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2008.12.27

安易に環境・農業を証券化するな

帰りの飛行機が遅れに遅れて、時間が余ったから普段読まない新聞を読んでしまった。その中の心配な記事がこれ:
産経新聞編集委員・田村秀男「オピニオン:証券化商品は悪か-環境・農業投資で地域に活性化を」(2008年12月26日、Fuji Sankei Business i)

記事は以下のような概要:


  1. 証券化商品が悪なのではない。ネタ(住宅ローン)が悪かった
  2. 証券化のもつ金融のダイナミズムを活用することが必要
  3. CO2排出権取引を証券化商品の新ネタにするのはどうか?
  4. 国際的な枠組みがきちんと守られればCO2排出権は暴落しない
  5. 環境関連では太陽電池、風力発電、エコカーなど値上がり期待の大きい投資分野が多い
  6. 農業でも安全で良質な有機農産物が新ネタとしてOK。
  7. 環境・農業分野のローカル性に注意するべきである
  8. 外国人投資家はすぐに金を引き上げるから要注意
  9. グローバリズムを排除すべきではないが、基本はローカリズム

これらをさらに要約すると、「証券化商品は悪くない。環境・農業の好ネタに適用すれば良い」ということになる。まあ、なんとなく聞こえの良いオピニオンだが、よく読むとボロボロ。

まず致命的なのが、4番目の「国際的な枠組みがきちんと守られればCO2排出権は暴落しない」という主張。国際的な枠組みがちゃんとしているのにもかかわらず、CO2排出権は暴落する。、「日経・JBIC排出量取引参考気配」によれば、CO2排出量1tに対する排出権価格が2008年5月19日には2791円30銭(参考気配)だったのが、2008年12月22日には1716円80銭(参考気配)である。7ヶ月で1000円以上下がっているのを暴落と言わずして何と言う?田村秀男氏はジャーナリストだそうだが、「このページ」ぐらい見たことがあるのだろうか?文章を書くにあたって、このぐらい読んでおいたほうがいい:「排出権取引市場分析:CER取引価格形成のメカニズム」(NTTデータ経営研究所:シニアマネージャー・大塚俊和)。CO2排出権価格は既に金融メカニズムの一部であり、株式市場価格の暴落に連動して暴落するのだ。

次ぎに、2番目の「証券化のもつ金融のダイナミズムを活用」という主張も危ないこと極まりない。「何しろ一単位の証券化商品がCDSなどを派生させ、数十倍、100倍以上もの金融取引に膨れ上がるのが証券化ビジネスの実績だ」と誇らしげに言うのだが、そのCDSという仕組みがリスクの拡大化を引き起こしているのがわからんのかと思う。わからなかったらウィキペディアの「CDS」の「問題点と危険性」でも読んだらどうだろうか?あと、証券化商品が本来の目的から外れて投機性の高いものに化けてしまった経緯を無視していることも問題である。

ほかにも「太陽電池、風力発電、エコカーなど値上がり期待の大きい投資分野が多い」と環境関連への投資をおすすめしているが、それなら複雑な証券化商品なんか買わないで、直接株を買ったら良い。農業分野も同じ。

環境・農業分野のローカル性というのは正しい主張であると思う。で、あるならば、環境・農業における技術開発や生産が行われている場所から離れない投資手段をとるべきで、直接の株購入かファンド設立ぐらいにとどめるのが良いだろう。なんで証券化商品なんだ?

あと、付け加えるのなら、環境・農業分野というのは成長するのにおそろしく時間のかかる分野であるということを述べたい。投資してすぐ回収ということが難しい。投資をすぐに引き上げさせない仕組みが必要で、そういう意味では従来型のダイナミックな金融システムはなじまない。なんのために平成9年に「新エネルギー法(新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法)」ができたのか、田村秀男氏はその趣旨を考えてみると良い。

結局、この田村秀男氏のオピニオン作文の失敗は、「証券化商品の善悪の話」と「成長が期待される環境・農業分野への投資」の話をくっつけようとしたことに起因する。研究開発・生産への直接投資と証券化商品をごっちゃにしてはいけない。ネタが悪かったね。

田村秀男氏について調べたが、こんな記事が出てきてしまう有様:
【やばいぞ産経】田村秀男はFSX要求仕様も知らないで記事を書いていた事が発覚
田村秀男の頭の中を探る

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