使える「哲学」
哲学というと、「人生いかに生きるべきか?」などという話題ばかり扱っているかのように思える。なんでそういう印象を受けるかというと、「野球哲学」とか「ビジネス哲学」とか、「哲学」という言葉が「生き様」や「精神」の意味で使われているからである。
しかしながら、哲学の守備範囲は上述の「人生哲学」にとどまらず、分析哲学や科学哲学や倫理学とか非常に広い領域に広がっている。哲学の成果の中には、「論理」とか「議論の技法」とか、普段の生活や仕事に役立つものがある。
伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』は少し前に出た本だが、いわゆる「クリティカル・シンキング」(批判的思考。クリシンと略するらしい。栗本慎一郎のことではない)の道具として役に立つ思考法を紹介してくれる本である。
哲学から供給されるクリシンの道具としては、この間紹介した「反証可能性」も紹介されているが、他に主なものとして
- 聞き手の姿勢である「思いやりの原理」
- 話しての姿勢である「協調原理」
- 確実な事柄を追求するための「方法的懐疑」
- 論理的思考を行うための「演繹論理」
- 演繹論理の具体的な形式である「三段論法」
- 議論の判断は文脈に沿って行うべきであるという「文脈主義」
- 価値主張の対立があるときに一致点を探すための「分厚い記述」と「薄い記述」
- 倫理的な判断を行うための「実践的三段論法」
などが紹介されている。
議論をしているときに、「なんで話がかみ合わないのか?」と思っている人たちは、この本を読むとその理由がわかると思うし、また建設的な議論への転換を図ることができると思う。
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