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2008.03.14

スマートパワー戦略:米国の新たな国際戦略

先日から中国の脅威の話をチョコチョコ書いているのだが、それに抗する合衆国の戦略にはどんなものがあるのかを調べてみた。まずは、対中国ではなく、より大きな枠組みの世界戦略の話。

アメリカは軍事力と経済力だけではなく、ソフトパワー(世界から共感を得る力)によって唯一の超大国としての地位を維持するべきだという提案がCSIS(戦略国際問題研究所)から出されている。以下は2007年11月にアーミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ元国防次官補を中心とする「スマートパワー委員会」が公表した提言のあらすじ(エグゼクティブ・サマリー)である:

合衆国のイメージと影響力は世界中で低下している。国際社会での指導的役割を維持するために、合衆国は恐怖と怒りを誘発する存在から楽観主義と希望を呼び起こす存在へと変化しなくてはならない。

この報告書は次期大統領がスマートパワー戦略を実施するための提案をまとめたものである。

合衆国は再び世界共通の利益に貢献することによって、つまり、世界中の人々と政府とが必要とし、合衆国の指導なしには獲得できないものを提供することによって、よりスマートな大国になる必要がある。

合衆国の軍事力と経済力をソフトパワー(心情的援助・共感などによって他国を味方につける力)によって補完することで、合衆国は地球規模の問題に立ち向かうための枠組みを作ることができる。

合衆国は特に以下の5つの領域に集中するべきである:

1. 同盟、パートナーシップ、および国際機関
合衆国は合衆国の利益に貢献する同盟、パートナーシップ、および国際機関を再活性化させるべきである

2. 地球規模の発展
外交政策として地球規模の発展に貢献することは、合衆国の利益と世界中の人々の願望とを結びつけるために役立つだろう

3. 開かれた外交
長期的な国民同士の関係(とくに若い人々の間の)を築くことによって外国の人々を合衆国の側に引き込むことができる

4. 経済の統合
世界経済に関与し続けることは成長と繁栄のために必要である。そのためには、自由貿易が一層拡大されなくてはならない

5. 技術革新
エネルギー安全保障問題と気候変動問題には、アメリカが指導力を発揮して、地球規模のコンセンサス形成と画期的な新技術による解決策立案を促すことが必要である

この提言を小生なりに解釈すると「スマートパワー戦略」とは「情けは人のためならず」戦略であるといえるだろう。米国流の価値観の押し付けにも見えるが、世界各国を助けることで自らをも守ることができる、という考え方が根底にある。世界史を見ても、こんなに親切な国はないよなーと思う。なんだかんだ言って、当面日本が頼りにできるのはアメリカだけである(実はアメリカも結構日本を頼りにしている。その件は別の記事で)。

<注>"innovative"という言葉の訳は難しい。技術革新を意味するときと、画期的であることを意味するときがあるからだ。ここでは米政府の地球温暖化に対する従来の主張を参考に「画期的な」をやめて「新技術による」に変えた。

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コメント

アメリカと日本が熟年離婚しませんように。

投稿: おじゃまします | 2008.03.15 15:46

民主党が政権をとった場合、日米に距離感が生じる可能性はありますが、150年もの付き合いですから熟年離婚には至らないと思います。

投稿: fukunan | 2008.03.17 21:01

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