科学とトンデモ科学の選別基準
科学とトンデモ科学(疑似科学)をどのように選り分けるのかという難題がある。
科学哲学の分野でこの難題に対する一つの解答例を示したのがカール・ポパーである。ポパーが示したのは「反証可能性」もしくは「論駁可能性」という基準である。
ある科学的理論について、その理論を構成している諸命題が整合的な全体をなしていいるとして、その全体から、その理論を論駁できる経験的証拠を支持するような、少なくとも一つの単称言明を演繹できるとき、その理論は科学的であると言われるだろう。(ドミニック・ルクール『科学哲学』(文庫クセジュ))
この基準の基盤になっているのは、科学が「帰納的なもの」あるいは経験法則の束ではなく、「仮説演繹的なもの」であるという考え方である。
理論Aから導き出される現象Cが現実において否定される場合、理論Aは否定される。そういうような「急所」を堂々と曝す形の理論体系になっていない限り、科学とはいえないというわけである。逆に言えば、どんなことでも説明できると称する科学はトンデモ科学というわけである。
この「反証可能性」は多くの人の支持を受けた。しかし、実際の科学はそんなものじゃないと異論を挟んだのがポパーの後継者ラカトシュであるが、その話は別の機会に・・・。
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コメント
理論A:秋はもの凄くお腹が空く
↓
現象C:確かにもの凄く食べる
これはトンデモ科学なのでしょうか?(浅っ)
とにもかくにも食欲の秋デス
投稿: おじゃまします | 2007.11.02 13:09
「秋なのにそれほど食べない日がある」場合、「秋はもの凄くお腹が空く」理論の反証になるので正統派の科学だといえるでしょう。
投稿: fukunan | 2007.11.02 23:57
すごーい!!!なるほど。
目からウロコでした。
投稿: おじゃまします | 2007.11.03 16:24