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2009.02.03

日立製作所のセグメント別営業損益の推移(2001年3月期~2009年3月期<見込み>)

先日、日立製作所の7000億の連結損益について書いて以来、日立製作所内からのアクセスが多いなあと思いつつ、2000年以来のセグメント別の営業成績について勉強を兼ねて素人分析を行ってみる。詳しい分析はきっと日立内部や外部コンサルなどがやっているだろうからそちらに任せる:

日立製作所は2002年3月期以来、「情報通信システム」、「電子デバイス」、「電力・産業システム」、「デジタルメディア・民生機器」、「高機能材料」、「物流及びサービス」、「金融サービス」、あとセグメント間の取引分の控除額+全社の分を表す「消去又は全社」という8セグメントの売上高、営業損益をIR情報として公開している。

(※ちなみに2001年3月期以前は「情報・エレクトロニクス」、「電力・産業システム」、「家庭機器」、「材料」、「サービス他」、「消去又は全社」だった)

各セグメントに含まれる事業分野は次の通りである:

情報通信システム
システムインテグレーション、アウトソーシング、ソフトウェア、ハードディスクドライブ、ディスクアレイ、サーバ、汎用コンピュータ、パソコン、通信機器、ATM

電子デバイス
液晶ディスプレイ、半導体製造装置、計測・分析装置、医療機器、半導体

電力・産業システム
原子力・火力・水力発電機器、産業用機械、プラント、自動車機器、建設機械、エレベータ、エスカレータ、鉄道車両

デジタルメディア・民生機器
光ディスクドライブ、プラズマ・液晶テレビ、携帯電話、ルームエアコン、冷蔵庫、洗濯機、電池、業務用エアコン

高機能材料
電線、ケーブル、伸銅品、半導体用材料、配線盤関連材料、有機・無機化学材料、合成樹脂加工品、ディスプレイ用材料、高級特殊鋼、磁性材料、高級鋳物部品

物流及びサービス
電気・電子機器の販売、システム物流、不動産

金融サービス
リース、ローン、生命・損害保険代理業

これらのうち、物流と金融サービスを除いた5つのセグメントについて売上高と営業損益を見てみよう。まず売上高。

売上高[億円]情報通信システム電子デバイス電力・産業システムデジタルメディア・民生機器高機能材料
2001年3月期1796120117232111053214673
2002年3月期1829714872226691170712502
2003年3月期1899715701229711205612486
2004年3月期2314613124229791227012971
2005年3月期2268413202251541280315043
2006年3月期2361012044280521305716002
2007年3月期2472212875302231506117945
2008年3月期2761112935356821504718750
2009年3月期2630011600323001270015800


売上高を見ると各セグメントとも1~3兆円の売り上げがあり(ただし、セグメント間での売買も含まれているのでダブルカウントがある)、1部門だけでも巨大企業並み、日立グループの巨大さを実感する。ただ、売上高だけでは損しているのか得しているのかわからないので、つぎに営業損益を見てみる。

営業損益[億円]情報通信システム電子デバイス電力・産業システムデジタルメディア・民生機器高機能材料
2001年3月期489118177315834
2002年3月期358-1636550-147-220
2003年3月期1105-23253362183
2004年3月期69930433970468
2005年3月期37837073787875
2006年3月期847204926-3581101
2007年3月期603458364-5841324
2008年3月期11615401385-10991410
2009年3月期169028070-109040

2002年3月期に電子デバイスセグメントが巨額(1636億円)の赤字を出しているが、これはいわゆる「ITバブル崩壊」が半導体需要の減退をまねいたためだろう。この損失はその後の営業利益の合計を以ってようやく埋め切れるぐらいのレベル。なおこの期の(日立製作所全体の)連結損益は4838億円強だった。

2006年以降はデジタルメディア・民生機器セグメントが赤を出し続けている。特に2007、2008年3月期は1000億円以上の営業損益が出ている。これらの期の営業成績について同社の決算短信では「空調機器・生活家電好調」、「薄型大画面テレビ不振」と述べている。つまり、せっかく白物が頑張っているのにテレビが足を引っ張っているということになる。ちなみに小生はエアコンは白くまくん、テレビはWoooを購入しており、同社デジタルメディア・民生機器セグメントを支えている。

電力・産業システムセグメントは2001年から2004年にかけて営業利益が低下する傾向があったが、2004年以降は一転して成長傾向にある。いわゆるV字回復である。V字回復の一部を担っていたのが、自動車機器事業である。2007年には自動車機器関連企業であるクラリオンを連結子会社したことにより同セグメントの売上高が増加した。

しかしその2007年に同セグメントの営業利益が大幅下落。これは2006年6月の「浜岡原子力発電所5号機事故」のせい。タービンブレードが破損し、「技術の日立」の名を失墜させたわけである。この事件が無ければ、単純に内挿して考えてみて、1000億円を超える営業利益になったのではないかと思われる。伝統の重電事業が自動車機器事業の成長の足をひっぱってしまった。

で、電力・産業システムセグメントの成長が暗転するのが、今回の金融危機。成長の駆動力だった自動車機器がもろに影響を受けたのである。今度は安定的な重電事業の足を自動車機器が引っ張るという逆転の構図になりそうである。

2009年3月期<見込み>において、一人利益を生み出しているのが情報通信システムセグメント。経済がどうなろうと情報化の歩みは着実に進むので、情報インフラを扱う部門はいまのところ強い。残りのセグメントは景気に翻弄され、一気に収益が悪化している。

セグメントごとに評論し続けていると大変なので営業損益の話はこの辺で切り上げ、最後に売上高営業利益率について検討する。

売上高営業利益率は営業利益を売上高で割ったらでるので、表は省略。グラフだけ示す:

Hitachioperatingincomemargin

売上高営業利益率は要するに当該事業の収益性を示す指標である。2006年以降はデジタルメディア・民生機器セグメントが問題児となっている。単純にここだけ見ると、このセグメントを丸ごと処分しろ、ということになってしまうが、上述したように、白物が頑張っているのをテレビが台無しにしているという内実がある。デジタルメディア・民生機器などという大雑把な枠組みではなく、生活家電セグメントとデジタルメディアセグメントに分けてより正確に責任の所在を明らかにしたらどうだろうか?したくないのかもしれないが。

同じことは電力・産業システムセグメントにも言える。重電と自動車機器というマクロ経済との関係が全く異なるものがひとくくりにされている。重電は景気の影響を受けにくく、自動車機器は鋭敏に反応する。そういえば、この部門には建設機械が含まれているが、これも景気の影響を受ける。多分、ドバイとか新興国関係の需要の影響が関係するだろう。ということでこのセグメントも定数項的な部分と変動項的な部分に分けて責任の所在を明らかにした方が良いのでは?

以上で今日の素人分析おわり。

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コメント

こんにちは!わかりますかね?MOT 水 です。
(わかります?)

ブログにたどりついたので、コメントさせてもらいました。

いやー世界経済大変ですねぇー。僕のシナリオにこのパターンはなかったです。動けないって感じですが、今できることをコツコツと・・・。

おじゃましました。

投稿: Mizu | 2009.02.11 16:22

Mizu様

よくブログにたどりつきましたね。

世界経済は大変ですけど、破滅というよりは、不条理なものが整理されつつある状況というようにプラス思考(志向)で考えるべきではないでしょうか?

本当に必要な仕事やモノは依然として残り続けると思いますよ。

投稿: fukunan | 2009.02.12 15:11

コメントありがとうございます。
そうですよね、真実は何か?ですね。
綺麗ごとではあるかも知れませんが、人の為になるもの、ことは不滅ですね。
Yes We Can です。(笑)

投稿: Mizu | 2009.02.12 22:43

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