久々に『有閑階級の理論』
4月に3章まで呼んでサボっていた、ヴェブレン『有閑階級の理論』を再び読むことにした。
有閑階級の理論―制度の進化に関する経済学的研究 (ちくま学芸文庫) ソースティン ヴェブレン Thorstein Veblen 高 哲男
これまでのあらすじは以下の記事に書いてある:
- 第1章「序説」:古典にチャレンジ:『有閑階級の理論』
- 第2章「金銭的な競争心」:富こそ評価の基準
- 第3章「顕示的閑暇」:労働をしないほうが偉い
今回読んだのは第4章「顕示的消費」である。結論から言うと、「浪費するほうがもっと偉い」と言うことが書いてある。
時代が進んで都市化が進むと、知らないもの同士が接触するようになる。このときに自分の偉さを示す手段としては、「閑暇(生産的な労働に従事していないこと)」を示すよりも、「浪費」をすることの方が便利になる。これを「顕示的消費」と言う。
階層分化がいっそう進展し、より広範な人間環境にまでひろげてゆく必要が出てくると、世間体を保つ手段としては、閑暇よりも消費のほうが評価され始める。(『有閑階級の理論』101ページ)都市住民はお互いに負けまいとする闘争のなかで、自らの通常の顕示的消費の標準をよりいっそう高いところに設定する。(『有閑階級の理論』103ページ)
顕示的消費はいわば「見栄を張る」行為のことであり、例えば酒場でおごるのもその一例である。
日常生活における冷淡な観察者たちに、自らの金銭的能力を印象づけるために利用しうる唯一の手段は、たえず支払い能力を見せつけることなのである。(『有閑階級の理論』102ページ)
こうした見栄張り競争の原因となっているものは、自分がより上流に位置していることを示したいという欲望である。そして、上流と下流を分けるものは:
- 上流階級:贅沢品や生活の快適さを与えるものを消費する
- 下流階級:おのれの生存に必要なものだけを消費する
という消費内容に基づく基準である。
みんな勤勉や倹約を美徳として認めていながら、実際にはセレブ生活に憧れるもんなぁ。
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コメント
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久しく「有閑階級の理論」なんて書名を聞いていなかったんで、改めて新鮮に懐かしく感じました。
おいら、仕事がら海外取引が長く、アセアン各国の代理店社長とお付き合いしてきましたが、結構金持ちだったです。華僑の人もいたし、現地出身の社長さんもいました。
でも、ヴェブレン効果のような大学時代に習った言葉で、小生の思うところ見栄っ張り消費効果みたいなもんは、このような社長さん連中には意外とありませんでした。高いけれど品質の良いものを使う。多少のブランド料はステータスとして止むを得ないって言ったところでしょうか?
あったとしたら、顕示的消費でなく顕示的投資による富の極大化が至高なんだと感じました。みんな、事業拡張にはやっきとなっていましたから。
思うに、有閑階級の理論は過去のものかもしれません。植民地から富を収奪して来た白人支配構造の中で、生まれた産物のように思います。
一方、タイでは王様自ら”取るに足る経済”を標榜していて、お金もそこそこ、忙しさもそこそこ、でも心のゆとりは忘れないと言った国是が存在します。仏教の教えもあるのでしょうが、異なる次元の暮らし方・消費の仕方もアジアにはあるんじゃないでしょうか。
投稿: ぐりぐりももんが | 2008.06.27 15:19
記事を見ていただきありがとうございます。
人によっては単なる顕示的消費ではなく顕示的「投資」であるというのは小生はあまり思っていなかった観点なので面白いと思いました。
ヴェブレンが叩いている対象はアメリカ黄金時代(メッキ時代)の成り上がり階級なので、現代から見ると古い主張でしょうし、国によっては当てはまらない場合も多いでしょうね。
とくに、ぐりぐりももんがさんがお付き合いになっておられるアセアンの人々は顕示的「投資」としての性質があり、ヴェブレンが叩いている対象には当てはまらないでしょう。
また、日本の歴史を見ると、かつての支配階級であった武士層の間には清貧の思想らしきものが広がっており、豪奢を嫌い風潮があったように思います。
ただ、小生が付き合うことの多い、中国の人々を見ると、一部にはヴェブレンが批判している層にぴったりの人々もおります。日本でもそれらしき人は散見されます。
つまりヴェブレンの主張は現代社会全体でも一部には通用する部分があるのではないかと思う次第です。
投稿: fukunan | 2008.06.27 17:38