ビクトリア女王の周辺の男たち
先日、LaLaTVで「ビクトリア女王が愛した男たち」という番組をやっていた。
ビクトリア(ヴィクトリア)女王のイメージは、喪服に身を包んだ、謹厳なる、偉大な、大英帝国最盛期の女王、というものだったのだが、この番組を見たら、随分と印象が変わった。
夫アルバート公が居る間は全てをゆだねていたのだが、その死後は、使用人ジョン・ブラウン、首相ディズレーリ、インド人使用人アブドゥル・カリムの3人を寵愛していたという。
アルバート公はビクトリア女王にとって、単に夫であっただけでなく、父であり、母であった。それゆえ、アルバート公を喪失したビクトリア女王の落胆は凄まじく、生涯、公式の場では喪服のままで通した。
アルバート公亡き後の空白を埋めるのは3人の男性である。
ジョン・ブラウンは献身的な愛をささげた。ビクトリア女王の暗殺を事前に防いだこともある。使用人であるにもかかわらず、ビクトリア女王と一緒に肖像画に収まったことは、当時の王侯貴族たちの眉をひそめさせた。ビクトリア女王とジョン・ブラウンがひそかに結婚したという噂が広まっていた。その証拠となる文書は現エリザベス二世女王の母君、エリザベス王太后が焼き捨てたという。
ディズレーリは派手な服装と大仰な礼儀によってビクトリア女王を魅了した。アルバート公の死後、議会に顔を出さなかったビクトリア女王をうまくたらしこんで議会に出席させたのはディズレーリの業績のひとつである。
アブドゥル・カリムはジョン・ブラウンと同様、ビクトリア女王からの寵愛を受けた。ジョン・ブラウンは恋人の立場であったが、アブドゥル・カリムは息子のような立場であり、ビクトリア女王の母性をくすぐっていた。また、インド女帝でありながら、高齢のためインドを訪れることのできないビクトリアにとって、そのインド趣味を満足させる存在だった。ビクトリア女王の側近がアブドゥル・カリムを遠ざけようとしたとき、ビクトリアは側近たちを「人種差別主義者」と罵った。
というわけで、大英帝国の栄光を体現するビクトリアを支える男たちがいたということである。
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