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2008.05.31

カーボンナノチューブ:その光と影

カーボンナノチューブを発見した飯島澄男氏(当時NEC筑波研究所、現名城大大学院教授)にノルウェー科学アカデミーから「カブリ賞」というものが送られることになったという:
カーボンナノチューブ発見の飯島教授らに「カブリ賞」(アサヒ・コム 2008年05月29日)

カーボンナノチューブはいろいろな可能性を秘めた素材(鋼よりも強く、銅よりも電気を通す)として注目されている。今回の受賞はお祝いすべき話である。

しかし、別のところからは「アスベストに似た健康被害」を引き起こす可能性が指摘されている:
ナノチューブはアスベストに似た健康被害を及ぼす恐れ、ネイチャーに研究発表(Technobahn 2008/5/22)

エジンバラ大学のケネス・ノナルドソン(Kenneth Donaldson)教授らのグループが"Nature Nanotechnology"誌で「ナノチューブ一般が<中略>肺がんなどを誘発する危険性が高い」と論じているのだそうだ。

一応、原文が公開されていたので、見てみた:
Nanotoxicology: Signs of stress, Vicki Stone and Ken Donaldson

Ken (Kenneth) Donaldson教授は粉体毒性学(Particle toxicology)が専門。

Nature Nanotechnologyの記事には、ラットの肺細胞が自分よりも長いカーボンナノチューブを取り込もうとしている写真が掲載されている。これは、ラットが自分の身体からナノチューブを取り除くことができないことを意味しているということだ。

同記事では、今後、ナノチューブの毒性に関する研究成果を集積し、ナノ粒子による毒性のメカニズムについて学ぶことが必要であると述べて締めくくっている。

以前、海外の学会に行ったときにデンマーク工科大学のJan Sundellという学者が、新しい化学物質による健康被害を見過ごしてはいけない、ということを述べていた。ナノチューブも同じことである。

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浅田彰大学院長のお言葉

今年(2008年)4月1日からあの浅田彰先生が京都造形大学の大学院長にお成りあそばした:
おや、浅田彰先生が・・・」(弊ブログ:2008.04.23)

でその後のことを耳にしていなかったのだが、先日、同大学の大学院のホームページを見たらお言葉が掲載されていた:
大学院長からのメッセージ

メッセージの中で、浅田彰先生は学生に対し、「私たちをまんまと裏切り、私たちを踏み越えて、私たちには想像もつかなかったような素晴らしい研究や創造を成し遂げること」を期待し、

もしそれが実現できれば、京都造形芸術大学は、日本の、いや世界の文化を、21世紀の新たな地平へと引っ張ってゆく、知的・創造的尖端としての役割を果たすことができるでしょう。あまりに大げさな夢でしょうか? 私は決してそうは思いません。

と締めくくっている。かっこいい文章。

「メッセージ」とかって、結構、事務方(あるいはスピーチライター)の作文だったりするけれど、この文章は間違いなく「浅田節」。相変わらず筆が冴え渡っていると思った。

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2008.05.30

プリントゴッコ終了のお知らせ

理想科学工業ニュースリリースより。

2008年6月30日をもって、「国民的行事」とまで言われた、簡易印刷機「プリントゴッコ」の販売が終了する。

パソコンとプリンターの普及が原因であると、ニュースリリースには書かれている。

インクジェットプリンターの方がコストかかりそうなんだけど、どうなんだろう?

小生の年賀状は、なんと手書きor木版画だったりする。字が下手なんで新年早々嫌がらせのようなものである。

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山口県庁から

山口県庁から
今日は山口県庁やら県警本部やらを回る仕事があった。

お昼に県庁の15階で飯を食べたんだけど、まあ眺めのいい場所だった。山口市内では一番高い建物なんじゃないのかな?

天気悪いし、逆光だけど撮影。

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2008.05.29

常温核融合復活か?

その話題に触れるだけで、学会からのけ者にされる恐ろしい研究テーマがいくつかある。その一つが「常温核融合」(Cold fusion)である。

常温核融合とは、室温で水素原子の核融合反応が起きるとされる現象のことで、1989年にマルチン・フライシュマン教授とスタン・ポンス教授が「発見した」と公表した。

室温で核融合ができるのなら、夢のエネルギー源として活用できる。マスコミが飛びつき、大ブームになった。

しかしその後の追試で、実験結果が再現されなかったことから、両教授の発見は誤謬であると見なされるようになった。

今では「無かったこと」とされ、スキャンダル扱いである。権威ある科学雑誌Natureでは"Cold fusion"という言葉があるだけで掲載拒否されるとか。

しかしながら不屈の精神で、この現象に挑み続ける人たちがいる。最近では「固体内核反応」として一部の研究者によって研究が進められている。日本では北海道大学の水野忠彦助教(Wikipediaでは教授と誤記されている)が良く知られている。

で、つい最近、5月22日に荒田吉明大阪大学名誉教授によって、公開実験が成功したとのこと。本当だったら凄い話だが日経、日刊工業新聞を除き、一般のマスコミは無視。阪大(小生の母校だ)のホームページにも何ら情報が載っていない。当分常温核融合はタブーのままのようだ。

ちなみに荒田吉明大阪大学名誉教授は「常温核融合以外の分野で」非常に功績のある人(学士院ホームページ参照)のようで、阪大接合科学研究所の一角に「荒田記念館」ができている。上述の公開実験はご本人によってご本人の記念館で行われたとのことである。

本件に関しては、「Baatarismの溜息通信」や「シートン俗物記」でも取り上げられているので、参照のこと。

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世界の研究所から:エミュー研究所

今日紹介するのは、エミュレータに関する研究所、「エミュー研究所」である。

エミューと言っても鳥のエミューではなく、エミュレータのことである。

エミュレータ(emulater)というのは物まねプログラムあるいは物まね装置という意味。コンピュータの世界では、たとえば、スーパーファミコンのソフトをパソコン上で走らせるプログラムなどがエミュレータとして挙げられる。

エミュー研究所では、懐かしきファミコン(1983年発売)から、まだまだ現役のニンテンドーDS(2004年発売)、PSP(同年発売)まで様々なゲーム機のエミュレータが網羅されている。

エミュレータでなつかしのゲームが復活するわけである。温故知新。

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2008.05.27

世界の研究所から:楽知ん研究所

今日はネット上にある研究所を紹介する。小生のことだから大学とか企業とかの研究所を紹介するわけがない。今回紹介するのは「楽知ん研究所」。名前は変だがちゃんとしたNPO法人である。

「楽知ん」とは、「楽しい知」という意味だと言う。そして、この研究所は「大道仮説実験」と称する、エンターテイメント性の高い実験の実施と普及を目的としている。代表的な大道仮説実験としては、力学実験「ころりん」、静電気実験「びりりん」、真空実験「しゅぽしゅぽ」などが行われていると言う。

ただ遊んでいるように見えるが、宮地祐司 「楽知ん研究人宣言」によれば、次のようなことが主張されている:

科学が職業化することによって,たのしい科学の伝統は,全く断ち切れてしまったように見える。

しかし現在は、
食うだけに働くだけでない時代になっているのだ。そこで,〈週末の楽知ん研究人〉という概念を提案したい。そして,その〈楽知ん研究人〉が集まる「楽知ん研究所」というネットワークをつくってしまったら,楽しいではないか。非週末はそれぞれの仕事を持ちながらも,日々の仕事が終わってから,あるいは週末の休日は,自分は「楽知ん研究所の研究員である」と自覚的に考えてみよう。〈週末の楽知ん研究人〉として,1600年代からのイギリスの楽しい科学の伝統を復活させようというわけである。

つまり、この研究所は「科学を素人に取り戻す」という崇高な理念を持っているわけである。

この研究所は大道仮説実験の実施だけでなく、科学史の研究なども進めている。その成果は「初等科学史研究MEMO」という出版物にまとめられている。たいしたもんです。

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2008.05.26

情報監視社会

うろ覚えだが、昔テレビで立花隆が「物凄く記憶容量のあるコンピュータに世界中のネットワークの情報が全て集積されているんですよ」と言っていて、「そんなの無理だよ」と心の中で突っ込んだ記憶がある。

でも、Googleとかの検索結果を見ると、「よくもまあ、こんな深いところにある情報が見つかるもんだ」と思うことが多い。検索エンジンどもによって全部とは言わなくても、ネット上の数パーセント程度の情報が収集・蓄積されているのではないかと思う。その辺は誰か調べておくこと。

で、最近ではこんなお触れが出た:
英内務省、プロバイダーに対して全てのデータ交信の保存を義務付けの方針」(Technobahn 2008/5/21)
元記事はこっち:
UK may store all phone calls and emails (NewScientist May 20, 2008)

まあテロ対策ということであるが、イギリスではネット上のデータおよびその流通の様子が全て把握されることになるわけである。

パソコンのハードディスクの中身は意識してネット上に公開しない限り、通常は第3者の目にさらされることはない。しかしこれもインターネットと同じように監視対象になりそうである:
米国税関が新制度を近くスタート、入国者が所持するPCのデータを丸ごとコピー」(Technobahn 2008/5/16)

もちろんこれもテロ対策。アメリカに入国するとき、もしもパソコンを持ち歩いていたら、そのハードディスクの中身を全てコピーされるということである。しかも暗号化されていたら、パスワードも教えないといけないとか。

911のせいで、なんか嫌~な世の中になってきたものである。

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2008.05.25

カナダの秀才高校生、プラスチック分解バクテリアを分離

カナダの16歳の高校生が、自然界に生息するプラスチックを分解するバクテリアを分離・抽出することに成功し、科学コンクールで優勝したとのことである:
カナダの高校生、プラスチックを分解するバクテリアの分離に成功」(Technobahn 2008/5/24)

物凄い設備が無くても、観察力と論理的思考と根気があれば、優れた研究ができると言う事例である。偉いなあ。日本だと遊んでるか受験勉強しているかのどっちかでしょ。

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リセールライトビジネスは経済の本質?

ものの価値というのは大雑把に言って2種類ある。一つは使用価値、もう一つは交換価値である。

米とか野菜とか生活必需品は使用価値が前面に出た商品だと思う。農協や穀物メジャーは別にして、一般消費者の中で米を転売しようとする人はあまりいないだろう。これらは自分で消費することがメインの商品だと思う。

これに対して株なんかは、もともとは配当を得るとか会社の支配権を握るとか、もともとはそういう使用価値が重要だが、しばらくすると転売できるかどうかという交換価値が重要になる商品である。

切手や絵画などのコレクション。コレクターにとっては集めて楽しむという使用価値がメインだと思う。しかしブームになると状況が一変する。もともとは興味を持っていなかった人たちが、転売を目的として売買を始める。このときは交換価値がメインになる。

で、リセールライトビジネスだが、これは明らかに交換価値がメインの商売である。扱っている「情報商材」には使用価値が感じられない(「年間○○人もの美女に出会い、簡単に恋人を獲得した裏技!(¥15,000)」だとか「失敗しようがない△△起業成功法」だとか)。再販権すなわち転売権が重要なのである。株とか先物とかと同じように見なせば、リセールライトは交換価値がメインの普通の商品だと思えなくもない。

しかし、リセールライトは商品として次のような問題を抱えている。


  1. 購入希望者(「使用価値」にせよ「交換価値」にせよ、価値を認める人)の数には上限がある
  2. 商品が消費されない(消滅したり劣化したりしない)ので、同じ人に2度とは売れない
  3. 商品が情報なので生産能力の限界がない(あっという間に普及する)

例えば:


  • ある情報商材Z(再販権付=マスターリセールライト商品)の潜在的需要(購入希望者)が100万人いるとする。
  • 情報商材Zの販売元X氏(「第一世代」)が1000人の「第二世代」にこの商材を売るとする。
  • で、「第二世代」1000人がそれぞれ「第三世代」に1000本ずつ商材を売るとする。
  • これでもう100万本売切れである。
  • 「第三世代」はたとえ再販権を持っていても、もう買い手がいないので事実上再販できない。

扱われるのは情報量数十MB程度の商材だろうからあっという間にダウンロードされ、普及するだろう。おそらく一月もかからないうちに潜在需要家すべてに行き渡るのでは?

もっと緩やかなシナリオとして、一人当たり100本売ることを考えても、「第四世代」で販売が完了する。

ほかに考えるべき要素としては後の世代になるほど、客が「情報商材」に飛びつきにくくなると言う可能性がある。もしも情報感度が高ければ、発売当初に飛びつくだろうから。するとこういうシナリオも考えられる:

  • 販売元X氏=第一世代が10,000本発売
  • 第二世代がそれぞれ100本発売
  • 第三世代・・・買い手が無く、売れず

後の世代になるほど、情報商材の交換価値が劣化していくのがわかる。再販するたびに価格を下げたらどうだろうか?

思考実験ではどうやってもうまくいかない。まあ、やっている人は頑張ってください。

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2008.05.24

3つ目の大赤斑

今回は天文学の話。

木星に「大赤斑」という赤い目玉のような模様があるのをご存知の人もいると思う。これは、木星大気中の台風のような渦のことである。渦と言ってもすごく大きい。地球2、3個分ぐらいある。1665年にカッシーニによって発見されたので、少なくとも3世紀以上は存在し続けている長寿の渦である(実は一度消滅している可能性もあるらしい。詳しくはWikipediaを参照)。

大赤斑のほかに知られているのが、大赤斑の半分ぐらいのサイズの「小赤斑」。「小」と言っても地球一個分ぐらいある。3つの渦が合体してできたという。もとは白かったのだが、2005年ごろに色が変わって赤くなったらしい。

でこのたび発見されたのが3つ目の赤斑である:
木星に第3の目玉が出現 ハッブル望遠鏡が撮影(産経ニュース:2008.5.23)

ハッブル望遠鏡は偉いもので、次々と世紀の大発見をしてくれる。今回のもその一つである。

面白いのが、第3の赤斑と大赤斑は徐々に近づいているということ。8月ごろには衝突するらしい。その頃、珍しい天体ショーとして大きく報道されることだろう。

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2008.05.20

リセールライトビジネスは新型ねずみ講なのか?

世の中、新しいビジネスが次々に生まれるものである。

最近、ネット上でリセールライトビジネス(Resale right business)なるものが広がっているらしい。「情報商材」なるもの(学習教材=e-Learning教材や電子書籍が多いようだ)をネット上で販売して儲けるビジネスらしい。

ググってみても「今すぐ始めてください!」、「今の収入で満足していますか!?」的なページしかヒットしないのでうんざりしているのだが、それらに書かれている話を要約するとこういうシステムである。

リセールライトビジネス
(1) A氏はX氏から再販権(リセール・ライト)と「情報商材」を購入する
(2) A氏は「情報商材」をネット上で売る
(3) 売り上げはA氏のもの

マスターリセールライトビジネス
(1) A氏はX氏から再販権と、再販権が付いた「情報商材」を購入する
(2) A氏は再販権と「情報商材」をネット上で売る
(3) 売り上げはA氏のもの
(4) (つづき) B氏はA氏から再販権と「情報商材」を購入する
(5) B氏は「情報商材」をネット上で売る
(6) 売り上げはB氏のもの

ややこしいけど再販する権利の有効範囲の違いで、単純なリセールライトとマスターリセールライトに分かれるわけである。マスターリセールライトの方が客を引き付けやすいと思われる。

売っているのが「情報」なので1回仕入れたら何回でも販売できる。つまりトータルの「情報商材」および販売者数は時間とともにネズミ算式に増えるわけである。

通常のネズミ講=無限連鎖講との違いは、お金の流れが販売者と購入者の間で完結していること(「連鎖販売取引」=「マルチレベルマーケティング:MLM」にならないこと)である。

しかしながら、最初から再販を目的にしていることに着目すると、実質的には「連鎖販売取引」にあたる可能性があるし、また、売買される商材に魅力がない場合には「無限連鎖講」と見なされる可能性がある。

もし「情報商材」が魅力的なら、作成者は再販権など付けずに独占販売すれば良い訳である。

リセールライトビジネス関連のホームページを見ると、その多くは札束を握っているような品格のない画像が張られていたりする。ぴったりした表現が見つからないが、「お里が知れる」という言葉が思い浮かぶ。

こういう際どい話には近寄らないほうがいい。

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2008.05.17

ムツゴロウ書類送検

よーし、よーし、ワッシャッシャッシャッシャッ(イメージ)。

ムツゴロウこと畑正憲(73)が、「東京ムツゴロウ動物王国」の従業員に賃金を支払わなかったとして、労働基準法違反の疑いで書類送検されたとのこと。

「新・ムツゴロウ動物王国」側の報告によれば、支払い分はすでに払い終えているとのことである。とはいえ、未払い「だった」行為が解消する訳ではない。

かつては、ほのぼのしたイメージで全国のお茶の間に浸透していたムツゴロウ氏だが、ライオンに指を食いちぎられた事件(2000年ごろ?)以降は「王国」に関するテレビ番組「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」も無くなり、人々から忘れられ始めた。

一時期話題を集めた「東京ムツゴロウ動物王国」は閉園、現在、「王国」はもとの北海道に戻り、再出発を図っている。ところで「王国」の収入源って何?

言っちゃなんだが、「零落」という言葉を思い浮かべてしまうなぁ。

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2008.05.16

コーラ大噴出実験:メントスコーラ (Mentos geyser)

メントスコーラ (Mentos geyser)

ペットボトルに入ったコーラ の中にメントス数粒を一度に投入すると、急激に炭酸が反応を起こし、中身が一気に数mの高さまで吹き上がるという現象をメントスガイザーと呼ぶ。(Wikipedia「メントス」より)

アメリカの「科学男」スティーブ・スパングラーによって実証されたそうで、2005年後半から一時ブームになったらしい。同氏のウェブサイトでは"Mentos Geyser - Diet Coke Eruption"として実験の仕方が文章や映像で詳しく紹介されている。しかし、よくもまあこんな現象を発見したもんだ。

で、なんでこの実験を取り上げているのかというと中国・吉林省、長春で、この実験を人体実験でやってみて胃を痛めた馬鹿な女学生がいたという話を"HEAVEN"というブログで読んだからである。よく死ななかったものである。

メントスガイザー現象に関して、面白いことがある。発生のメカニズムがまだ解明されていないのである。Wikipediaの記事によると、物理現象説と化学現象説があるが、物理現象説が有力になっているようである。

コーラにフリスクを入れるとか、ビールに割り箸の束を入れるとか、類似の噴出現象がある。これらに共通するのは、入れられたものが多孔質(ポーラス)であること。小生も、多孔質の物体によって一気に泡が形成されるという物理現象説を支持する。

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2008.05.14

四川省大地震(続):知り合いはみな無事

先日発生した四川省大地震の件。

重慶市の知り合いは無事だった一方で、四川省成都市の知り合い(大学職員)からは連絡が無かった。

で、今日になって返事が返ってきた。みな無事だったようである。以下引用:

Yes, the quake is quite damaging, many buildings are broken and most of us are a little scared by the unexpected destruction.

Fortunately we are safe and sound, and no one gets hurt on campus.

The students and stuffs work together and set up camps to get through the aftershocks.
We hope everything would be fine soon.

キャンプを張っているということだが、おそらく建物が倒壊していたり、倒壊していなくても安全のため外に出ているので、当面の住処が必要になっているのだろう。

今日、ようやく震源となった【三文】川県(Wenchuan county)に人民解放軍が到着したようである。地震発生からかなりの時間がかかったので、生き埋めになっている人々が助かる可能性は非常に低くなっていることだろう。

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2008.05.13

四川省大地震:あの建築工法では・・・

ご存知のとおり、昨日、四川省でマグニチュード7.8クラスの大地震が発生した。

小生は2005年に四川省成都市や重慶市に出張したことがある。心配なので、そのときの関係者(もちろん中国人)たちに安否を問うメールを送ってみた。以下は今日現在のその反応:

(1)重慶市大学教員
返信あり。無事。
昨日はずっと震動があり、通信も途絶して恐ろしかった。
四川省や周辺地域で死亡者数が2、3万人を超えているという情報が流れている。
従兄弟が四川省にいて連絡がとれない。

(2)成都市大学事務職員
現在、返信なし。

うーん成都市はヤバイかな?無事だとしてもネットとか途絶してるかも。それに災害救助活動などで忙しいのかも。

前々から思っていたのだが、中国の建築物は地震があれば、ひとたまりもなさそうなものばかりだった。

よく見るのがレンガを積んで、外側にコンクリートを塗っただけの建物。建つのは早いかもしれないが、揺れたらガラガラと崩れること間違いなし。今回倒壊したのはそういう工法の建物だろうと思う。実を言うと、中国が世界に誇る上海の浦東(プードン)国際空港の柱もそんな工法で作られていた。何で知っているかというと、改築工事現場でレンガを積んでいるのを見たのである。

正確な情報ではないのだが、鉄筋コンクリートならぬ「竹筋」コンクリート造という建物があるとも。空前の高度成長の中で安全性を放置してきた結果がこのような災害につながったことは間違いないと思う。

今回の地震では様々な報道があるが、生き埋めになった人々とかかなりショッキングな写真も掲載されているのが、デイリーメールというイギリスのメディア。子供の被害が大きいというのがなんとも言い様がない。

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2008.05.12

国際カエル年

2008年は国際カエル年なのだそうだ。

「カエルを守ろう! 国際カエル年」

パンダのリンリンは暗殺されたのだという説を聞き、情報を集めるべく上野動物園のホームページを開いたところ、「国際カエル年」という文字が目につき、本題を忘れてそっちに行ってしまった。

現在、世界中でカエルやイモリなどの両生類(ヤモリは爬虫類)が激減しているとのこと。両生類の保護を目指して、国際自然保護連合(IUCN)と世界動物園水族館協会(WAZA)が「国際カエル年」を提唱。両生類が生きてゆける環境の保全につとめる4つの活動、「まもる活動」、「つたえる活動」、「つながる活動」、「しらべる活動」、を展開しているという話である。

日本語の資料はここにある(PDF400KB)。

英語のサイトは物凄く充実しているので興味ある人は是非、ご覧ください。

Amphibianlogo

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2008.05.09

調査地被害

宮本常一・安渓遊地(あんけい・ゆうじ)『調査されるという迷惑』を読んだ。

調査されるという迷惑―フィールドに出る前に読んでおく本調査されるという迷惑―フィールドに出る前に読んでおく本
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著者たちはこのブックレットを通して、野外調査(フィールド・ワーク)が調査対象となった地域社会にとっては迷惑になり、場合によっては地域社会や地域の資源を破壊することもあるということを警告している。

『忘れられた日本人』などで知られる民俗学者、宮本常一氏の「調査地被害」という文章(1972年)を第1章とし、以後その問題意識を引き継いで、第2章から第7章まで安渓遊地氏がフィールドワークの経験にもとづいて「調査されるという迷惑」を語っている。

「おまえ、何をしに来た。なに調査だ? バカセなら毎年何十人もくるぞ」

調査地の一つ、西表島の人々から安渓遊地氏に浴びせられる言葉には、地域社会に対する調査者の態度に対する怒りがはっきりと現れている。

この本を読んで思い出したのは網野善彦『古文書返却の旅』(中公新書)である。これも調査地被害の一種を語った本である。

古文書返却の旅―戦後史学史の一齣 (中公新書)古文書返却の旅―戦後史学史の一齣 (中公新書)
網野 善彦

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1950年代に漁村資料の資料館を設立する構想があり、全国から100万部もの文書が借用されたことがあった。事業は打ち切りになり、借用した文書の多くは返却された。しかし、研究者が個人で借用した文書の中には未返却のまま放置され続けたものがあった。

網野善彦氏は未返却文書の後始末を託され、約40年の歳月をかけて古文書返却に従事することとなった。その経緯を記しているのがこの『古文書返却の旅』である。

この本によれば、先の「調査地被害」を書いた宮本常一氏も1950年に対馬で借用した文書を返却しておらず、網野氏が返却作業にあたることになった。網野氏が古文書返却作業をしていることを知り、宮本常一氏は「これで自分も地獄からはい上がれる。よろしく頼む」と述べたという。なぜ自分で返却しなかったのか、事情がよくわからないが、長らくこの件は宮本常一氏を責めさいなんでいたようである。

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2008.05.07

今日の人民網:友好ムード一色

今日の人民網(2008年5月7日紙面)は、日中友好ムード一色である。

胡主席が6つの提案 中日関係のさらなる発展を後押し
胡主席は次の6提案をしたという:


  1. 中日関係の政治的基礎固め: 歴史問題や台湾問題など敏感で重要な問題を適切に処理
  2. 戦略的な相互信頼の強化: 双方の相違点は対話や協議を通じて処理
  3. 互恵協力の強化: 中日間の経済・貿易協力関係を量から質に飛躍
  4. 両国国民の感情を増進: 各種、とくに青少年の人的交流を推進し、相互理解と友情を育む
  5. 各分野の協力体制を構築: 各分野における交流・協力体制を整え、安定した両国関係発展の枠組みを構築
  6. 国際・地域事業における協力拡大: 両国は共にアジアの振興に尽力し、共に世界的課題に対処する

まあ「台湾問題」は保留しておくとして、残りはごもっともなお話である。

中日首脳、共同声明に署名 戦略的互恵関係推進へ

両国指導者は誠実で友好的な雰囲気のなか、中日関係および共に関心を持つ問題について率直で突っ込んだ意見交換を行い、多くの共同認識を達成。

例の話(チベット問題)はちゃんとしたのかね?

暖かい春を迎える中日関係(1)

春暖かく、花満開の5月。胡錦濤国家主席は、中日関係の発展を願う中国人民の友好的な感情と断固たる信念を携え、「暖かい春の旅」に踏み出した。(文:高洪・中国社会科学院日本研究所政治研究室主任)

冒頭、物凄く友好ムードの文章です。

日中友好はいいけれど、(1)日本を隷属させない、(2)世界に迷惑をかけない、(3)チベット問題に関してダライ・ラマと対話を続ける、(4)安全なギョーザを提供する、といった事項を守っていただかないと、本質的な友好にならないと思う。

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不幸感と相対的剥奪:黒山もこもこ、抜けたら荒野

水無田気流『黒山もこもこ、抜けたら荒野 デフレ世代の憂鬱と希望』(光文社新書、2008年)を読み終わった。

買ってから数ヶ月放置していたのだが、5月6日の午後にようやく手を出して日付の変わるころに読了。

黒山もこもこ、抜けたら荒野 デフレ世代の憂鬱と希望 (光文社新書)
黒山もこもこ、抜けたら荒野  デフレ世代の憂鬱と希望 (光文社新書)水無田 気流

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「黒山もこもこ」というのは高度成長期、「荒野」というのはバブル崩壊後から現在までの社会状況を表現した言葉である。著者は1970年生まれの詩人で社会学者である(ちなみに小生も同じ年の生まれ)。著者はこの本の中で、こつこつと地道に物事を積み上げていくプロセスを重視する教育を受けながら、成人してみると結果主義の世の中になっていたという、うらぎられたような感覚を軸にして、現在の日本社会の問題点を次々に指摘している。

これが単に日本社会のゆがみを糾弾するだけの本だったら退屈だったと思う。それが、一気に読みとおすことができたのは、そのユーモラスな文体と的確な表現によるところが大きいと思う。画一的な教育で育てられてきた自分たちをジムやザクに例えたり、70年代生まれを単に「デフレ世代」と言うだけでなく、「社会へ出荷される出口のところで、ちょうど自分たちが乗ってきたベルトコンベアがほころびはじめた世代」、「あらかじめ失われた世代」、「けっして現実化することのない『絵に描いた餅』を、ながめて育った世代」などと上手くユーモアを交えて表現している。詩人としての面目躍如である。

また、「社会移動」、「文化資本」、「準拠集団」、「相対的剥奪」などの社会学の用語を使って、日本社会の変化や問題点をわかりやすく説明しているあたりは社会学者としての分析力と論理性が発揮されている。

詩人としての表現力と社会学者としての分析力・論理性とが結合しなければ生まれなかった本だと思う。

この本でよくわかったのは、幸福感というか不幸感は「相対的剥奪」を源泉としているということ。人は他人や過去の自分と比較して自分を幸福あるいは不幸であると判断する。だから、受験戦争を経ながらその結果があまり生活や社会的地位に反映されていない小生らデフレ世代は、高度経済成長期にどっぶり漬かった小生の親たちの世代や、バブル世代、またはバブル崩壊後に育った世代に比べ、不幸感がより大きくなるのである。

だが、著者は悪い面ばかり述べているわけではない。不幸感を抱え、問題意識の強いデフレ世代は、それだけいろいろなものが見える世代だのであると述べている。

われわれの視界は、他のどの世代よりも広いはずである。(132ページ)

というわけで、小生も万物を見つめ続けていきたいと思います。

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2008.05.06

現在のカッタ君

連休中の5月5日、ひさびさにカッタ君に会うべく常盤公園に行った。

ちょうど飼育係の人が来ていて、常盤公園で憩う人々に対して「ペリカン島」の前で餌をやりながら、ペリカンたちの説明をしていた。

ペリカンだらけ

こんなにウジャウジャいると小生らにはどれがカッタ君やらわからないのだが、飼育係の人はたいしたもので、顔を見るだけで誰が誰やらわかるそうである。

カッタ君はかつては足に赤い輪っかをつけていたものの、輪っかが古くなり、今では両足にステンレスの輪っかをつけているとのこと。現在のカッタ君はこの↓ペリカンである。

現在のカッタ君

ちなみに、カッタ君は1985年7月8日生まれだそうなので、現在満22歳。親がインドのカルカッタ(現コルカタ)生まれなので「カッタ」と命名されたという。
常盤公園のペリカン一族に関しては宇部日報による記事「われらペリカン一族」を参照。

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ホルンフェルス大断層

この連休、須佐のホルンフェルス大断層を見に行った。

Wikipediaによると、ホルンフェルスとはマグマの熱など砂岩とか頁岩とかが変成してできた岩(変成岩)の一種なのだそうだ。

宇部から須佐だとちょっとした旅になるが、「地質100選」に選ばれたほど有名な断崖絶壁なので見に行くことにしたのである。

ホルンフェルス大断層

写真のように、白黒の見事な縞模様。一見の価値あり。

ホルンフェルス大断層
断層を研究中の筆者。

地元商工会によるホルンフェルスの紹介ページはここ

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2008.05.02

発想の源:オブリックストラテジーズ

昨日紹介した、『Mind パフォーマンス Hacks』で紹介されていた「創造性の助けになるもの」を紹介する。

オブリックストラテジーズ(Oblique Strategies)という啓示を与えてくれるカード集がある。画家シュミットと音楽家ブライアン・イーノが考案したものである。

『Mind パフォーマンス Hacks』では、ネット上のオブリックストラテジーズを紹介している:ここ

"Click Here"を押すたびにランダムに登場する文言は、いわば発想のための易。小生の場合が初めて得た文言は次のものだった:

Imagine the piece as a set of disconnected events

<一連のまとまりのない出来事として部分を想像せよ>

???

なんと難解な。

ちなみにWikipediaによると、かつてのWindows 95の起動音はブライアン・イーノが作曲したものだと言うこと。

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『蟹工船』売れてるって

プロレタリア文学の代表的存在である、小林多喜二の『蟹工船』が売れているらしい:
「蟹工船」再脚光…格差嘆き若者共感、増刷で売り上げ5倍(ヨミウリ・オンライン 2008年5月2日)

蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫)
蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫)小林 多喜二

おすすめ平均
stars格差社会を考えるときにぜひ一読を
stars蟹工船
stars荒削りな文体、剛直の文学

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格差社会を実感する人々の間に共感が広がっているのではないか、との話である。

小生は中学校のときに読んだ記憶があるのだが、内容の記憶がない。まだ日本が繁栄していた頃なので共感を覚えなかったのだろう。

『蟹工船』の本文は版権が切れているので、ネット上の「青空文庫」で読むことが可能。本文はこちら

「おい地獄さ行(え)ぐんだで!」  二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛(かたつむり)が背のびをしたように延びて、海を抱(かか)え込んでいる函館(はこだて)の街を見ていた。

ちなみに。
あさりよしとおの『宇宙家族カールビンソン』だっけ? カニ星人「クラードニカ」が登場し、ハサミから「カニ光線」を出す話があるとかないとか。

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日本の気候区分:関口武の気候区分

昨日の記事、関口の気候区分の記述がテキトーだったので、改めて調べなおして書いてみる。

関口武による気候区分は、以下の通り:


  • 裏日本気候区

    1. オホーツク海型
    2. 東北・北海道型
    3. 北陸山陰型

  • 九州気候区
  • 表日本気候区

    1. 東部北海道型
    2. 三陸常盤型
    3. 関東型
    4. 中央高原型
    5. 東海型
    6. 南海型

  • 瀬戸内海気候区
  • 漸移気候区
  • 南西諸島気候区

おおまかな説明は、子供向けのサイトに書いてあった:「学研キッズネット:気候区分

調べてみたら、北広島町というところの資料(PDF 250kB)の2ページ目に気候区分が載っていた。

こういう気候区分の情報が、気象庁に無いのはいかがなものか?あと、ググレば何でも出てくると言うのは幻想なので皆様もお気をつけ遊ばせ。

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2008.05.01

ライフ・ハック技術

図書館で借りたライフ・ハック技術の本を紹介する:
Ron Hale-Evans『Mind パフォーマンス Hacks ―脳と心のユーザーマニュアル―』

著者はテクニカルライターであり、ゲームデザイナーでもある。

Mind パフォーマンス Hacks ―脳と心のユーザーマニュアル―Mind パフォーマンス Hacks ―脳と心のユーザーマニュアル―
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ライフ・ハックというのは、生活に工夫を加えることによって生産性を向上させることである。いや、自己の能力の開発といった方が良いか。今回紹介する本では「頭の武道」と言っている。

本書の序章「はじめに」では人間コンピュータ、メンタート(Mentat)が紹介されている。訓練によって生身のままで驚異的な情報処理を行う人のことである。SF「デューン」のシリーズに出てくる、抜群の記憶力、数理的処理能力、戦略立案能力を備えた人のことである。

「頭の武道」:ライフ・ハック技術を駆使しても到底こんな人にはなれないのだが、全くやらない場合に比べたら、やった方がはるかに生産性が向上する。そういうライフ・ハック技術を以下の8つの領域に分けて紹介しているのが本書である:
「記憶」、「情報の処理」、「創造力」、「数学」、「意思決定」、「コミュニケーション」、「明晰さ」、「知性の健康」。

どこから読んでもいいのだが、小生が熟読したのは「創造力」の章。何かを創造するためには環境から種を入れないといけないという話から始まり、発想法、想像力を高める方法、夢を利用する方法、他の人になりきる方法、自らの発想の道筋をトレースする方法などが紹介されている。発想法だけでも、単純なアイディアのプールからランダムな組み合わせによって複雑なアイディアを構成する手法、de Bono(水平思考を生み出した人)のPO、Bob EberleのSCAMPER、金言・警句による手法など様々な方法が紹介されている。

ハウツー本の一種ではあるが、グレッグ・イーガンやファインマンなど理工系の人間が喜びそうな話からの引用がちりばめられており、無味乾燥にはなっていない。メンタートの話もそもそもそうである。自らをチューン・アップすることの楽しみが伝わってくる。

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日本の気候区分に定説なし

仕事で必要なので日本の気候区分を調べてみた。

むかし地理で「瀬戸内気候」とか聞いたような気がするので、Wikipediaで調べてみたのだが、「気候区」では、次のように区分されていた:


  • 北海道気候区
  • 太平洋岸気候区
  • 日本海岸気候区
  • 内陸性気候区
  • 瀬戸内気候区
  • 沖縄気候区(南西諸島気候区)

で、問題なのは2点。(1)誰が何を基準に定めた気候区なのかわからないということと、(2)北海道気候区や沖縄気候区に関しては記述がないということ。世界の気候区分に関してはケッペンの気候区分というのが基本中の基本になっているのだが、日本はどうなっているのか?

「日本の気候区分」でググってみると、気候学の専門家による、こういう論文が見つかった:「生気候による日本の地域区分」(PDF、1.45MB)

この論文によると気候区分はあれこれ提案されているが、昭和以降の有力なものとしては以下のものがあるということ:


  • 福井による分類(1933):

    1. 奄美大島以南の南日本
    2. 九州・四国・本州と北海道の渡島半島までの中部日本
    3. 北海道主部の北日本

  • トレワーサによる分類(1945):

    1. 北海道
    2. 奥羽東部
    3. 日本海岸
    4. 中央山岳地帯
    5. 関東・東海地方(三重県より福島県に至る太平洋岸)
    6. 瀬戸内
    7. 北九州区(山口県より熊本県までの地域)
    8. 南海・南九州地方(南紀より鹿児島までの地域)

  • 関口の分類(1950~1959):年平均気温、気温日較差、降水量、年日照時間、日照率などによって分類。代表的なものは以下の通り

    1. (1)北海道北東部、(2)北海道西部、青森全体、東北地方西部、(3)新潟県から兵庫県北部に至る日本海岸、(4)鳥取県、島根県
    2. 九州西部
    3. 房総半島南部から伊豆半島、紀伊半島南部、四国南部、九州南東部に至る太平洋岸
    4. (1)北海道南東部、(2)東北地方太平洋岸、(3)関東地方、(4)長野県、山梨県、(5)東海地方
    5. 関西、中国、四国、九州の瀬戸内海岸
    6. 山口・北九州


関口の分類というのがいまのところ、日本の気候区分の代表になっているようだ。しかし、先ほどのwikipediaの内容とは対応していない。Wikipediaの気候区の分類はだれが決めたんだ?

インターネットに頼ってばかりだとダメなので、図書館で中村和郎、木村竜治、内嶋善兵衛『日本の気候』(岩波書店、1986年)というのを借りてきて、見てみると、これまた違うことが書いてあった。

ここではまず、鈴木秀夫による気候区分というのが紹介されていた。これは、冬季の降雪状況によって分類した結果である:


  • 裏日本気候区: 必ず雪が降る
  • 準裏日本気候区: 気圧傾度が強い時に雪が降る
  • 表日本気候区: 常に雪が降らない

「裏日本」って今言うと語弊があるのだが、そのことはこの本でも触れている。鈴木は適切な言葉が見つからず、消極的な意味で用いているのでまあ責めないでください。

『日本の気候』では独自の気候区を提案しているのだが、次の通りである:


  • スノーベルト: 多雪域(鈴木の裏日本気候区に対応)
  • サンベルト: 少雪域
  • 内陸気候区: サンベルトの中でも特に気温の年較差が大きい、中部地方や北海道の内陸部
  • 瀬戸内気候区: サンベルトの中で瀬戸内海に面した地域

この気候分類に「暖かさの指数」による4分類、「亜熱帯」、「冷温帯」、「温暖帯」、「亜熱帯」を加えて日本の気候について説明を加えている。

まあ、いろいろ記述してきたが、結局のところ、定説なしということ。用途によって独自の区分を利用するということになりそうである。

<2010年1月27日加筆>
この記事へのアクセスが多いようなので追記。
中村和郎、木村竜治、内嶋善兵衛『日本の気候』(岩波書店、1986年)で紹介されている気候区分の図を改めて描き起こしてみたのでご高覧ありたい:
Japan4


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