渡辺翁の偉さについて
宇部日報社から堀雅昭『炭山の王国―渡辺祐策とその時代』という本が出たので紹介する。
渡辺祐策(わたなべ・すけさく)は幕末に生まれた人である。宇部の沖の山炭鉱を創業して財を成し、宇部興産の基礎を築いた。成した財の使い方が偉い。宇部のインフラのほとんどはこの人(と宇部共同義会)の寄付によって建設されている。郵便局も鉄道も参宮通りも宇部港も旧宇部空港もそうである。宵越しの金は持たないという精神が「共存同栄」という良い方向に発揮されている。
彼は石炭が尽きたときのことを考え、宇部窒素工業(後の宇部興産)を興して硫安の生産を開始しているが、他の炭鉱町が廃墟と化している現状を見ると慧眼であるといえる。あまりに偉いので「宇部の神様、渡辺翁」と呼ばれている。死後、功績を顕彰して作られた宇部の市民会館は「渡辺翁記念会館」という。
偉大な起業家の話は良く聞くが、地域経営という視点で起業し、実際に地域を発展させた人は稀有である。
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