インドの激安自動車の生産計画頓挫【でもインドは健全】
今年の初めに世界最安の自動車(28万円)として、タタ・モーターズが発表し話題を呼んだ「ナノ」。
西ベンガル州でその工場を建設しようとしていたところ、農民らの反対運動で計画が頓挫したとのこと:「インド・「ナノ」計画頓挫、海外からの投資へ悪影響」(asahi.com 2008年10月5日)
以下、記事の中で目についたところを引用する。
「善しあしは別として、中国の国家的なプロジェクトでは、あり得ないことだ」。中国やベトナムで工業団地の開発に携わってきた日本の大手商社マンは、こう話す。インドでの工業団地建設は緒に就いたばかり。法的なインフラ整備に加えて、強い政治意識を持つ農民とどう折り合いをつけるかも課題だ。インドの経済団体の関係者は「中国と違って、経済発展はゆっくりとしか進まないだろう」と話す。
なんだか、この記事を読むと「中国に比べると、インドはだめだなぁ」みたいな印象を受ける。しかし、小生としてはむしろインドの民主主義が健全であるという印象を受ける。
中国や東南アジア諸国で見られる、計画的な「上からの経済改革」、いわゆる「開発独裁」は迅速に経済を発展させるという点では優れている。まず、民を豊かならしめ、そののちに言論の自由を認めるというやり方である。明治~昭和の日本も同じ路線をたどった。しかしながら、指導者層が失政をしたり、あるいは政変が起こったらどのようなことになるだろう。
インドはその点、建国以来、民主主義が守られてきている。隣国でライバルであるパキスタンで常時軍によるクーデターが発生し、国が不安定になっているのと比較すると、その違いは明確である。インドでは貧富の差が激しく、衛生状態も悪く、また古い慣習に縛られて自由に行動できない人々がいることは確かであるが、話し合いなどを重ねながら少しずつ民主主義と経済とが進展してる状況にある。
中国はいわば「モノカルチャー(単一栽培)」の国。インドは「マルチカルチャー(多種栽培)」の国。モノカルチャーは生産性が高いものの、環境破壊や病害虫による全滅の危険性がある。ハイリスク・ハイリターンである。これに対してマルチカルチャーは生産性が低いものの、全滅といったリスクを避けることができる。
「オリンピック後はどうなる?」とか「上海万博後は?」と世界をひやひやさせている中国に比べると、インドは発展がのろのろしていようとも健全だと思う。
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