死とその過程について
エリザベス・キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間 死とその過程について』の最初の章には「死の恐怖について」という題名が付いている。
エリザベス・キューブラー・ロスはこのように語る。
私たちは無意識のうちに「自分に限って死ぬことは絶対にありえない」という基本認識を持っている 私たちの無意識は、自分の命が本当にこの世で終わるとは思っていない
無意識どころか、まさしく私の認識がそうである。このような意識のもとでは、死は自然現象ではなく、悪意や罰として訪れる恐ろしいものとして受け取られる。死は忌むべきものとして遠ざけられる。死に行く人は長らく親しんだ家庭環境から遠ざけられ、縁の薄い高齢者用の施設や病院に押し込められる。
このような状況で死を受け入れることができるだろうか?
この章ではかつて「よく死ぬこと」が許されていた時代の臨終の場面を描いている。
子供のころ、ある農夫の死に出会った。その農夫は木から落ち、助かりそうもなかった。彼は寝室に娘たちを呼び、それぞれと二人きりで数分間ずつ話し合った。激痛に耐えながら、彼は冷静に身辺整理をし、自分の持ち物と土地を分け与えた。<中略>友人たちにさよならを言いたいからもう一度家に来てくれるよう頼んだ。<中略>私たちは彼が息を引き取るまで、彼の家族と悲しみを共にすることを許され、いっしょに心の準備をした。彼は死んだ。死を自然の現象としてとらえ、日常的な環境の中で死に行く者と時間を共有することこそが、死に行く者に「よく」死を迎えられるようにするということになるだろう。
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