グレッグ・イーガン『万物理論』
だいぶ前に購入したグレッグ・イーガン『万物理論』を読み終えました.
第2部まで読み終わっていたものの,その後放置しており,久々に読み直して,とうとう最後までたどり着きました.
これまでにグレッグ・イーガンの著書として『順列都市』,『宇宙消失』,あと,短編集『祈りの海』などを読みましたが,大雑把には,グレッグ・イーガンが取り扱っているのは,
意識次第で世界(宇宙)が変わる
というテーマである,と言えるでしょう.
それも,「恋愛をすると,世界がバラ色に見える」という「・・・に見える」レベルではなく,世界(宇宙)の物理現象が変化してしまうというすごいレベルのものです.
作中に出てくる宇宙論(人間宇宙論・AC)などは,このテーマを端的に示したものだと言えるでしょう.作中人物,アマンダ・コンロイの説明を引用してみます.
”出発点”とするのは,単一の理論というかたちで宇宙全体を説明できる現存の人間がいる,という事実 (中略) この人物から,宇宙はそれを説明する力によって”発芽”するの.すべての方向に向かって,そして時間の中を前へもうしろへも. (中略) だから,宇宙はただひとつの法則に従うの――ひとつの万物理論に.宇宙はひとりの人間によって完全に説明される.わたしたちはこのひとりの人物を,<基石(キーストーン)>と呼んでいます.
すごい説ですが,この人間宇宙論がこの本の中で正解の理論だったかどうかというと・・・.
ちなみにカール・ポパー流の科学主義では,こういう否定する手が見つからない理論(反駁不可能な理論)は科学理論としては受け入れられません.
この人の作品のすごいところは,読んでいるうちに本当の話に聞こえてしまうというところで,ストーリー展開,語り口のうまさを感じます.
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