常温核融合についてのメモ
先日、「常温核融合復活か?」という記事を書いたが、巷では徐々にその情報が広がっているようである。なんでそう思うかと言うと、弊ブログの「常温核融合」の記事へのアクセス数が増加しているからである。
常温核融合は先日の記事でも書いたようにスキャンダル扱いされている。今回の荒田吉明大阪大学名誉教授の公開実験もほとんどのマスコミからは無視されている。
マルチン・フライシュマン教授とスタン・ポンス教授による常温核融合の発見のニュース(1989年)が常温核融合騒動の発端であるが、この騒動はいわゆるミスコンダクト(不正行為)かというと微妙である。
二人はパラジウム、プラチナを電極とした重水の電気分解で核融合が起こり、多量の熱が発生したと主張した。しかし、世界中の科学者による追試では、核融合が確認されなかった。目立たない普通の実験だったら、単にフライシュマン・ポンス説の否定、というか、両教授の早とちりということになり、この件は静かに幕を閉じたであろう。しかし、よりによって夢のエネルギー源、「核融合」である。騒動にならないわけがない。
意図的な不正行為があったのかどうかによって、ミスコンダクトか否かが決まるのだが、そのあたりの絶対的な証拠はない。しかし、以下のような不審な行動をとったため、黒に近いグレーとみなされているのである:
- フライシュマン・ポンス両教授はいったんはNatureに論文(速報)を投稿
- 査読が行われる段階で取り下げ
- 違う雑誌に再投稿
なんで、査読を回避するのかというわけである。その理由として「公知になると特許が取れなくなるから」という話も上がっている。しかし、結局Nature以外の雑誌で公開しているから、それもおかしい。
「常温核融合」公表後はポンスらのまわりには利権狙いの人物があつまったようである。そういう状況をみると、両教授は科学者と言うよりもビジネスマンという感じである。実験自体には意図的な操作が入っていないとしても、学会から見れば、もう信用のならない人物となるわけである。
ということで、最初の「常温核融合」は決定的なミスコンダクトの証拠はないものの、スキャンダルとみなされるようになった。
常温核融合にとって不幸だったのはこういうスキャンダルが最初にあったことである。まじめに研究したら、常温核融合現象は見つかるかもしれないが、研究すること自体がタブーになってしまった。
小生は理学ではなく、工学の人間なので、常温核融合現象の有無を判断するだけの知識はない。ただ、工学の立場から大まかに考えると、実験装置から入力エネルギー以上のエネルギーが取り出されるのならば(しかも、市販の電力計とか温度計でわかるぐらいの規模で)、信じても良いかもしれない。
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コメント
錬金術のようなものですか?
それとも科学界におけるマルチやねずみ講のような(その話題に触れるだけで周囲に引かれる感が似てる)ものなのでしょうか。
しかし同じマルチでも、ミキプルーンやノエビア化粧品は成功してる(と言うか需要はある)ので、もしかすると・・・!!なのかな?
投稿: おじゃまします | 2008.06.16 12:21
まあ、重水素原子と三重水素原子がくっついてヘリウムになったり、重水素同士がくっついてやはりヘリウムになったりするので、現代版錬金術といえば錬金術です(お金ができる錬金術と言う意味ではありません)。
まじめに研究している人には悪いですが、集まってくる人の多くは金儲けが目的なのではないかと思います。
でもまあ、今のところ触れない方が身のためでしょう。
投稿: fukunan | 2008.06.16 23:04