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2010.01.05

【ブルジュ・ドバイ完成記念】ドバイはきまぐれと傲慢さのゆえに砂の中に消滅する

小生儀、12月31日に中国から帰国、1月1日に静岡に帰省、1月3日に宇部に戻るという旅枕の毎日で疲労が蓄積し、とうとう風邪をひいてしまった次第。

1月3日には東京にいて、汐留の鼎泰豊(ディンタイフォン)でツマの家族と小龍包をつまみながら談笑したり、箱根駅伝のゴール付近で選手を応援したり、OAZOの丸善本店で立ち読みをしたりと、あれこれしていたのだが、ここでは、丸善の松丸本舗で買った本の話をしよう。

松丸本舗は松岡正剛がプロデュースしたことで知られる、特異な棚づくりで有名な店(店内店)である。そこのアジア関連の棚で見つけたのがこれ、「地獄のドバイ」である。

地獄のドバイ―高級リゾート地で見た悪夢地獄のドバイ―高級リゾート地で見た悪夢

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寿司職人としてひと旗挙げようとドバイに渡ったものの、それは叶わず、知り合いのUAE人が経営する肥料会社に就職。しかし勤め先がある日突然閉鎖され、犯罪を犯したわけでもないのにアブダビ中央拘置所送りになった…という人の話である。

読んでいると、著者の発想の安易さ(そもそも寿司職人として就職できるあてがあったわけではない)、情報不足、行動の軽率さが目立つが、著者が体当たりで行動してくれたおかげで、ドバイの暗部が明らかにされている。ドバイの支配層に阿(おもね)ながらビジネスを展開している人々には書けない内容の本である。

この本からわかるのはドバイの興隆と凋落は起こるべくして起きたということである。

ドバイは、(1)王族を頂点とする支配層のUAE人、(2)ビジネスパートナーあるいは旅行客としてお金を落としてくれるゲストたち=西洋人・日本人、(3)半奴隷的立場に置かれた外国人労働者たち、で構成されている。この本は(2)のゲストたちについてはほとんど触れていないが、(1)のUEA人と(3)の外国人労働者たちに関しては以下のようなことを語っている。

<傲慢で思慮の浅い支配層>
まず支配層のUAE人であるが、長期的視野で物を考えることのできない、つまり思慮の浅い人々である。何かを作ったり育てたりして富を得るという発想が無い。ビルを建て、転売すれば富を得ることができると考えている。芸術ですらルーブル美術館から美術品を借りれば事足りると考えている。外国人労働者たちを奴隷とみなし、職場環境を良くしようという発想はない。芝生用の水はふんだんにあるが、労働者のシャワーのための水は無い(この件については本書をよむといい)。

<それ相応の仕事しかしない外国人労働者>
外国人労働者は日給5ドル程度で働かされる。その一方で物価や家賃は高い。会社の雇用が切れるや否や、外国人労働者は拘置所送りになる(「滞在法違反」。著者もこれで拘置所送りとなった)。このような状況では真面目に働こうという意志はなくなる。そのため、建築物やインフラには手抜き工事が散見される。

著者が拘置所送りとなった後半も面白いが、その内容はこれからこの本を読む人のため触れないでおこう。

本書に刺激されてドバイの人権問題について調べてみたら、こんなのが出てきた:


Building Towers, Cheating Workers
Exploitation of Migrant Construction Workers in the United Arab Emirates
November 11, 2006
Based on extensive interviews with workers, government officials and business representatives, this 71-page report documents serious abuses of construction workers by employers in the United Arab Emirates. These abuses include unpaid or extremely low wages, several years of indebtedness to recruitment agencies for fees that UAE law says only employers should pay, the withholding of employees’ passports, and hazardous working conditions that result in apparently high rates of death and injury.

2006年の報告書だが、上述のUAE人の性格上、今でも労働環境の改善は行われていないだろうと思われる。

そういえばブルジュ・ドバイが完成したそうだが、これはそのまま砂漠の中の遺跡となるのであろう。

<追記>
タイトルは「地獄のドバイ」だが、著者が主に滞在したのはアブダビ首長国である。ドバイとアブダビは違う!という意見は当然あるだろうが、UAEの人々に共通する精神性は描かれているのではなかろうか?

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