大岡裁きのネタ本
昨日の記事で「大岡裁き」と書いて、大岡裁き(大岡越前の名裁判)にネタ本があることを思い出した。
桂万栄著・駒田信二訳『棠陰比事(とういんひじ)』(岩波文庫)というのがそれである。棠陰というのは梨の木陰という意味で、大昔は梨の木の下で裁判をやっていたことにちなんでいるという。あと、比事とは、事件の比較という意味である。『棠陰比事』では似た裁判を2つずつ並べており、名裁判比べができるわけである。
大岡裁きで有名なのは、母と継母が子供を取り合うという話。大岡越前が手を引っ張り合って勝ったほうに子供を委ねるということを言って、引っ張り合いをさせたところ、子供が泣き出したので、一方が手を離した。それを見て大岡越前が「子が痛がるを不憫に思い、手を離したる方がまことの母!」と裁定したという。
よくできた話だが、『棠陰比事』では第8話「二人の母」に同じ話が収められている。前漢の太守、黄覇の話ということになっている(ということは2000年以上前の話だ)。
で、『棠陰比事』第7話には「二人の父親」という題でこの話のバリエーションが収められている:後魏の李崇が、二人の父親が子供を取り合っている事件の裁定を求められた。李崇は子供を父親たちから隔離して、数日経った後、「子供が死んじゃった」と父親たちに報告した。そうしたら、一方の父親は非常に悲しみ、もう一方の父親はためいきをついただけだった。この結果を見て、李崇は非常に悲しんだ父親に子供を委ねた。
どちらもよくできたとんち話なのだが、訴訟に負けたほうはどうなったかというと、「罪に服した」そうである。中国の裁判は厳しい。
棠陰比事 | |
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