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2008.09.30

米下院が金融法案を否決【やっぱり】

やっぱりね、というのが感想。

米国滞在中(9月中旬)、米政府が9000億ドル(そのうちの不良資産買い取り分が7000億ドル)の金融救済融資を提案していたが、このたび、下院で否決されたとのこと:米下院、金融法案を否決 NY株、最大の777ドル安(2008年9月30日、共同ニュース)

この金融法案否決、株安を招くなど政策的にはまずいかもしれないが、心情的には良くわかる。

米国滞在中に読んだUSA TODAYの記事では7000億ドルの救済融資に関してこのような疑問が寄せられていた:

Amid urgency, questions grow about $700B bailout (USA TODAY, Sep. 22, 2008)

 Who's in charge? (誰が責任をとるの?)
 この法案はどこの官庁のチェックも受けないだろう。

 Wall Street or Main Street?(ウォール街を守るためなのか、一般の人々を守るためなのか?)
 下院議長Nancy Pelosi(民主党)はこのように語った:「無記名の小切手をただでウォール街に渡すわけには行かない」。民主党は独立した監視機関の設置、家の所有者たちの保護、「金融機関の重役たちに対する過剰な補償(excessive executive compensation)」の制限を要求している。

 What's the cost? (いくらかかるのか?)
 Richard Shelby上院議員(共和党)は次のように語った:「不良債権の買取は7000億ドルを超えてはならないし、それ以下にできるはずだ。他の救済措置まで含んだら合計1兆ドルに達してしまうだろう」

 Too much government? (政府が干渉しすぎでは?)
 この政策は市場原理主義に反する。Jeb Hensarling下院議員(共和党)は「ヨーロッパ風の社会主義になるのでは」と困惑を示している。

7000億ドルの不良債権買取政策の前に発表された、AIG救済融資に関して9月18日にはマケイン、オバマ両候補ともにこのように述べている:
 

こういった措置で最も大事なことは何百万ものAIGの保険証券所持者、老後のためにAIGに投資している人々を守ることだ。こんな事態を招いた経営陣や相場師に対して救済融資を行ってはいけない。(マケイン
FRB(連邦準備制度理事会)はこの救済融資計画がAIGの保険に加入している家族を守るものであることを保証しなくてはならない。困難な時だからといって、好況時に甘い汁を吸っていたAIGの大株主や経営陣に救済融資を行ってはならない。(オバマ

ようするに一連の救済措置は議会、大統領候補たち、米国民から見ると高額所得の株屋(より正確に言えば投資銀行群)たちの救済手段にしか見えないわけである。いわゆる勝ち組に対する怨嗟の声は米国中に満ち満ちている。

否決された金融法案はそのまま放置されるわけではなく、修正を加えて(多分、金融機関に対する厳しい条件を加えて)再提出され、議会を通過することだろう。これによって、ある程度は危機的状況に歯止めがかかると思われるが、同時に投機マネーに翻弄される「市場原理」の時代の終焉となる可能性がある。

かの植草一秀先生はブログ「植草一秀の『知られざる真実』」で「『市場原理主義の失敗』が表面化していると考えるのが正しい」と断言しておられる。植草先生は市場原理主義の持つ3つの問題を挙げている:


  1. 「市場原理は正義」との錯覚: 「弱肉強食」の奨励
  2. 「市場メカニズム」への過信: 金融技術への過信が不安定化を増大。「経済のカジノ化」
  3. 「人間性疎外」の罠: 本来「ある人が住宅を所有するためのローン」だったものが、いつの間にか人間が介在しない権利書の授受に変化

昨日の毎日新聞朝刊に「今回の金融危機で米国の投資銀行トップファイブが消滅するか商業銀行化してしまった」という内容の記事が載っていた。「市場原理主義」の終焉と「身の丈経済」への回帰を示している出来事だと思う。

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受信: 2008.10.03 11:22

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