリネンを恨むことなく、その結婚式では上機嫌で歌い、式を盛り上げている。

イルマリネンもまた英雄の一人で、普段は煤で真っ黒けなのだが、サウナに入ってさっぱりすると、肉親(イルマリネンの妹、アンニッキ)も見間違えるほどのいい男になる。イルマリネンは何でも作る鍛冶屋で、ありとあらゆる富をもたらす「サンポ」というものも作り出したほどである。しかし、「金の乙女」という役に立たないものを作ったりする。せっかく結婚したロウヒの娘をクッレルヴォという乱暴者に殺されてしまうという悲劇に見舞われている。


<クライマックス>

物語が盛り上がるのは、「サンポ奪還の旅」という部分である。「サンポ」はイルマリネンが作ったものの、ロウヒの所有物となって、ポホヨラの経済を支えていた。しかし、そもそもはイルマリネンの所有物であるべきだと、ワイナミョイネンは考え、イルマリネンやレンミンカイネンらと奪還の旅に出た。ここで英雄や神々が勢ぞろいするわけである。

下の図はWikipediaからとってきた、アクセリ・ガッレン=カッレラ画『サンポの防衛』という絵である。

Gallenkallela_the_defence_of_the_sa

(source: ファイル:Gallen-Kallela The defence of the Sampo.png)

右上の鳥は変身したロウヒ、船の舳先にいるのはワイナミョイネン、その下はレンミンカイネン、ロウヒの真下にいるのはイルマリネンである。

ワイナミョイネンたちがサンポを得るのに成功したかというと、そうはならなかった。サンポは海に落ちてバラバラになった。残骸の多くは海底に沈んだので、それ以来、海は豊かな恵みを生み出すようになった。残りの残骸はワイナミョイネンたちの国(=カレワラ、ヴァイノラ、もしくはフィンランド)に流れ着き、その土地を豊かなものに変えた。


<ワイナミョイネンの最後>

「サンポ奪還の旅」のあとも、ポホヨラとカレワラの間でいざこざが続くのだが、やがて沈静化する。そして、あるとき、マルヤッタという娘が処女懐胎して、ある子供を生むという事件が起こる。

ワイナミョイネンは自らの地位がこの子供に脅かされるのでは、という疑念を抱き、この子供を殺そうと考える。しかし、逆にこの子供に詰られてしまう。子供はある老人から「カレワラの王」と命名される。ワイナミョイネンは自らの引き際を悟り、海のかなたに去った。


この最後の部分、もう気づいた読者もいるだろうが、マルヤッタというのは聖母マリア、子供というのはイエス・キリストのことである。マルヤッタは馬たちに守られながら出産するのだが、これは馬小屋での生誕に対応する場面である。

ワイナミョイネンを初めとする英雄たちの時代が終わり、キリスト教の時代が始まるということを、この最後の部分は語っているのである。

なんか寂しい終わり方。

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