« 『海の帝国』第2章「ブギス人の海」 | トップページ | 『海の帝国』第4章「複合社会の形成」 »

2009.07.10

『海の帝国』第3章「よちよち歩きのリヴァイアサン」

リヴァイアサンというのは近代国家のことである。リンク先のWikipediaの記事にあるように、ホッブズ以来、政治学の世界では国家の意味としてこの用語が使われるようになった。

「国家」という概念を定義するのは難しいが、本書では東南アジア各国の指導者が国家を乗り物に例えた事例を示している。ビルマ初代首相のウ・ヌーは英国から継承したビルマ国家を乗り物に例え、シンガポールの元外相ラジャラットナムはシンガポール国家を超音速のジェット戦闘機に例えた(小生もよくよく考えてみたが、日本だって「日本丸」という船に例えられることがある)。

こういう「乗り物」全般を一括して定義するとすれば、「足によらない移動手段」という抽象的な定義しかできない。「国家」も同じくらい抽象的に「支配の機構、装置」と定義してかまわないだろう、と本書では述べられている。

この「支配の機構、装置」は明らかに、それまでのマンダラシステムとは異質なものである。マンダラは王と王の主従関係、住民の親族関係、社会関係を存立基盤としていたのに対し、国家は法律、地図、住民・土地台帳などの統治技術を存立基盤としている。マンダラから国家への移行は連続したものではなく、国家は西洋によって、この地域にもたらされたものだと本書では述べられている。

1826年にシンガポール、マラッカ、ペナンで構成される「海峡植民地」が編成され、イギリス東インド会社による(非公式)海上帝国が運営されるようになると、その周辺のオランダ領東インドやスペイン領フィリピンも、これに対抗して新たな政治経済体制を構築し始めた。おぼつかない足取りだが、近代国家の歩みの始まりである。

本書で取り上げられている三つの植民地の現在の姿は次の通りである:


  • 海峡植民地: シンガポール、マレーシア
  • オランダ(領)東インド: インドネシア
  • フィリピン: そのままフィリピン

<海峡植民地>
海峡植民地国家は自由貿易が国是なので関税収入はほとんどない。そこで、国家の運転資金を中国人の経済活動から得た。すなわち、植民地政府がアヘンの独占販売権の入札を実施、これを落札した中国人が胡椒・ガンビル農園やスズ鉱山の中国人労働者に販売して利益を得る、という枠組みによって資金を得ていた。

<オランダ東インド>
オランダ東インド国家の場合、自由貿易ではイギリスに抗しきれないので、保護貿易主義に走った。ジャワ島において現地の農民に砂糖・インディゴ・タバコを強制栽培させ、ヨーロッパで販売し、収入を得た。このシステムを上手く運用するため、ごく少数のオランダ人指導層とジャワ人貴族出身の官僚による行政機構を構築した。

その一方で、海峡植民地の真似をしてアヘン請負販売制度を導入し、中国人がジャワ島農民にアヘンを販売した収益からも国家の運転資金を得た。

<フィリピン>
海峡植民地国家は胡椒・ガンビル農園・スズ鉱山の中国人労働者から収奪し、オランダ東インド国家はジャワ農民から収奪していたのに対し、フィリピンではそのような支配は行われなかった。

フィリピンは自由貿易を行い、活発な交易から関税収入(税率は低いだろうが)を得ることにした。そして、貿易の担い手としてイギリス人商人とともに中国人商人を歓迎した。その結果、フィリピンはイギリス非公式帝国の一翼を担うこととなった。と同時に中国人商人の活動に圧迫される形で、メスティーソ(中国人と現地人の混血)商人は高利貸しや地主に転出した。


さて、ここからはヨーロッパ・ユニバーサリスの話。

EU3は毎日のようにプレーしていて、小生のポルトガル領東インド海上帝国はこのようになっている:
ポルトガル海上帝国1770


フィリピン・ルソン島の植民が進み、あと、スンバワ、チモールなどにも植民地ができた。小生の海上帝国は、イギリス非公式帝国のラインとラッフルズのラインとの間に挟まれた領域に広がりつつあるが、とくに意味はない。現地人がおとなしくて暴動が起きにくい所に植民した結果である。

小生のEU3の世界は1770年代に至っているが、東アジアには明朝がでーんと構えており、東南アジアにはヴィジャヤナガル朝の領土が広がっている。また、西アジアではペルシア(何朝?)が勢力を増し、オスマントルコを押しつぶし、ヨーロッパに入り込もうとしている。防波堤はリトアニア大公国。

ヨーロッパではオーストリア、ブルゴーニュ、イングランド、カスティリア、アラゴン(そしてポルトガル)が覇を競い合っており、フランスが解体されつつある。

新大陸のうち、北米はブルゴーニュ、アラゴン、ポルトガルが三分しているものの、ポルトガル領内では「アメリカ合衆国」独立の気運が高まっており、早く「属国」として独立させてやった方が安全なのかどうか検討しているところである。中米は完全にポルトガル領であるが、「メキシコ」独立運動がはじまりつつあるので要注意。南米は北部+北西部をポルトガルが、東部をカスティリアが、南部をイングランドが支配しているが、ここでも「コロンビア」や「ブラジル」独立運動が起きつつあって油断できない。

アフリカは今のところ、ソンガイ、マリ、スワヒリなど各王国が健在。南アフリカにポルトガルが植民地を広げているぐらいでわりと平和である。というか「永久未知の領域」が広がっていて奥に進めない。まあ、20世紀に入るまで「暗黒大陸」(偏見)と呼ばれていただけある。

さて、今後のポルトガルの展開は?

|

« 『海の帝国』第2章「ブギス人の海」 | トップページ | 『海の帝国』第4章「複合社会の形成」 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/44485/45590680

この記事へのトラックバック一覧です: 『海の帝国』第3章「よちよち歩きのリヴァイアサン」:

« 『海の帝国』第2章「ブギス人の海」 | トップページ | 『海の帝国』第4章「複合社会の形成」 »