石田晴久先生死去
誰?って思うかもしれないが、小生にとっては教科書『プログラミング言語C』(カーニハン&リッチー著)の翻訳者である。小生の手元にあるのは、第2版で1991年に購入。帯も残っているよ:
奥付を見て驚くのが、印刷回数の多さ。
第2版の初版第1刷は1989年6月15日であるが、小生が買った本は1991年10月10日付けの初版第91刷。2年余りで91回も印刷されている。とんでもないベストセラーである。
この人が1981年に『プログラミング言語C』を翻訳するまで日本語で書かれたC言語の本は一冊も無かったという。それ以後のC言語の興隆は人々の知るところである。
『プログラミング言語C第2版』の訳者まえがき(1989年5月に書かれた)には、石田先生とカーニハン博士が「国際コンピュータ・ネットワークを通して電子メールの交換」を行っていたという話やC言語開発者たちが日本語に対する理解を示し、「Cで2バイトコードの文字定数をwchar_t,すなわち幅広文字(wide character)として扱うことが公認された。漢字の扱いもいずれ標準化されることであろう」という話も述べられている。平成も21年目を迎える今となっては隔世の感である。
あと、訳者まえがきにはカーニハン博士から石田先生に宛てられたローマ字書き日本語の電子メールが添えられていて、まるで歴史的資料のようになっている。
もちろん、石田先生はC言語の教科書の翻訳者というだけではなく、インターネットの基礎を築いたという功績もある。日本においてコンピュータ、プログラミング、ネットワークという広大な領域を開拓したパイオニアなのである。
石田先生は最近までサイバー大学IT総合学部長を務めていたが、2009年3月9日、心筋梗塞により死去された。満72歳。
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