『幼年期の終わり』を読み終わり
アーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』を読み終わった。
ネタばれになるので詳しい内容は書かないが、最後は我々のような旧人類が滅び、地球の消滅と共に子孫である新人類がいずこかへ旅立つ、という結末だった。
人類を支配していたオーヴァーロードたちはさらに上位の精神的存在であるオーヴァーマインドに支配されていた種族だった。そして、オーヴァーマインドの命令により、人類がより精神的な新世代に交代するのを見届けるために地球に来ていたのだった…。あれ、ネタばれしてしまった。まあ、Wikipediaでもあらすじが紹介されているからまあいい。
人類の未来というテーマを難解な概念を使用せずに平易な文章で描いており、SFファンでなくても(SFを読みなれていなくても)楽しめる作品である。巨匠というのはやはり巨匠なのだなと力量を感じる。
巻末の解説(巽孝之)には日本文学に与えた影響として、いくつかの面白いエピソードが紹介されている。
- 『家畜人ヤプー』の著者として知られる異端作家、沼正三は原書刊行時(1953年)、すでにこの作品を読み、人類が異星人によって支配される「マゾヒズム小説」として理解していた。
- 沼が読んだ時点では邦訳がなかったので、沼はこの作品を『幼児期終わる』、オーヴァーロードを「上君(うえさま)」と訳していた。
- 三島由紀夫もこの作品を読み、賞賛していた。
沼の『幼児期終わる』という訳も味わいがあって良いと思う。前回の小生の記事では「これが書かれた1953年は、日本で言えば、三島由紀夫が『潮騒』を発表した前年。」と書いているが、やはり三島も読んでいたのだ、と我ながら勘のよさに恐れ入る次第である。
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