調査地被害
宮本常一・安渓遊地(あんけい・ゆうじ)『調査されるという迷惑』を読んだ。
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著者たちはこのブックレットを通して、野外調査(フィールド・ワーク)が調査対象となった地域社会にとっては迷惑になり、場合によっては地域社会や地域の資源を破壊することもあるということを警告している。
『忘れられた日本人』などで知られる民俗学者、宮本常一氏の「調査地被害」という文章(1972年)を第1章とし、以後その問題意識を引き継いで、第2章から第7章まで安渓遊地氏がフィールドワークの経験にもとづいて「調査されるという迷惑」を語っている。
「おまえ、何をしに来た。なに調査だ? バカセなら毎年何十人もくるぞ」
調査地の一つ、西表島の人々から安渓遊地氏に浴びせられる言葉には、地域社会に対する調査者の態度に対する怒りがはっきりと現れている。
この本を読んで思い出したのは網野善彦『古文書返却の旅』(中公新書)である。これも調査地被害の一種を語った本である。
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1950年代に漁村資料の資料館を設立する構想があり、全国から100万部もの文書が借用されたことがあった。事業は打ち切りになり、借用した文書の多くは返却された。しかし、研究者が個人で借用した文書の中には未返却のまま放置され続けたものがあった。
網野善彦氏は未返却文書の後始末を託され、約40年の歳月をかけて古文書返却に従事することとなった。その経緯を記しているのがこの『古文書返却の旅』である。
この本によれば、先の「調査地被害」を書いた宮本常一氏も1950年に対馬で借用した文書を返却しておらず、網野氏が返却作業にあたることになった。網野氏が古文書返却作業をしていることを知り、宮本常一氏は「これで自分も地獄からはい上がれる。よろしく頼む」と述べたという。なぜ自分で返却しなかったのか、事情がよくわからないが、長らくこの件は宮本常一氏を責めさいなんでいたようである。
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