私はこれで共通一次(死語)国語198点を達成しました
小生は最後の共通一次試験世代である。若い人には何それ?という感じだろうが、今の大学入試センター試験にあたるものである。
今日、宮脇書店の中をうろついていたら平積みになっていたのがこれ:
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小生にとっては懐かしい本であるが、「伝説の参考書」だったとは知らなかった。昔は「新塔社」という出版社から出版されていたが、昨年、ちくま文庫に入ったようである。
小生は高校時代、理系だったにもかかわらず、理数系科目は振るわなかった。一方で得意だったのが世界史と現国。小生の国語における快進撃を支えていたのはこの本である。
小生が高校時代に最後まで読みとおした参考書はこの高田瑞穂『新釈 現代文』と山本義隆『新・物理入門』(駿台文庫)の2冊だけだった。『新・物理入門』は非常に面白い本だったが即効性はなく高校での物理の成績は振るわなかった。大学受験の2次試験になってようやく効果を発揮した。
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なんで当時、高校2年生の小生が、高田瑞穂『新釈 現代文』を選んだかというと、
- 書店の受験コーナーの並みいる参考書の中で、一つだけ黄緑色の表紙で孤高の輝きを放っていたこと
- テクニックが詰め込んであるような感じではなく、むしろ読み物のような感じだったこと
- まえがきに、非常に潔いことが書かれていたこと
などが理由である。
まえがき「読者への言葉」に書いてある潔いこととは第一行目の
この本は、結局「たった一つのこと」を語ろうとするものです。
という一文のことである。「たった一つのこと」以外の小手先のテクニックは教えませんというのが非常に潔い。
知識ではなく論理を重視する現代国語において重要な「たった一つのこと」とは、現代文の著者・筆者たちの言葉を追跡し、論旨を把握することである、ということを高田瑞穂は本書の中で主張しているのである。本書には41個の例題が掲載されているが、全て「たった一つのこと」の練習に終始している。
受験生だった小生は「たった一つのこと」を現代国語における唯一にして最大の武器として活用した。共通一次試験で国語198点(自己採点。古文と漢文含む)を達成できたのはこの本のおかげである。
しかし、今になって考えると、文章や発言を追跡し、論旨を把握することは単なる受験テクニックではなく、コミュニケーションにおけるもっとも重要なことであることがわかる。
この年齢になって読み返してみて、懐かしさだけでなく、改めて蒙を啓いてくれる参考書というのはほとんどないのではなかろうか?
なお、巻末に「近代文学の何を読むか」という一節があり15編の小説がリストアップされている。小生はここに取り上げられてる作品を全部読了したぐらい、この参考書に心酔していた。
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