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2010.06.16

【アマゾンに文明があったんだ】実松克義『アマゾン文明の研究』を読んだ【驚異のモホス文明】

これは、「文明」という言葉の再定義を迫る本である。

アマゾン文明の研究―古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのかアマゾン文明の研究―古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか
実松 克義

現代書館 2010-02
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アマゾンというと、未開の地というイメージであるが、実はスペイン人・ポルトガル人が進出する遥か以前に、アマゾン一帯には高度な文明があったという。また、アマゾンの森林やサバンナは原始のままのように見えるが、実はかなり人の手が加わったものだという。

著者も言っているが、文明というと都市のイメージが浮かぶ。エジプト文明にせよ、チグリス・ユーフラテス文明にせよ、アステカ文明にせよ、膨大な人口を抱える都市、ピラミッドやジッグラトといった巨大建造物というものが頭に浮かぶわけである。そして、そういうものを持たない社会は「非文明的」とみなされるのが普通である。

しかし、アマゾン文明、とくに本書で紹介されるモホス文明はそういった都市型文明とは全く異質なものである。アマゾン文明は高度な治水・養殖・農耕技術を持ちながら、過度の人口集中を避け、自然と調和したものだった。著者が紹介しているウィリアム・デネヴァンの推計によると、コロンブス到来時、アマゾンには860万人の人々が住んでいたという。これは現在のアマゾンの先住民族の人口、100万人よりも遥かに多い。


  ◆   ◆   ◆


モホス文明の痕跡としては、堤防兼道路であるテラプレン、人工丘陵ロマ、人造湖、運河、土器、農耕地跡などがある。

小生も本書を参考に、Googleマップを利用して、ボリビア、トリニダード市周辺にあるテラプレンを探してみた。

テラプレンは直線的な森林として見出される。それはなぜかというと、次のような仕組みがあるからである。テラプレンは盛り土をして周囲よりも1~2メートル高く作られた道である。雨期に河が氾濫した場合、そこだけが冠水を逃れる。古代文明崩壊後、道路として使われなくなった後は、氾濫時にも冠水しないテラプレンにだけ木が生い茂るわけである。

小生はまず、本書193ページの地図を参考に、Googleマップでベロト湖畔のテラプレンを確認してみた。

01

赤い線を添えた所がテラプレンである。

このあと、ベロト湖から東に数キロ移動しながら、独自にテラプレンらしきものを探してみた(この辺)の右半分には何本かのテラプレンらしきものが見出される。

02

わかりやすいように赤い線を加えてみた。
03

ほんとうにテラプレンかどうかは現地に行かないとわからないが、小生は確信している。


  ◆   ◆   ◆


さて、本書の紹介にもどろう。というか、総括的な感想を述べたい。

本書はアマゾン文明に関するこれまでの研究成果をまとめ上げたものである。アマゾンとは生態学的にはどのような場所なのか、今までどのような人々がアマゾン文明の研究に携わってきたのか、またどのような研究成果が上がっているのかを網羅している。

唯一、残念なのは索引が無いことである。しかし、本書の巻末4分の1は注釈と参考文献のリストで占められており、これらを頼りにさらにアマゾン文明についての研究を勧めることができる。

本書はこれからアマゾン文明について知ろうとする人々にとっては絶好の入門書である。すくなくとも小生にとってはそうである。

著者のホームページはここ。今回紹介したアマゾン文明のほか、マヤ、アンデスなどの文化についても情報が提供されている。

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