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2008.03.02

読書法にもいろいろある:点検読書とは

最近は出張だの,フリーの数値流体力学シミュレーションソフトのインストールだの,いろいろあって更新をサボっていたが,この忙しい中,読んだ本を紹介する:
アドラー『本を読む本』

本を読む本 (講談社学術文庫)本を読む本 (講談社学術文庫)
J・モーティマー・アドラー V・チャールズ・ドーレン 外山 滋比古

講談社 1997-10-09
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これは楽しみのための読書の本ではなくて(というか,楽しみのためだったら読書法なんてどうでもいい),広い意味での仕事のために本を読むときのテクニックを教えている本である.

アドラーは,つぎの4つの読書法があると言っている.これらの読書法は順にレベルがアップしており,後方の読書法は前方の読書法を包含する関係になっている.


  • 初級読書
  • 点検読書
  • 分析読書
  • シントピカル読書

初級読書は単に本が読めるというレベルの読書.だからこの本ではあまり問題にしていない.

点検読書は本の品定めをするための読書法である.

分析読書は本を本当に理解するための読書法である.この本では最も力を入れて説明している.

最後のシントピカル読書とは同じテーマに関して2冊以上の本を読むと言う読書法.シントピカルの「シン」というのはシンクロナイズとかのシンと同じ意味で,「同じ」とか「共に」という意味.「トピカル」というのは「トピック」「主題」の意味である.要するに,シントピカルとは,「同一主題」という意味である.

小生としては「点検読書」という読書法が積極的な意味で評価されているのが気に入った.書店や図書館で立ち読みしていたり,家で斜め読みしていたりするだけだと,なんとなく本に申し訳ないような気がしていたのだが,これらを「点検読書」として考えれば,罪悪感をぬぐうことができる.

人生は短いので,ある本を最後まで読み通さないでも,その本が読むに値するかどうかを判断できるということは重要である.また,読むに値する本であっても,いきなり通読したら時間だけかかって,その本の全体像がわからないままになることがある.ここに点検読書の意義がある.

アドラーによれば,点検読書は次の2つの要素で形成されている:


  • 組織的な拾い読み
  • 表面読み

組織的な拾い読みをするということは,具体的には次の作業を実施することである:

  • 表題や序文を読む: 著者のものの見方や,本の主題がわかる
  • 目次を読む: 本の構造(話の展開)がわかる
  • 索引を調べる: 索引がついている場合,登場する回数が多い言葉ほど,その本で重要な役割を担っているわけである
  • カバーや帯を読む: もっとも凝縮された情報がここに書かれている
  • 要となる章を読む
  • ところどころ拾い読みする

    ここで最後に挙げた「ところどころ拾い読みする」ということについて補足すると,アドラーは各章の最後の2,3ページに注目するというテクニックを紹介している:
    とくに最後の2,3ページは必ず読む.結びの部分がある場合は,その前の2,3ページがこれにあたる.この最後の数ページで自分の仕事の新しさ,重要さを要約する,という誘惑に勝つことのできる著者はめったにいない.だから,<中略>この部分を見逃すという手はない.

    点検読書のもう一つの要素,表面読みとはとにかく読み通すということである.先日の「論文の技法」では「どんどん書け」「どんどん直せ」ということが主張されていると述べたが,読書の場合は「どんどん読め」「どんどん読み直せ」という主張にまとめられるだろう.本を一回限りで理解しようなどと気構えないことである.点検読書のつぎは分析読書をすればよいので,点検読書の段階ではわからないところがあってもどんどん突き進むことが必要である.そのときに「重要な主張」や「難解な部分」を発見したら,斉藤孝先生のごとく,本にマーキングをしていけばあとで分析する際に役に立つので,なお良い.

    アドラーによれば,点検読書の目的は,(1)対象としている本が何に関する本なのか,(2)何がどのように詳しく述べられているのか,の2点を明らかにすることである.たくさん本を通読していても,結局こういうことさえわからないまま,ということは多い.小生としては,これらのことさえ明らかにしたら,「本を読んだ」ことにしてしまっても良いのではないかと思う.アドラーは言っていないが,小生の提案としては,現在はポストイットという便利なものがあるので,これに上述の(1)(2)をメモして,本の中表紙にでも張っておけば,あとあと分析読書する場合に役立つのではないかと思う.

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