車輪の下で
光文社古典新訳文庫の新刊、『車輪の下で』(ヘルマン・ヘッセ著、松永美穂訳)を読んだ。従来、『車輪の下』というタイトルで知られている作品である。
古典というと、なんとなく、課題図書として読むか、授業で教わるか、年取ってから文学全集で読むか、そういうものという感じがするのだが、そんなことは無い。
『車輪の下で』はヘルマン・ヘッセが29歳のときに書いた作品である。新進気鋭の若手作家による青春小説なのである。これはヘルマン・ヘッセの10代の頃の栄光と挫折を基にした自叙伝的小説であり、一人の少年の精神を押しつぶす画一的な教育、大人たちの無理解に対する怒りに満ちている。
旧来の翻訳だと文体の古さのせいで、いかにも老大家が執筆したかのような印象を受けるのだが、松永美穂氏の新訳では若手作家の作品らしい、みずみずしさが感じられる。
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ちなみにヘルマン・ヘッセは1877年生まれで、1962年に没している。夏目漱石とか森鴎外よりも我々に近い時代の人である。
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