プラスチック・ワード
ウヴェ・ペルクゼン『プラスチック・ワード』(藤原書店)を読んだ。
著者はレゴブロックのように、あらゆる組み合わせが可能で自由に(恣意的に)文章を構築できる言葉というイメージを持たせるために、本当は「レゴ・ワード」と命名したかったらしいが、商標に触れるので断念し、「プラスチック・ワード」と命名したそうである。
本書の帯には「日常を侵食する便利で空虚な言葉たち」と書いてあるが、適切な表現であると思う。
本書で取り上げられているのは「情報」、「コミュニケーション」、「発展」といったよく聞く言葉たちである。いわゆるバズワード、例えば、「ユビキタス」とか「Web2.0」といった言葉たちと似ているが、バズワードは一過性のものであるのに対し、プラスチック・ワードは長期にわたってわれわれの思考を支配してしまうというところに違いがある。
ウヴェ・ペルクゼンはプラスチック・ワードが日常言語から科学用語の世界に入って権威を帯びた後、当たり前の概念となってわれわれの思考を支配する(停止させる)プロセスを示してくれる。プラスチック・ワードは具体的に何を指し示しているのか良くわからないにもかかわらず、われわれを急き立て、どこかへ導こうとする。
「発展」は常に正しいことなのか?「コミュニケーション」は促進しなくてはいけないのか?プラスチック・ワードの持つアウラ(雰囲気)にだまされずによく考えることをこの本は要求している。
プラスチック・ワード―歴史を喪失したことばの蔓延 | |
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