家庭向けエネルギー管理サービス
IBMが発表した「今後5年で生活を変える5大技術」の中に、小生らが手がけている分野が入っていた。
WIRED VISIONの記事:米IBM、「今後5年で生活を変える5大技術革新」を予測(2007年12月27日)
によると、"IBM Next Five in Five"として発表された技術の中に、こういうのが入っていた:
環境分野では、エネルギー管理を可能にするネットワーク技術「インテリジェント・ユーティリティー・ネットワーク」を挙げた。既存の電力供給網を使って、多様な家電製品、使用量メーター、電源などを管理する技術で、個人レベルでの省エネと二酸化炭素排出量の削減が容易になり、環境に配慮したエネルギー利用が進むという。
これは実は日本でも研究が進んでいる分野で、HEMS (Home Energy Management System:家庭向けエネルギー管理システム)と呼ばれている技術である。スマートハウスとも言う。大昔は郵政省主導で「インテリジェントハウス」という構想があったが、現在ではエネルギー管理が重視されている。
技術的にはすでにECHONETという規格が制定されつつあり、その規格にのっとった製品が開発されている。上述の記事に書いてある、「既存の電力供給網を使って、多様な家電製品、使用量メーター、電源などを管理する技術」とは日本ではこのECHONETのことである。電灯線搬送(PLC)という技術を使って(あと、特定小電力無線:bluetoothとかも使って)、家庭の電気の配線を通じて機器を制御するのである。アメリカではX10という規格がある(ちなみに、日本国内ではPLCについて論争がある。電力線からの漏洩電磁波が無線通信に対するノイズになる可能性があるのだ)。
問題はマーケティングである。製品はできているが、商品にまで達していないのである。お客さんがこのサービスを欲しているかどうかが重要である。その辺の研究をおっぱじめたのが小生らである。某経営学者と組んでこういう研究をやっている:
NEDOプロジェクトID: 05B53503d、家庭向けエネルギー管理サービス普及のための事業戦略創出に関する研究
小生らは「省エネルギーに特化したサービス・システム(HEMS)の普及を図るという姿勢ではなく、日常生活一般をサポートするシステム(スマートハウス。広義のHEMS)の普及を図るという姿勢で取り組む必要があ」るという結論を出している。つまり、省エネだけだったら消費者はあまり興味を持たないので、セキュリティとか家電機器の遠隔操作とかヘルスケアといったほかのサービスとの融合をはからないと普及しないだろうことである。
小生らはエコデザイン2006という講演会で、こんなのも発表している:
HEMSに対する消費者ニーズ(Kazuhiro Fukuyo, Yoshiyuki Matsuura, Eriko Iwamoto: The consumer needs for the home-energy-management system, Proceedings of Eco Design 2006 Asia Pacific Symposium (Tokyo, Japan), 11-12 December, 2006, pp. 353-358)
先見の明がある、というような自慢話のようですみません。しかし、大企業が本気でこのサービスの普及に取り掛かったら、小生らの細々とした研究が吹き飛ばされる可能性は大きい。
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