【科学史研究】アポロ計画の組織運営に関するメモ
「科学史研究」第49巻(2010年春号、日本科学史学会)が届いたので、ぱらぱらと読んでいるところ。
佐藤靖(政策研究大学院大学)「科学史入門:NASAとアポロ計画」(科学史研究、49巻(2010)、pp.22-25)がよくまとまっていて面白かった。以下は自分用メモ:
NASAの歴史
- 1958年10月1日 設立
- (1961年4月12日 ガガーリンによる世界初の有人宇宙飛行)
- 1961年5月25日 ケネディ大統領、アポロ計画を発表
- 1962年7月11日 「月軌道ランデヴー方式」を採用
- (1963年11月22日 ケネディ大統領暗殺)
- (1966年2月3日 ソ連の無人探査機、月面に軟着陸)
- 1967年 アポロ宇宙船の火災事故により宇宙飛行士3名が死亡
- 1968年12月24日 アポロ8号による世界初の有人月周回飛行
- 1969年7月20日 アポロ11号、世界初の有人月面着陸
- 1979年~1989年 ヴォイジャー計画
- 1981年 スペースシャトル初飛行
- 1990年 ハッブル宇宙望遠鏡
- 1998年 国際宇宙ステーション建設開始
アポロ宇宙船とサターンV型ロケット
- アポロ宇宙船
- 重量50トン(燃料満載時)
- 部品点数400万点
- 電線総延長40マイル
- 設計図面10万枚
- サターンV型ロケット
- 全長110メートル
- 重量2700トン
アポロ計画を担った3大研究開発センター
- テキサス州 有人宇宙船センター(後のジョンソン宇宙センター): アポロ宇宙船の開発
- アラバマ州 マーシャル宇宙飛行センター: サターンV型ロケットの開発
- フロリダ州 ケネディ宇宙センター: ロケット打ち上げ作業
有人宇宙船センターの技術開発の特徴
- 航空分野と弾道ミサイル分野という2つの技術文化の衝突
- 航空分野の文化
- 人間中心主義(飛行士や管制官の視点を重視)
- ボトムアップ(民主的合意形成)
- 「私はシステムを信じていない。私は仕事をする能力があり意欲を持つ人たちを信じている」(ジョージ・ロウ副所長)
- 弾道ミサイル分野の文化
- システム主義(全体のシステム分析を重視)
- トップダウン
マーシャル宇宙飛行センターの技術開発の特徴
- ヴェルナー・フォン・ブラウン所長
- 数千人の所員のコアの部分は、100名のドイツ出身の技術者
- 「チーム内の信頼感と相互理解に基づく有機的な協力関係」
- 「言葉では表現しきれない技術判断」
- 「ハードウェア志向の実践的判断」
- 「明示的な技術分析だけではロケット開発はうまくいかない」
- 有機的組織運営の維持のための努力
- 外部組織(民間企業)への外注->外注先企業との密接な連携
- NASA本部への説明責任->専門の対応部署に一任
アポロ計画のインパクト
- 技術的インパクト コンピュータ、新材料の開発成果が民生分野に波及
- 政治的インパクト アメリカの優位性誇示
- 文化的インパクト 地球の再発見
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